近所の山には、いってはいけない場所がある。
山自体には入ってもいい。秋には紅葉が美しく、春には桜が咲き乱れるここは、この町の金銭面に、大きく貢献してくれている。
行ってはいけない場所というのは、山の途中にある分かれ道の右の道だ。その道を行くと奥には祠があり、昔は生贄をそこに捧げていたため、今行くと生贄になった者たちの怨霊に取り殺されるという。
結論から言うと、作り話だ。
悪いことすると鬼が来る。これと同じ。実際は来ない。
この祠も、近くの崖が崩れかけで危ないので、子供たちが近づかないようにそう言っているだけ。
もちろん、町にこの話を信じている人間はほとんどいなかった。
ある時、町のものに落書きをしたりと好き放題な観光客が、その祠への道に行ってしまった。
塗料をまいたりしながら進むので、警察を呼ばれていたが、気にせず中に入っていった。
数分後、警察が到着し、祠の場所まで行った。塗料はそこで途切れており、ここまできたことはわかっていたのに、彼らが見つかることはなかった。
行方不明。比較的高度が低く、登りやすい人気のハイキングコース。この山で初めての行方不明者だ。
町はちょっとした騒ぎだった。しかし、その後詳しく捜査することもなく、行方不明だと言うのに、ローカルニュースにも載らなかった。
大して信じてないくせに、怨霊のせいにして町の人々は目を背いた。
そんな中、一人の青年が、「これはおかしい!」と、声を上げた。
何故行方不明なのに探さないのか、怨霊なんているわけないと皆知っているのに、どうしてそんな子供だましのせいにするのか。
彼は3年前引越してきた者だった。
次の日、彼は探しに行くと言って山に入った。警察も仕方無しといった様子で2、3人ついて行った。
彼らは帰ってこなかった。
誰も探さなかった。
今日も紅葉が綺麗だ。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!