ボムギュさんは、固まっている私と陽平さん夫婦を
交互に見る。
私がようやく口を開いた時だった。
「しゃ、喋った…」
「何語か分からんけど喋ったぞ、みのり!!」
陽平さんがボムギュさんの言葉を聞いたのか、
突然驚いたように言う。
「何言ってんの。韓国語でしょ」
みのりさんは、動揺しまくってる陽平さんに対して
冷静にそう言うと、私たちのところまで歩いてくる。
「あなたちゃん、久しぶりね」
「二名様でいい?」
と、みのりさんは、にこっと優しく微笑む。
あ…
みのりさん、いつもと変わらない…。
「そっか、良かった。えっと…」
みのりさんは、私の隣で呆然としてるボムギュさんの方に
視線を向ける。
「あ…、あにょはせよ?」
みのりさんが恐る恐る、ボムギュさんにそう尋ねる。
あ、だめだ私。
あにょはせよすら、日本語に聞こえる。
と、
「ちょっと待ったぁぁぁぁぁー!!!」
「何だ君。あなたちゃんの何だ、ん?」
私たちとみのりさんの間に、いきなり陽平さんが
割り込んできた。
「あぁー、もうこら!陽平!!」
そういえば、お父さんから聞いた事があるような気がする。
陽平さん、実は中学生から高校時代、ここら辺一帯を
まとめてたヤンキーの親玉だった、って…。
「えっと、つまりは…」
「この、ボムギュさんって方はあなたちゃんと
食事がしたい、と...」
4人席のテーブルに陽平さん、その向かい側に
ボムギュさん、私で座るというなんとも不思議な状況。
それに、このどこか張り詰めた空気…。
まるで…
「結婚前の挨拶みたい」
そうやって、楽しそうに笑いながらお水を私たちに
渡してくれるみのりさん。
「みのり、笑い事じゃないんだからな」
「あら、そう見えたからそう言っただけだけど?」
「というか、何で陽平があなたちゃんの
恋愛事情に口出ししなきゃいけないのよ」
みのりさんは、むすっとしてる陽平さんに
そう言いながら私たちの前に座る。
「ボムギュさん、何歳なの?」
みのりさんの目は、ボムギュさんに興味津々だ。
私は、日本語が分からずきょとんとしてるボムギュさんに
みのりさんから聞いた言葉をそのまま伝える。
そう言えば、
「「えぇっ!若っ!!」」
夫婦の陽平さんとみのりさんは、息ぴったりに同時に叫ぶ。
「大人っぽいのね〜」
「てっきり26歳ぐらいかと…」
「ちょっと!それ褒めてんの?」
みのりさんと陽平さんのその言い合いが可愛らしくて、
どこか面白くて、
思わず笑いがこぼれる。
すると、
「良かった」
と、陽平さんが言った。
陽平さんの声に2人を見てみれば、
「元気そうで良かった、あなたちゃん」
みのりさんが、優しく微笑む。
「あなたちゃんの今の顔、幸せそうだよ」
「朔くんと、いた時みたい…」
陽平さん、みのりさんの言葉にハッとする。
私…またもう1度、
そんな風に、笑えてたのかな…?
私は、そう言って頬を緩めた。
私たちは、口いっぱいにオムライスを頬張りながら
「美味しい〜!」と言い合う。
口いっぱいにもぐもぐしてるボムギュさん、
めっちゃ可愛い…。
ぽーっとボムギュさんに見とれていた私は、
ボムギュさんの声で我に返る。
「ボムギュさんが可愛すぎて見とれてました」
なんてこと、言うことなんてできなくて口ごもる。
と、ボムギュさんは、ガサゴソと彼のカバンを探ると、
携帯を取り出して画面をスワイプしたりと何か探し始める。
ボムギュさんは、私が見やすいようにスマホ画面を
差し出してくれる。
ボムギュさんのスマホ画面に映し出されてる日本語を
読めば、ボムギュさんは「そう」と頷く。
ボムギュさんはそこまで言うと、
画面に落としていた視線を私の方に向けて、
そう、聞いてきた。
ボムギュさんの真剣な瞳に、
私の背筋もどこかすっと伸びる。
ボムギュさんの話す言葉が分からなくなるのは…嫌だ…。
だけど、ボムギュさんと私の会話だけ、
まるでフィルターを通したみたいにお互いに聞こえるのも、
嫌だ…。
私は、おそるおそるコクリ、と頷く。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。