第5話

第一位の第二王子
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2023/06/18 11:00
その後人魚を城に連れて帰ったショウタは、案の定父親である王に目をつけられた。

だがショウタは売買のことは言わず、

『弱っている人魚を海で見つけたから元気になるまで世話をする』と嘘をついた。

それが嘘だろうと本当だろうと、これ以上は口を割らないのを父親は知っていたため、

世話をするのを承諾した。
水槽を自分の部屋に置き、横に椅子をつけ、人魚に向かって話しかけた。
ショウタ
お前喋れないんだっけ。
じゃあ名前も聞けないよな。
ショウタ
名前か…何がいいかな……
ショウタ
、ん?
すると、ずっと離れていた人魚が近づいてきた。

水から顔を出し、机を指差す。
ショウタ
なに…紙とペン?
渡すと、何やら書き始めた。

そして書き終えたのか、紙を渡された。
ショウタ
リョ…ウ…ヘ…イ……
ショウタ
名前、リョウヘイっていうのか?
リョウヘイ
コクンッ
人魚は小さく頷いた。
ショウタ
リョウヘイか…いい名前じゃん。
ショウタ
これからよろしくな、リョウヘイ。
そう言って握手を求めると、リョウヘイは小指だけを軽く握り、水の中に戻っていった。

まだ少し、人間に対して恐怖心があるのだろう。

それを理解していたから、それ以上は近づかず、一旦部屋を出ることに。
「兄様!」
部屋を出ると、そう呼ばれた。
ショウタ
おぉ、ラウール。
そこにいたのは、弟のラウール。

第二王子にも関わらず、王位継承権の第一位を持っている。

その理由は、あまりにもショウタが王に相応しくないから、

ショウタより頭の良いラウールを次の王にしようと決めたのだ。
ラウール
兄様…人魚を飼うというのは本当ですか?
ショウタ
あぁ、本当だ。
信じないなら見てみるか?
ラウール
信じないとは言っていません。
ですが…
ラウール
なぜです、兄様。
人魚なら魔族省に送ればいいじゃないですか。
兄様が世話をする必要は…
ショウタ
一目惚れだよっ
ラウール
っ、
そう、ショウタはリョウヘイを初めて見たあの時、恋に落ちていた。

それを自身で把握して、そして誰の手にもいかないように、自分で買ったのだ。
ラウール
一目惚れって…
たしかに人魚は美しい種族です。
ラウール
ですが我々人間と恋仲になることなど不可能ですよ。
ショウタ
別に付き合おうなんて考えてねーよっ
ただ俺の手の内に収めていたいだけっ
ラウール
兄様…
ラウールは俯いた。

そして、真っ直ぐショウタを見つめた。
ラウール
兄様、やっぱり僕は第一位の座はあなたがいるべきだと考えます。
ショウタ
俺に言うなよ、親父が決めたんだからっ
ラウール
でも…!
ショウタ
相応しくないって、自分でわかってる。
お前の方が国のためになる。
ショウタ
いい加減俺のことは放って置いて、親父たちを喜ばせてやってくれよ。
ラウール
兄様…!
呼び止めるラウールを無視し、ショウタはこの場から去った。

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