その後内野手コーチの城石さんに無事会うことができ、
明日から始まる練習メニューの確認を急ぐ
次はブルペンに____と考えながら時計に目をやると
城石さんが一緒に内野手メンバーの元へ行かないか、
と提案してくださった
1度は遠慮したが、せっかくだから、と押し切られた
内野手は山田選手をはじめとして源田選手、牧選手、
岡本選手、山川選手、村上選手というスター選手が
揃っている
本当に恐れ多いけど、一緒に働く仲になるんだ、と
腹を括って練習場へ向かう
選手たちの和気あいあいとした雰囲気
この中に入っていけるのかな、と少し不安になるけど
ルークさんが教えてくれた笑顔での対応を意識する
まずは笑顔で挨拶して、それから____
遠くから大声でわたしの名前を呼んだのは、
DeNAの牧秀悟選手
明るくて気さくで、まさに“陽”の人。
さっきの自己紹介で覚えててくださったのかな、
なんて考えていると、
山川選手と山田選手がこっちに駆け寄ってきた
一気に選手2人に挟まれると緊張と圧迫感がすごい
2人は色々話しかけてくださっているんだけど、
正直緊張しすぎてあまり聞き取れてない…
選手の輪に近づいていくと、牧選手と源田選手の
やり取りが聞こえてくる
先程お話した岡本選手も気づいてくださったようだ
村上選手を呼び寄せてなにやら耳打ちしている
山田選手と山川選手に誘導され、内野手の選手たちと
全体ミーティングを終えて初めて対面する
軽く頭を下げると、拍手が起こった
牧選手がストレッチを止めて立ち上がる
源さんと呼ばれたのは日本を代表する守備職人、
源田壮亮選手。
源田選手はこちらを見るとすぐ目をそらし、
牧選手にやめてよ、とこぼした
牧選手は源田選手に笑いかけると、
その後自己紹介してくれた
明るさ攻撃で押されてる気がするけど…
無理強いというよりかは、本心で仲良くしたいと
思ってくださっている感じがした
そう切り出したのは三冠王、村上宗隆選手
牧選手も大きいけど、村上選手はもっと背が高い
村上選手の次の言葉を待つと、なぜか口ごもっている
まっすぐ目を見られると、断りづらいんだよね…
いつもわたしにちょっかいを出す佑京さんの視線を
思い出す
わたしの言葉を聞いた村上選手は笑顔になって、
岡本選手の方を見た
村上選手が言葉を発する前に、岡本選手が牽制する
ほんと、仲良しなんだなあ…
微笑ましい光景に、少し頬が緩む
その先に、少し離れた場所でストレッチをしている
源田選手の姿が見えた
他の選手に挨拶したのに、源田選手に挨拶しないで
ブルペンに向かうのは違うよね、
1度拒まれていたから勇気を出して源田選手の元へ向かう
そう呼びかけても、源田選手は目を合わせようとしない
もしかして、出会って早々やらかした____?
でも、怯むな、わたし
選手がわたしのことをどう思っていようと、
わたしはわたしの仕事をするだけ
気を強く持って、源田選手の目の前に腰掛ける
源田選手は斜め下の方向を向いてこっちを見ない
だめだめ、こんなところで怯んじゃだめ!
下を向いたまま、源田選手が口を開く
そして何かを決心したかのように、
こちらに向き直ってわたしと同じように正座した
初めてしっかり目が合う
え
咄嗟に否定する
源田選手はシーズン中に何度かわたしを見かけたこと
若手選手が連絡先を交換しに行くことを知っていたこと
それらが全て断られたと聞いたことを話してくれた
源田選手が呆れたように笑う
佑京さんがそんなことしてたの?
わたしの出会いの場になるかもしれないのに…
ほんとにあの人…
こうして佑京さんの悪事がまたひとつ暴かれた
その言葉を聞いた源田選手は、
少し驚いたような顔をしてこう聞き返した
最初は会話の中のノリだと思った
でもよく見ると源田選手の耳が気持ち程度赤い
それを見て、恋愛経験が浅いわたしにも意味が伝わった
それって、連絡取り合うつもりってこと____
なんと答えるのが正解か急に分からなくなってしまった
源田選手は時折下を向きながら、
わたしの言葉を待っている
絞り出して出てきた言葉がこれだった
言葉を発した直後、これ絶対間違った、と思った
源田選手が微笑む
源田選手は優しくて控えめで、安心感いっぱいだ
時計に目をやるともう予定の時間が迫っていて、
いつからいなくなったのか分からない城石コーチを
ずるいと思いつつ、
源田選手や他の選手に軽く礼をして、ブルペンに向かう
内野手の方はみんな気さくで友好的
2度目の対面で緊張していたけど、
この調子で他の選手とも上手くやれたらな____

















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!