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第8話

ビタジェシ(ビタ(→)←カカ)
28
2026/02/06 11:05 更新
カカオ視点
女子が羨ましいと思ったのは、つい最近のことだった。
僕は兄さん……ビター兄さんが好きで、色々なアプローチをしていた。だけど、男が男に言い寄られるのは、さすがの兄さんでも困るかもと思いすぐ辞めた。
それぐらいの常識はあるからね。
これが普通なのさ。仕方ない
だからあまり迷惑をかけないようにと自分から離れたりもしていた。
でもある日、藍色のアルカラムの長男、オリバーが兄さんにジェシーの稽古を頼んだ日以来、ジェシーが兄さんのことを好きになっていた。
これはガーナ情報。恋話が大好きなガーナは僕に色々教えてくれたんだ。
バレンタイン、ホワイトデーなどと初心なジェシーを応援するものは沢山いるだろう。
僕がこんなこと考えたってどうにもならないことなんか分かっているけど…
なんだかジェシーに妬いてしまう。
それは、他のものに応援されるとか、他の人に相談とかして恋バナができるとか、そういうものではなくて。
ただ、結ばれることができる存在が、羨ましかった。
僕は男だし、しかも兄弟。女として生まれ変わっても結ばれはしない。
だから結ばれることができて、兄さんの隣を堂々と歩いていられる。そんなジェシーが本当に羨ましかった。
え?こんなこと言うのは失礼だって?
……それもそうだね。…でも、やっぱり考えちゃうんだ。もし、僕と兄さんが結ばれることができたとしても、僕じゃ兄さんの子を残せない。
アルカラム一族として、それは許されないだろう?

だからこんな提案をしたんだ。いい加減に理解できたかい?













兄さん
























ジェシー視点
私はジェシー。藍色のアルカラム家の長女で、兄であるオリバー兄さんの妹。影のアルカラムにふさわしい殺し屋になるために日々の鍛錬を惜しまず頑張ってきた。
そして……赤のアルカラムであるビターさんを密かに恋心を抱いていた。
そんなある日、ビターさんの弟であるカカオさんと偶然出会い、何を考えたのかカカオさんからお茶に誘われた。
私はてっきりビターさんたちがいるカフェアビアントに行くのだと思っていたけど、着いたのはチョコケーキが美味しいと有名な新しいお店だった。しかも貸切で店内には私たち二人だけ。
何を話すのだろうかと内心ドキドキしながら頼んだコーヒーを口に含んで何とか落ち着こうとしていた時、
カカオさんはチョコケーキを頬張りながらどこか悲しそうな顔で話した。
カカオ・アルカラム
実は、君に頼みたいことがあるんだ。
そういうカカオさんはコーヒーを飲んでひと息ついた。私は緊張で今にでも吐きそうだ…
ジェシー・アルカラム
た、頼み事…ですか?
緊張でどもる私に対してカカオさんとは一切目が合わない。
チョコケーキに釘付けなのか、ずっと食べている。
少しの沈黙ができた後、チョコケーキを食べ終わったカカオさんはフォークをおいて話し出した。
カカオ・アルカラム
近頃、ビター兄さんの婚約者が決められるんだ。
ジェシー・アルカラム
……え、
最初に話したように、ビターさんは私の好きな人。
ビターさんの婚約者が決められるとは、私にもチャンスが来たと言うこと。
でも、どうしてそんな大切な情報を…?
ガーナちゃんにだって知らされてないのに…
カカオ・アルカラム
……そこで、ジェシー。兄さんの婚約者になってくれないかい?
ジェシー・アルカラム
…………!??!!!?
カカオ・アルカラム
君がビター兄さんのこと好きなのは分かっているさ。
カカオ・アルカラム
だから僕は君に頼んだんだ。
ジェシー・アルカラム
……!?…!??!
何が何だか正直整理ができない。
え、どういうこと?私が…ビターさんの婚約者に……?
しかもカカオさんは私が恋愛感情を抱いていることを知ったうえで頼んで来たってこと……?
ジェシー・アルカラム
ど、どどどどうして…!!!
パニクっている私にカカオさんは優しくなだめてくれた。
カカオ・アルカラム
ちょ、説明するから落ち着いて。それじゃ話が入ってこないだろう?
空っぽのコップにコーヒーを注いで飲むことを進めてくれた。
私は慌てて注がれたコーヒーを一口飲んで、一息ついてから話を戻した。
ジェシー・アルカラム
どうして…そんな頼み事を私に?
カカオさんが私を選んだ理由がまだいまいち分からなかった。
だって、婚約者って1番大事な相手じゃない?婚約者候補だって沢山あるうえでアルカラムに相応しい相手を選ぶわけだし……
それに私1度振られてますし!?
カカオさんの返答を待ちながらそんなことばかり考えていると、カカオさんはゆっくりとした口調で答えてくれた。
カカオ・アルカラム
……君が、1番適していると思ったからさ。
ジェシー・アルカラム
え、?
カカオ・アルカラム
ショコラ姉さんの婚約者を僕たちが決めていたのは知っているだろう?
ジェシー・アルカラム
あ、はい。結局婚約者は決めなくて良くなったって……
色々あってご兄弟が直接決めていくことになったけど、結局全員ダメで、しかも婚約者を決めなくて良くなったとオリバー兄さんから聞いていた。
カカオ・アルカラム
そうさ。で、それが次は兄さんの番になってしまって。
カカオ・アルカラム
姉さんの時とはちょっと違うやり方でやることになったのさ。
ジェシー・アルカラム
違うやり方…?
カカオ・アルカラム
兄さん以外の3人が婚約者を立候補して、その中から兄さんが直接選んで行く形になったのさ。
カカオ・アルカラム
これは兄さんが決めたやり方。
カカオ・アルカラム
母さんたちも兄さんが言うならそれでいいと言ってそうなった。
ジェシー・アルカラム
それじゃあつまり……
カカオ・アルカラム
……だから、その候補として僕が君を選んだってわけさ。
ジェシー・アルカラム
……
正直分からない。どうして私を選んだのか、最初に話した"私が1番適している"とはどういうことなのか。
頭がぐるぐるして話に追いつけていない私に、カカオさんはコーヒーを1杯飲んで話した。
カカオ・アルカラム
…ガーナも君を推薦するらしい。
ジェシー・アルカラム
…え?
ガーナちゃんも?
カカオ・アルカラム
………兄さんが好きなんだろう?僕たち2人から推薦されているんだ。
カカオ・アルカラム
もちろん受けてくれるよね?
一瞬だけ、カカオさんの言葉が尖って聞こえた。
ジェシー・アルカラム
で、でも…
カカオ・アルカラム
…兄さんのこと好きじゃないのかい?
ジェシー・アルカラム
好きです!
ジェシー・アルカラム
好きですけど………
カカオ・アルカラム
じゃあ何が不満なんだい?
カカオさんの顔が険しくなる。
あぁ、この店が貸切で良かった。私はそう思った。
ジェシー・アルカラム
私、その頼み事、受けられません。
他の誰かに話を聞かれる心配がない。なら、私の想いも話せられる。





