*side あなた
途切れ途切れな息をはきだす
全身という全身から汗が出てくる
この蒸し暑さは都会の真夏日と変わらない
人里という一般の人々が住んでるところに行くのには俺の住んでる神社からおよそ半刻かかる。
ついでに日向が多い+太陽がまぶしいし、暑い
つまりただならぬ地獄なのである
しかしここまで来たのだ。人里の郊外まで来たんだ。
ここまで来て帰るのが一番癪に障る
昔よりモヤシになった体を鞭打って歩く
左にある八百屋の野菜達は水が浸された桶に風船のごとく浮いていた
八百屋近くの雑貨屋にはトリカブトや睡蓮が描かれた風鈴、クロッカスをモチーフにした髪飾りが風に吹かれたのか少しズレている
その二店先にはキュウリの漬け物が美味しい店が。その斜め右には気の優しいおっちゃんがいる居酒屋が
その三件先にはうなぎの蒲焼きがどちゃくそ美味い店が、その横にあるのいつもおまけをくれるお姉さんがいる店が、
その隣には人里でも指折りの料理人がいる定食屋が
そして、その数件先にー
俺らの仲間が経営する店があるのだ
「カランカラン」っと心地よいレトロな鐘の音がなる
コーヒー豆特有の匂いが鼻をくすぐる
カウンター席の前にある厨房に立っているのは、
朱色の目に黄金色の髪。赤いリボンのよう髪留めで髪を一束結んでいる少年。
彼は俺の顔を見るなりある言葉を口にする
ー IQ2の能力者 ー
キラ
そうツッコむのは亜麻色にグラデーションがかかった薄藤色の目を持ち、巫女装束を纏った少女。
ー 例外を持つ普通の剣士 ー
紅葉
と憤慨し、キラは俺らに向かって指をさす。
俺らが散々わざと避けてきた的を軽々しく打ちこむような途轍もなく心にダメージを与える言葉をキラにぶつけるのは
壁に寄りかかり、腕を組む焦げ茶色に鮮緑の目を持つ少年。
ー 元命喰いの少年 ー
ザキ
キラは目をまん丸くさせ、ザキを異物のように見つめる
と、笑う。
そして俺は店に来た理由(建前)をキラに呟く
カウンター席に座り、テーブルに突っ伏す
仄かに香るパンとコーヒー豆の匂いが鼻をくすぐる
バカだけどどこかしっかりしているキラ
そのキラの大切な人であり、相方の紅葉
キラの相棒であり、どこか素っ気ないけど優しいザキ
こんな優しい人に囲まれている俺は幸せ者だとつくづく思う。
next →
資料 No.4
人里
幻想郷でも妖怪からの手から怯えなくて済む人間の少ない居場所。
木造の平屋が多く軒を並べている
妖怪の手が届かないと言いつつも、幻想郷規模の異変に於いては、よく巻き込まれるところでもある。
(参考:pixiv百科)
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。