第5話

 03 
100
2026/03/09 09:00 更新



 翌日・日曜日の午後 。
 私はお菓子の入った紙袋を手に
 隣の部屋の前に来ていた 。


 
あなた
 ( いるかな …… ) 



 そう 、引っ越してまずすることは
 近隣の部屋に住む方への挨拶!!


 これでこれからの住民関係が
 左右されると言っても過言ではない 。


 
あなた
 …… っ 、えい! 



 緊張しながらも覚悟を決め
 えいっとインターホンを鳴らす 。


 



 ピーンポーン ♩


 



 軽快な音が響き
 少しの間静寂が訪れる 。

 しかし 、いつになっても
 その静寂は止まない 。



 
あなた
 …… い 、いないか …… 



 運悪く外出中らしい 。

 ふぅっと息を吐き出し
 また今度来ればいいだろうと
 その場を後にした 。






 



 同日の夜遅く 。



 夜食を摂りたくなった私は
 薄手のカーディガンを羽織って
 近くのコンビニへと向かった 。


 
 . 
 ありがとうございました ー 



 会計を済ませ
 店員にお辞儀をして店内を出る 。



 夜の東京の住宅街は
 街灯によって明るく照らされている 。

 その道を足早に歩いていると
 曲がり角で人の気配がした 。


 
 
あなた
 ……! 
 
 . 
 お嬢さん 、今一人? 
あなた
 …… は 



 知らない男性にそう声をかけられた 。
 私はその場にフリーズする 。



 え 、お嬢さん??
 私中高生だと思われてる?
 今度大学生になる身なのですが 。
 私の身長が低いから???



 そんな馬鹿馬鹿しいことが
 一瞬脳内で駆け巡っていたが
 すぐにはっと我に返る 。


 
あなた
 ( そ 、それどころじゃない! )  



 本能が危険を察していた 。


 これっていわゆるナンパや誘拐
 をするときの声の掛け方だ 。

 逃げ 、ないと ……


 
あなた
 あの …… すいません 、それでは 



 上手くそういって
 その場から逃げようとしたが
 その前に腕を掴まれた 。


 
あなた
 …… っ! 
あなた
 やめて 、ください …… 
 . 
 それでは 、じゃないんだよねぇ 
 . 
 ちょっとこっち 
 来てもらって良い? 



 深めに被ったキャップの隙間から
 にこっと目を細めているけど
 明らかに笑っていない 。


 私は掴まれた腕を必死に
 振りほどこうとした 。
 けど体格差でそんなことできるわけなくて 。


 
あなた
 やっ …… 



 背筋が凍り頭の中は真っ白 。
 呼吸が上手くできない 。


 
あなた
 …… っ 、だ 、誰か …… ! 



 必死に声を絞り出した瞬間
 ガッと 、何かを掴む音が響いた 。


 涙目になりながら後ろを振り返ると
 別の男性がキャップの男性の腕を
 これでもかと強く掴んでいた 。


 
あなた
 …… ぁ 



 赤の長い髪を一つに結い 、
 翡翠色の双眸が鋭い光を放っている 。
 腕には警察官であることを示す腕章 。
 これでもかと整った容姿 。


 そんな彼の薄い唇が開き
 夜の街に低く静かな声が響いた 。






 
 . 
 …… おい 
 . 
 アンタ 、今何しようとした ? 







 






 

プリ小説オーディオドラマ