工業地区。
深夜。
冷たい風が吹いていた。
しかし。
その場にいた兄達は。
そんなことを気にする余裕がなかった。
喋らない。
喋れない。
目の前の光景が。
理解を超えていた。
炎。
雷。
風。
水。
植物。
血。
6人の能力が夜の闇を照らしている。
あっとが呟く。
……しかし。
夢ではない。
確かに見えている。
聞こえている。
感じている。
全て現実だった。
一方。
6人はまだ気付いていなかった。
大型魔獣との戦闘。
そちらに集中している。
魔獣が突進してくる。
莉犬の指示を合図に、全員が動いた。
連携。
判断。
動き。
どれも洗練されていた。
まるで。
何年も戦ってきたように。
実際そうなのだが。
兄達は知らない。
知らなかった。
今までずっと。
ロゼが呟く
心音も言う。
少しずつ。
点と点が繋がっていく。
帰宅が遅い日。
増えた怪我。
消える休日。
不自然な言い訳。
全部。
全部。
ここに繋がる。
しゆんが小さく言う。
怒っているわけではない。
むしろ逆。
危険なことを一人で抱えていた弟を思うと。
胸が苦しくなった。
その頃。
魔獣との戦いは終盤に入っていた。
ぷりっつの植物。
動きが止まる。
3人の攻撃が重なる
最後に。
莉犬の炎。
ドォォォォォン!!
巨大な爆発。
魔獣が消滅する。
いつも通り、ちぐさが座り込む。
全員も息を吐く。
任務完了。
その瞬間だった。
誰かの声。
6人が振り返る。
そこにいたのは。
兄達だった。
空気が止まる。
完全に。
止まった。
全員同じ感想だった。
終わった。
色々と。
兄達は黙っている。
第七部隊も黙っている。
数秒。
いや。
数十秒。
最初に口を開いたのは。
しゆんだった。
短かった。
だが。
圧が凄かった。
普段なら反抗する。
でも今は無理だった。
完全に見られた。
言い逃れできない。
あっとが言う。
全部正解。
あっとの顔がどんどん曇っていく。
怒っているわけではない。
心配している。
それが分かるから。
2人は少し、気まずかった。
ななもりも黙っていた。
しかし。
次の瞬間。
思い切り、莉犬の頭を叩いた。
バシッ
静かな声。
本当に。
静かな声だった。
だからこそ。
重かった。
莉犬は何も言えなかった。
そして。
らぴすとらいとの兄達。
こちらも黙っていた。
しばらく。
本当にしばらく。
黙ったまま。
そして。
ロゼが言った。
らぴすとらいとは目を逸らす。
兄2人がため息をつく。
何も言えなかった
誰も怒鳴らなかった。
責めなかった。
ただ。
心配していた。
それだけだった。
だからこそ。
6人は少しだけ苦しくなる。
ずっと隠してきたから。
守るために。
心配させないために。
でも。
結果的に一番心配させてしまった。
そして、兄弟達が能力を知った今。
もう、今まで通りではいられない。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。