第11話

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2026/02/24 08:00 更新
Side.T





自分たちのリハも終わり、楽屋に戻って少しの間、休憩をもらえることになった。
流輝が「たっくん、スマブラやろう」と声をかけてくるが、そんな気分になれず、「誰かとやっときな」とSwitchだけ渡して楽屋を出た。

あなたちゃんに会いたい。

その思いひとつで行動してしまう自分が怖い。でも、この機会を逃せば次にいつ会えるかもわからないから。

楽屋を探している途中、スタッフに紙とペンを借り、半ば殴り書きで自分のLINE IDを書いた。
また一緒に二人で踊る機会がほしい、とは言わない。ただ、繋がりがほしい。あの時のように。
数分歩いて、やっと見つけた。ちゃんみなちゃんのダンスクルーがいるであろう楽屋。
自分もバックダンサーをしていた経験から、大部屋にまとめられているのでは、という予想は当たっていた。
ドアの隙間から少し中を覗くと、部屋の隅でiPadを見ながら踊っているあなたちゃんの姿が目に入る。
さっきスタジオで見た振付とは違う。別の曲のコレオでも任されたのだろうか。


「あの、なにか御用ですか?」

「…あっすみません!」



ビクッと効果音が鳴ったんじゃないかと思うほど、心臓が跳ねた。今の俺は完全に楽屋観察してる不審者だ。恥ずかしい。



「すみません、あの、あなたちゃん呼んでもらえますか?少し、用があって…」

「あなた…ですか?少々お待ちください。」




明らかに「何の用だ」と言いたげな表情をした女性は、楽屋へ戻り、あなたちゃんのもとへ向かった。
……やばい。衝動的に来てしまったけれど、四年ぶりくらいに会うからか、心臓が口から飛び出しそうなほど緊張している。何を話すか、頭も回らない。
来たところで迷惑、だよな。
どんどんネガティブになる自分が嫌になり、壁に寄りかかって下を向いたまま、時間が過ぎるのを待つ。




「…たっくん…?」


懐かしい声が俺を呼ぶ。顔を上げると、動揺を隠しきれていないあなたちゃんが立っていた。


「久しぶり、あなたちゃん。」


この緊張が伝わらないように、挨拶をする。自分でも驚くほど、平然を装えていた。4年と時間が流れた分、会話はぎこちない。
それでも、今まで以上にあなたちゃんがどうしようもなく愛おしかった。
会話の流れで、柄にもなくあなたちゃんの頭に触れる。
「大きくなったね」なんて、親みたいなことを言って。……俺らしくない。


「…もう、子ども扱いやめて?」

「ごめんごめん(笑)久々に会えて嬉しくなっちゃって、つい」


冗談っぽく、ちゃんと言えていただろうか。余裕ぶることしかできない自分がちょっと情けない。


さっき書いた連絡先はポケットの中にある。
いつ渡すかタイミングを探っていると、背後から聞き慣れた声が飛んできた。



「たっくん!?誰!?その女の子は!!」

「かわいい〜女の子やん〜〜!!!!」



……最悪だ。面倒くさい人たちに見つかった。
聖人と直哉が「紹介して」とばかりに近寄ってくる。
うわ、紹介したくねぇ、と思いながらあなたちゃんの名前を告げる。たぶん、顔にも出ていた。
今じゃないだろ、って。
直哉の勢いに圧倒されているあなたちゃんに謝り、二人を楽屋へ戻そうとした、その時。

「そろそろ戻らなきゃ」と、あなたちゃんが仕事へ戻ることを俺に告げた。

まだ、連絡先を渡せていない。
このまま、また同じことを繰り返すのか?
そんなの、絶対に嫌だ。

そう思った瞬間、俺は大きな声であなたちゃんを呼び止めていた。
手を掴み、小さな紙切れを握らせる。
聖人と直哉が見ているのに。



「これ、俺の連絡先。…また会えない?」

「あ、え、うん、!!」



受け取ってもらえた。その事実だけで、胸がいっぱいになる。
笑うことしかできない俺を、聖人と直哉は少し驚いた顔で見ていた。
いつも控えめなリーダーが、こんなことをするなんて思わないだろう。


連絡が来るかどうかはわからない。
でも、俺は今できることをやった。
あなたちゃんにまた会える可能性が、1%でもある。



それだけで、心が躍った。
俺は、あなたちゃんがどうしようもなく、好きなんだと認めざるを得なかった。






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