第24話

【囚人番号011】梶原由良/小心者の告解
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2025/12/24 10:00 更新
視点 無し
ギィ、と重々しい音が鳴り響いた後、1人の少年がゆっくりと顔を覗かせた。
エス
…入れ
そうエスが促すと、「は、はいっ…」と弱々しく返事をしながら少し高いパイプ椅子に腰掛けた。
エス
久しぶりだな、囚人番号011…ユラ
ユラ
ひ、久し…ぶり…です、か、看守……さん…
一審の頃と比べて、更に弱々しくなったユラはそっと呟くような声量で話す。
結論から言うと―――彼は「赦さない」と言う投票結果だった。
それにより、身体的拘束と思想の否定が入り、ユラの頭には常時老若男女からの罵詈雑言が響いている。
これにより、ユラのマイナス思考が更に加速し少し精神的に参っているのである。
エス
……監獄での生活はどうだ
エス
コトコからの襲撃もあったとジャッカロープから聞いた
エス
…怪我は回復傾向か?
淡々と質問していくエスに少し驚きながらも、丁寧にユラは回答していく。
ユラ
ぇ、っと……
ユラ
さ、最近…何だか…え、えっと…
ユラ
みんな…ぴ、ぴり、ぴり…?してて…
ユラ
ふ、風汰、くん、も…きげん…?が、悪い、し…
ユラ
こ、こわ…怖い…で、す…
ユラ
け、怪我、は…その…ヒビが入ってる?くらい…らし、くて…
ユラ
まだ、痛…い…け、ど…
ユラ
ふ、風汰…くんに…く、比べ、ればどうってことないかなって…
エス
…そうか…
エス
なあ
そうエスがユラに聞くと、肩をビクッと動き、小さな声で「何ですか?」と返事をした。
一審の頃はこんなに怖がってはいなかったが、やはりコトコの襲撃の件で警戒心が高まってしまったのかもしれない。
そんなことを何となく察したエスは、なるべく優しい声で、なるべく視線をあわせ―――ユラの禁忌へと少しずつ踏み込んでいく。
エス
…そう言えば、家族構成は父親とお前だけ…だと聞いたが
エスは、なるべくゆっくりと、だけど確信に罪の内容に近づくような言葉を考えながら頭から捻りだす。
エス
…どんな生活をしてたんだ?
数秒、時が止まったような感覚がした。
エスは少し困ったような表情を見せたが、ユラがただ考え込んでいただけだったのか、ゆっくりと口を開き、話し出した。
ユラ
…おとおさん、は…
ユラ
ぃ、いつ、いつも…あ、朝から夜まで…ど、どうはん、?とか…
ユラ
そ、う…言うの…?をしてて…
ユラ
お家には、入れないので…ず、ずっと…公園で過ごしてました
ユラ
ふ、風汰くん…とか…ミコト、さん、?がご飯、とか…お水渡してくれてました…ミコトさんは乱暴で…こ、怖かった…け、ど…
エス
…ミコトが乱暴、か…
エスの頭の中に思い浮かんでくることは1つ―――ミコトの別人格、通称「ジョン」についてだ。
ただジョン自身はユラに関することは尋問中一切言及していなかった。と言うことは単純に気づいていなかっただけなのか。
エスがぐるぐると考え込んでいると、ユラがそっと顔を覗いた。
ユラ
ぁ…か、看守…さ、ん…だ、だい…大丈夫です、か?
エス
…嗚呼、僕はまあ…大丈夫だが
エス
……なあ
ユラ
は、はぃ…
エス
ユラは…愛、とは何だと思う?
昔、エスが読んだような、読んでいないような、曖昧な記憶の中にあった知識。恐らく心理学系統の本で読んだのだろう。このような感じだったかは全く覚えていないが。
ユラ
ぁ、あい、ですか、?
ユラ
ぁ、え、えーと…
ユラ
……ぼくは、ぉ、おとおさんから…受けるもの…全てがあい、?だと思ってます
ユラ
ぃたい、のも…くる、しい…?のも…ぜ、全部
エス
…そうか
そんなやり取りをしていると、ゴゴゴ、と重々しい音がして部屋が変わり始めた。
エスはぼんやりと、もう抽出されるのか、なんて思っていた。
ユラは一審で学んだのか、ちょこんと座り、辺りをきょろきょろと見回している。
…やっぱり学んでいないのかもしれない。
エス
…囚人番号011、ユラ
エス
―――お前の罪を歌え
桃源郷なんてなかった/Akali(元歌詞はアットウィキ様から)
愛されることを知らぬうち
愛を忘れてしまいました。
帰り道で迷ったまま
数年が経っていました。

道具としての人生は
非情に充実したものでした。
あなたの笑顔の為ならば
どんなことも厭いませんでした。

「愛されたい」
「赦されたい?」
「ごめんなさい」
あの頃の幸せが懐かしい

これまで悲惨な無様を晒して
散々な生き方をしてきた
いつでも淡々とあなたに捧げて
今までお疲れ様でした

本当の意味での愛情を
(愛しく思った)
最期の最期まで知らなかった
(家族とも言えたおとおさん)
あなたを置いていくしかなかったこと
(あなたを殺してしまった)
とても悲しく思いました。
(やっぱりどうしようもないな。)

愛し愛される感情を
何度も教えてくれたのに
裏切るかたちになったこと
後悔して泣いてしまいました。

「愛されたい」
「赦されたい?」
「ごめんなさい」
あの頃の幸せが愛おしい

今までずっと悲しかった
いつまで耐えればいいんだろうか
「いつかきっと捨てるだろう」
あなたに嫌われ生きてきた。

今までずっと苦しかった
いつまで堪えればいいんだろう
いつかきっと癒えるでしょう
「この世に居場所などなかった。」

今までずっと悲しかった
いつまで耐えればいいんだろうか
(いつかきっと言えるでしょう)
世界を愛して生きてきた。

はじめて守ることができた
はじめて怒ることができた
はじめて誰かの為に生きた。

辿り着けるか桃源郷
一審の時どのくらいの文字を基準としていたか忘れたので若干短いかもです。ちなみに今は尋問だけで1500字程度。

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