第10話

  9 ⌇ episode
491
2026/02/28 13:32 更新



   ゛ 赫 視点 ゛


   文化祭が終わって数日 。


   なんとなく疲れは残ってるのに 、
   胸の奥だけは ずっと落ち着かなかった 。



   理由は一つ 。



   ─── いるま が あなたの下の名前 に告白した事 。



   それを聞いた時 、
   胸がずっと ザワザワしていた 。


   いるま が あなたの下の名前 に好意を寄せている事は
   なんとなく知ってた 。


   あいつ が 何も言わないから 、
   見て見ぬフリを 続けたつもりだった 。



   でも 告白したと聞いた時
   腑に落ちた感覚と 、
   名前も分からない感情で心が沈んだ 。



   でも あなたの下の名前 が 断ったと知った瞬間 、
   自分でも 驚くくらい ほっ としてしまった 。


   いるま は 大事な親友なのに 。


   安心した 自分に気付いて 嫌になる 。


赤瀬 凪都
 ( … あなたの下の名前 が 誰かを好きになるのが怖い ) 



   昔からずっと一緒に居た 。


   誰よりも近くに居た 。


   笑う顔 . 怒る顔 . 泣く顔 . 不機嫌な時の顔
   どんな 顔も知ってる 。



   ─── でも その向けられる顔は 、
            ゛ 幼馴染 ゛として 。



   恋として見てくれたことなんて 、
   1回も無かった 。



   いるま が 校門前で話しかけてきた 。


紫崎 要真
 なつ … 少し話せる ? 



   いつになく 落ち着いた声だった 。


紫崎 要真
 あの日の話 、聞いた ? 

赤瀬 凪都
 … なんのこと 

紫崎 要真
 俺が告白した日 。 
 … あなたの下の名前 が断った理由 、 

紫崎 要真
 分かってるつもり 。  



   そう言う いるま の笑顔は 、
   どこか 棘と寂しさが感じ取れた 。


紫崎 要真
 なつ 。あなたの下の名前 はお前のこと 
 特別に見てると思うわ



   胸が鋭く痛んだ 。


   言われたくない


   この 俺が楽な関係が崩れそうだから 。

   でも その言葉に縋りたい自分も居た 。


赤瀬 凪都
 … 違う 。そんな訳ないだろ 



   否定した声は 少し小さくなった 。


   でも それを見逃さず
   いるま は首を横に振った 。


紫崎 要真
 気付いてないだけだろ 、あいつは 
 それに …



   いるま は 途中で言葉と止めた 。


紫崎 要真
 ───   まだ 好きなんだよ 



   息が止まった 。


   試してるかもしれないし 、
   その言葉が本気なのかも分からない 。


紫崎 要真
 そんな 軽い気持ちで好きになった 
 わけじゃない 。



紫崎 要真
 こんな 数日で 諦められねぇよ 。 



紫崎 要真
 だから … ごめん 。
 まだ 好きでいるから 

紫崎 要真
  ゛ なつ と同じように ゛ 



   その一言が 胸に刺さる 。


赤瀬 凪都
 ( 俺がずっと隠してた気持ち 、
     いるま は最初から見抜いてたのかよ … )



   いるま は あなたの下の名前 を奪うつもりは無い 。

   でも 諦めるつもりも無かった 。


赤瀬 凪都
 ( あなたの下の名前 は いつか いるま を 、
       見てしまうんじゃないか )



   そんな想像が 、耐えられなかった 。

   話した後 、あなたの下の名前 が近付いてきた 。


   いつも通り明るくて 、
   俺達を見て笑ってくれた 。


   その笑顔を見るだけで苦しくなる 。


赤瀬 凪都
 ( 俺は今 笑えない 。 ) 



   だから避けた 。


   あなたの下の名前 を傷付けたくないくせに 、
   どうしたらいいか 分からなくなった 。



   自転車が突っ込んで来た時 、
   考えるより先に 手が動いた 。


赤瀬 凪都
 危ない … ! 



   抱き寄せた感触 。

   目の前で 傷付くんじゃないかと 震えた 。


赤瀬 凪都
 … あなたの下の名前 。大丈夫か ? 

あなた
 ごめん … 大丈夫 
 なつ こそ怪我ない ? 

赤瀬 凪都
 無傷 。ちゃんと 前見て歩けよ 



   自分でも分かるくらい 声は弱かった 。


   情けなかった 。


   でも 、これが本心だった 。



   好きなんだ 。

   ずっと 、ずっと 。



   だけど言えば 関係は崩れる 。


   あなたの下の名前 の笑顔を曇らせたくない 。



   だから 今日も言わない 。

   言えない 。



   そしてまた 、
   守りたいのに 傷付けてしまった 。



あなた
 なつ 待って 、ねぇ  ───  ! 



   振り返れなかった 。


   振り返ったら 全部言いそうだった 。



   心の中に閉じ止めてきた想いが 、
   あの小さな声で
   … 全部解けてしまいそうだった 。



   だから逃げた 。



   ─── 幼馴染 のままで居たいなんて嘘だ 。



   本当は 。


赤瀬 凪都
 ( あなたの下の名前 が 誰のものにも ならないで欲しい ) 



   胸が痛くて 、息が苦しかった 。

   夕焼けの色さえ 滲んで見えた 。



   なつ は まだ知らない 。



   その夕方 、あなたの下の名前 のスマホに
    “ いるま の メッセージ ” が届いたことを 。



   そして 、
   その メッセージ が 3人の関係を

   さらに 揺らすことを 。







プリ小説オーディオドラマ