落ちたはずだった私は手をココに掴まれていた
焦った様子で息の荒れているココとは裏腹に
止められてしまった、と少し落胆した気持ちで
何故かとても落ち着いている僕
そして、このまま死ぬ方法を探す
今は僕も手を握り返しているけど
手を緩めたら落ちれるのでは無いかと思い手を離した
すると、スルスルと手が抜けそうになり
もう片方の手でも腕を掴まれた
僕はその状態のまま普通に話す
映画とかだったらヒロインが「死にたくない!」
とか泣きわめいたりするのだろうが
僕はそんなことはしない、というか死にたいわけだし
泣きわめく要素など一切ない
救われて泣きわめくならまだしも
まだ死ねる可能性はあるわけで何方でもない
二つの意味で宙ぶらり状態だ
そんなことを考えながら死ぬ方法を考える
爪で引っ掻いてみる?
腕に噛み付いてみる?
ナイフで刺すのは可哀想……
いや待ってろと言われても……と思いながら
どうしようもないので大人しくじっとしていると
ココに突っ込まれた
まあどちらにしろこの体制は疲れるので
手を握り返す
すると思い切り腕を引っ張られて
元いた屋上まで連れ戻されてしまった
僕が聞くとココは驚いたと言うか間の抜けた顔をした
今日中に死ねればいいのだから別にいいかと思って座った
すると、ココも隣に座った
𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!