「ジェノ〜、なにしてんの、ここ拭いて」
「あ、ごめん」
忙しい時間帯がなんとか過ぎ、ぼーっとしているとロンジュンにそう言われて慌てて机を拭くことに取り掛かる。
「そういえばあの新しく入ってきた子いるじゃん」
「あーうん」
つい最近高校生の女の子がひとり入ってきた。
1回だけ顔を合わせた。
元気でエネルギーが漲っていて、The高校生!って感じの子だったような気がする。
「あの子ジェノの事気になってるっぽいよ、連絡先勝手に追加してもいいのかなって聞かれた」
「へーそうなんだ、どうでもいい」
「いや、反応うす!もっとなんかあるでしょ」
「ないでしょ、そもそもあっちは高校生だよ?どうにかなったらやばいでしょ」
「それはそうだね、でもいちばんの理由はそこじゃないでしょ?」
机を拭いていた手を止めて、意味ありげに俺の顔を見てくる。
君はジェミナという好きな人がいるからどうでもいいんでしょ?って思っているのが透けて見える。
「…まあ、うん、そうかもだけどさ」
「追加ぐらいならいいんじゃない?って言っといたけどあんまり良くなかった?」
「なんでもいい、返信するかどうかは分かんないけど」
「返信ぐらいしてあげて、すごいキラキラした目で聞いてきてたしさ」
「若いっていいな」
「なにそれ笑対して年齢変わんないよ笑」
自分も高校生の頃はキラキラしていたのだろうか。
キラキラした目で誰かを追いかけたことがあったのだろうか。いや、なかったな。俺はそんなに綺麗な恋愛をした事なんてなかった。別にそのことに後悔はない。
ただひとつ思うことがあるならジェミナのことだ。
ジェミナもいつかは誰かのことをキラキラした眼差しで話す時が来るのだろうか。その時俺は、どんな顔をしているのかな。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!