カカオ視点
女子が羨ましいと思ったのは、つい最近のことだった。
僕は兄さん……ビター兄さんが好きで、色々なアプローチをしていた。だけど、男が男に言い寄られるのは、さすがの兄さんでも困るかもと思いすぐ辞めた。
それぐらいの常識はあるからね。
これが普通なのさ。仕方ない
だからあまり迷惑をかけないようにと自分から離れたりもしていた。
でもある日、藍色のアルカラムの長男、オリバーが兄さんにジェシーの稽古を頼んだ日以来、ジェシーが兄さんのことを好きになっていた。
これはガーナ情報。恋話が大好きなガーナは僕に色々教えてくれたんだ。
バレンタイン、ホワイトデーなどと初心なジェシーを応援するものは沢山いるだろう。
僕がこんなこと考えたってどうにもならないことなんか分かっているけど…
なんだかジェシーに妬いてしまう。
それは、他のものに応援されるとか、他の人に相談とかして恋バナができるとか、そういうものではなくて。
ただ、結ばれることができる存在が、羨ましかった。
僕は男だし、しかも兄弟。女として生まれ変わっても結ばれはしない。
だから結ばれることができて、兄さんの隣を堂々と歩いていられる。そんなジェシーが本当に羨ましかった。
え?こんなこと言うのは失礼だって?
……それもそうだね。…でも、やっぱり考えちゃうんだ。もし、僕と兄さんが結ばれることができたとしても、僕じゃ兄さんの子を残せない。
アルカラム一族として、それは許されないだろう?
だからこんな提案をしたんだ。いい加減に理解できたかい?
兄さん
ジェシー視点
私はジェシー。藍色のアルカラム家の長女で、兄であるオリバー兄さんの妹。影のアルカラムにふさわしい殺し屋になるために日々の鍛錬を惜しまず頑張ってきた。
そして……赤のアルカラムであるビターさんを密かに恋心を抱いていた。
そんなある日、ビターさんの弟であるカカオさんと偶然出会い、何を考えたのかカカオさんからお茶に誘われた。
私はてっきりビターさんたちがいるカフェアビアントに行くのだと思っていたけど、着いたのはチョコケーキが美味しいと有名な新しいお店だった。しかも貸切で店内には私たち二人だけ。
何を話すのだろうかと内心ドキドキしながら頼んだコーヒーを口に含んで何とか落ち着こうとしていた時、
カカオさんはチョコケーキを頬張りながらどこか悲しそうな顔で話した。
そういうカカオさんはコーヒーを飲んでひと息ついた。私は緊張で今にでも吐きそうだ…
緊張でどもる私に対してカカオさんとは一切目が合わない。
チョコケーキに釘付けなのか、ずっと食べている。
少しの沈黙ができた後、チョコケーキを食べ終わったカカオさんはフォークをおいて話し出した。
最初に話したように、ビターさんは私の好きな人。
ビターさんの婚約者が決められるとは、私にもチャンスが来たと言うこと。
でも、どうしてそんな大切な情報を…?
ガーナちゃんにだって知らされてないのに…
何が何だか正直整理ができない。
え、どういうこと?私が…ビターさんの婚約者に……?
しかもカカオさんは私が恋愛感情を抱いていることを知ったうえで頼んで来たってこと……?
パニクっている私にカカオさんは優しくなだめてくれた。
空っぽのコップにコーヒーを注いで飲むことを進めてくれた。
私は慌てて注がれたコーヒーを一口飲んで、一息ついてから話を戻した。
カカオさんが私を選んだ理由がまだいまいち分からなかった。
だって、婚約者って1番大事な相手じゃない?婚約者候補だって沢山あるうえでアルカラムに相応しい相手を選ぶわけだし……
それに私1度振られてますし!?
カカオさんの返答を待ちながらそんなことばかり考えていると、カカオさんはゆっくりとした口調で答えてくれた。
色々あってご兄弟が直接決めていくことになったけど、結局全員ダメで、しかも婚約者を決めなくて良くなったとオリバー兄さんから聞いていた。
正直分からない。どうして私を選んだのか、最初に話した"私が1番適している"とはどういうことなのか。
頭がぐるぐるして話に追いつけていない私に、カカオさんはコーヒーを1杯飲んで話した。
ガーナちゃんも?
一瞬だけ、カカオさんの言葉が尖って聞こえた。
カカオさんの顔が険しくなる。
あぁ、この店が貸切で良かった。私はそう思った。
他の誰かに話を聞かれる心配がない。なら、私の想いも話せられる。
カカオ視点
僕の頼み事はあっけなく断られた。
好きな人と結婚できるのは幸せなんじゃないのか?なんで断られた?
そんなことをぐるぐると考えながら震える手を抑えていた。
するとジェシーは言った。
そう言ってジェシーは僕の震える手を握って落ち着かせる。
しまった!と思い慌てて口を抑える
何を言っているんだか……そんなこと、思ったことないさ。僕はそんなにヤワな心じゃないんでね。
これは紛れもない僕の本心だ。
ジェシーの顔が少しだけ悲しげな表情をしていた。
同情か、それとも哀れんでいるのか。そんなのどうでもいいけど、僕はやるべきことがあるんだ。
空のコップに少しだけ力を入れ、僕は真っ直ぐとジェシーを見た。
僕は心の中で笑った。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。