彰人は、彼岸花を避けて、森の中を進んでいた。
世話になった人に、もう一度会いに行くために。
前は迷っていたが、今回は不思議と迷わなかった。
景色が同じなので道は忘れているだろうと踏んで、迷っても大丈夫なように彰人は早朝に家を出たのだが、それは杞憂だったようだ。
なにかに導かれるように、すぐにどこに行けばいいかがわかる。
それに従って進んでいると、案の定、黒曜石のような角を持つ後ろ姿が見えた。
絵名の騒動から、実に2ヶ月が経過していた。
親族や他の妖祓い、知り合いに事情を説明していたのと、自分がここに来ていいのかと悩んでいた時期があったから。
前は敬語だったが、彰人に対して敬語を使わなくなっている。
記憶が曖昧故の出来事であろう、と彰人は推測した。
この記憶の曖昧さは、間に2ヶ月を挟んだからなのか、妖を取り込んだからなのか。
きっと後者であろう、と彰人は思う。
彰人は、冬弥に対して不利益になるようなことしかしていないと記憶している。
強いていえば歌だが、あんなのは妖を取り込んでもらう代償にすらならない。
彰人自身、誰に妖を取り込んでもらったのか名言はしていない。
だが、薄々察せられる部分もあるだろう。
今後これ以上冬弥が妖を取り込まないために、遠くに飛ばされることはわかっていた。
ただ会いに来るという可能性よりも、頼りに来る方が先に思い浮かんでしまう様に、彰人はなんとも居た堪れない気持ちになる。
当然と言われれば、当然なのかもしれないが。
誰かに話せば、冬弥を頼る者が出てくる。
そうすれば、きっと、冬弥はその願いを聞き入れてしまう。
後日、彰人は冬弥の元を訪れるのか。
冬弥の事を頼る者が、現れるのか。
それは、誰にも分からない。
__これは、妖に巻き込まれた、2人のお話。









![# 攻略対象より悪役に惚れました . [ 冬司ver ]](https://novel-img-gcs.prepics-cdn.com/prcmnovel-tokyo-prod-converted-images/p/463Ienje96SMnaxqeg7tvIaFh9p1/cover/01K566339R5TNCGP01WCWNSK9G_resized_240x340.jpg)




編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。