第33話

【青 春編】09 「特に、黄色い菊が」
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2025/07/23 22:04 更新
時は少し遡り、体育祭後_____


悠黄は夕日に背を向けて空き地の前に立っていた。
今でも律儀に道路の端に瓶が置かれ、花が生けてある。
黒獅子 悠黄
ッ……
それが加害者からのだと思うと、モヤのようなものが悠黄の心にこびりついて離れなかった。










???
先輩……っ!
さっき聞いたような後輩の声。
理由を知っているから、悠黄のことを唯一『アニキ』と呼ばない人物。
悠黄はゆっくりと振り返った。
思った通りそこには、
狐社 空樹
やっぱり……ッここにいた……っ!
空樹がいた。
荒れていた息を整えると、空樹は獅子に近付く狐のように
恐る恐る歩み寄った。
狐社 空樹
知ってましたか
雑草が自由奔放に生い茂る空き地。

空樹はそのどこかを見ていた。
狐社 空樹
弟さんの亡くなった時期、ここの空き地……





























狐社 空樹
……菊が、よく咲いてるんです
狐社 空樹
特に〝黄色い菊〟が
黄色い菊って、と空樹は悠黄を見上げた。
その顔は逆光でよく見えない。
狐社 空樹
__________なんです
何故それを口にしたのかは説明もせず、空樹はまた視線を
空き地に戻した。


狐社 空樹
……弟さんを轢いたのは僕のお父さんです
悠黄は目を丸くして、空樹を見下ろす。
狐社 空樹
あの日出掛けたいって言ったのは僕
狐社 空樹
帰宅予定時間が延びたのも僕が原因
空樹は何か思うこともなく、ただ独り言のように言った。
狐社 空樹
弟さんは先が長くなかったそうです
狐社 空樹
弟さんの担当医から聞きました
ああ、そういえばと悠黄はぼんやりと思い出す。
あの日、加害者の子供と見慣れた担当医がなにか話していたなと。

そして、空樹とあの子供は妙に似ているなと。
狐社 空樹
弟さんは_____





狐社 空樹
自分の分も生きてほしかった……のかな、と
空樹はじゃり、と地面を踏みしめた。
悠黄は空樹を帰るよう促す。
高校生とはいえ、そろそろ暗くなる時間だ。
最近は何かと物騒で、周辺も不審者情報が相次いでいる。
狐社 空樹
……ごめんなさい、帰りますね僕
気が付けば、空樹の姿は消えていた。





そして前話まで戻る。
黒獅子 悠黄
いや、いいんよ
黒獅子 悠黄
あれから電話で両親詰めたら白状してな
黒獅子 悠黄
確かに狐社の言う通り寿命短かってん
言葉を選んでいた悠黄は、くしゃっと空樹の頭を撫でた。
黒獅子 悠黄
……狐社のせいやないで
狐社 空樹
そう……ですか?
黒獅子 悠黄
狐社は気付かせてくれたんや、ありがとな
悠黄がにっと笑うと、空樹は目を伏せた。
黒獅子 悠黄
それじゃ、な
悠黄は、空樹に背を向けて帰っていった。
いつもとは反対方向。どうやら予定でもあるらしい。

















































狐社 空樹
……僕は
狐社 空樹
……感謝を述べられていい人間じゃない
狐社 空樹
そんな資格僕にない






……なんて、誰にも知られたくない。
誰も知らないでいてほしい。
空樹は呟きを踏み潰すかのように地面に力を込めた。
狐社 空樹
……っ帰らなきゃ
長い下校路を一歩、また一歩と歩き始めた。











????
…………
あの呟きを聞いていた人物がいるとも知らずに。

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