カカオ視点

僕の頼み事はあっけなく断られた。
好きな人と結婚できるのは幸せなんじゃないのか?なんで断られた?
そんなことをぐるぐると考えながら震える手を抑えていた。
するとジェシーは言った。
ジェシー・アルカラム
私、別にビターさんが嫌なわけじゃないんです。
ジェシー・アルカラム
ビターさんに不満とか、心配事とかもありません。
カカオ・アルカラム
なら…
ジェシー・アルカラム
でも私、カカオさんの依頼、受けられません。
そう言ってジェシーは僕の震える手を握って落ち着かせる。
ジェシー・アルカラム
私、知ってます。カカオさんも同じなんですよね?
カカオ・アルカラム
え、
ジェシー・アルカラム
私と同じ、ビターさんが好きなんですよね?
カカオ・アルカラム
どうして…ッ!!!
しまった!と思い慌てて口を抑える
ジェシー・アルカラム
ハハ、カカオさんもそんな反応するんですね。
カカオ・アルカラム
……
ジェシー・アルカラム
私、知ってます。カカオさんの気持ち…
ジェシー・アルカラム
好きな人と自分じゃない誰かが結ばれるなんて、とっても苦しくて、考えるだけで気が狂いそうになりますもんね。
何を言っているんだか……そんなこと、思ったことないさ。僕はそんなにヤワな心じゃないんでね。
カカオ・アルカラム
僕は…別に君が兄さんと結婚してくれるなら苦しくなんてないさ。
これは紛れもない僕の本心だ。
カカオ・アルカラム
僕だって、何処の馬の骨かも分からない奴なんかより、嫌な奴なんかより、君がいいと思ったから君に依頼しているんだ。
カカオ・アルカラム
君なら別に嫌ではないさ。
ジェシーの顔が少しだけ悲しげな表情をしていた。
同情か、それとも哀れんでいるのか。そんなのどうでもいいけど、僕はやるべきことがあるんだ。
ジェシー・アルカラム
カカオさん……
カカオ・アルカラム
僕の依頼は兄さんと結婚すること。僕は兄さんとの血縁を残せない。だから、君に託しているんだ。
カカオ・アルカラム
頼むよ。
空のコップに少しだけ力を入れ、僕は真っ直ぐとジェシーを見た。
ジェシー・アルカラム
………考えてみます…
カカオ・アルカラム
……そう…ありがとう。
僕は心の中で笑った。

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