hj side〜〜〜〜〜〜〜〜
合宿2日目だ。
去年も同じことを思ったけれど、ここに来ると時間の流れがいつもの2、3倍は早く感じる。
夢中で練習している間に1日が過ぎて、あっという間に夜だ。
今日の練習は、昨日よりは上手くいっていただろうか?
楽器って、長い目で見れば努力に比例して実力がつくはずだけど、
結構波があって、楽器自体のコンディションや、自分自身の体調だったり、色々な要素が合わさって音になる。
そこが面白い部分でもあり、厄介な部分だ。
〜
「、、、はあーー。」
誰もいない手洗い場でため息を吐く。
部屋のみんなが寝静まって、何も音がない部屋で
自分の音やら合奏の時のサウンドが頭の中でぐるぐる響いて、眠れなくて
辛くなって部屋からそっと出てきた。
トイレに座って20分、トイレ前の手洗い場で20分、
覚醒してしまった頭をどうにかしようとしても無駄で
無意味に蛇口を捻ってみたり鏡に映る自分の顔を眺めたりしながらやり過ごしていた。
今何時だ?
寝不足は明日に響くからいけないのに。
こんなに思い詰めることも珍しくて、自分でもどうすべきかわからなかった。
「、、、、ヒョンジン、、?」
声をかけられて、びくっと振り返る。
暗闇に立っていたのはリクスだった。
「、、、どうしたの?何しているの?」
リクスが不審がって近寄ってくる。
「リクスこそ、どうしたの?トイレ?」
「、、、うん、僕はトイレ行きたくて起きてきたの」
リクスはトイレに入って、すぐに出てきた。
まだ手洗い場に突っ立っている僕の横に並ぶ。
「眠れないの?」
「、、、うん、」
「ちょっと座ってお喋りしない?そこのベンチで」
リクスが廊下に置いてある長椅子を指差した。
〜
「リクスの音、変わったよね」
「そうかな?」
「うん。なんか太くなった。前より響きがある」
そうかな、とリクスが嬉しそうにする。
「ヒョンジンは、今年もソロパートがあるよね。2年生なのに大役が任されてて、すごいよ」
「、、、でも、今あんまり上手くいってなくて」
「そうなの?ヒョンジンの音はいつ聞いても綺麗だけどな」
「ちょっとスランプ気味なんだ」
そう弱音を吐くと、リクスは、
君がそういうの珍しいね、と驚いていた。
「部屋が一緒ならもっと話せるのになぁ」
「そっちの部屋、どう?」
「こっちは静かだよ?みんなすぐ寝るし、、、。」
あ!!!でもね!聞いてヒョンジン!!!
と、嬉しそうに話し出すリクス。
「今日の朝起きたらね、スンミンとリノヒョンがおんなじベッドに寝てたの!ビックリでしょ?なんでなんだろうね」
「ふふ、それは面白いね」
でしょでしょ!とリクスは嬉しそうに笑った。
「そっちは?」
「こっちはもう、動物園だよ。」
「だろうね」
想像しただけでリクスは吹き出していた。
「こうやって2人で話すの、なんだか久しぶりだよね」
「、、、たしかに、そうかも」
オーディション以来、リクスはうちの小屋にも来ていなかった。
何度かこちらからも誘ったけど、用事があるとかで断られてしまった。
少しの沈黙があって、
コンクールもうすぐだね、とリクスが話題を変えた。
「地区大会、抜けれるかな」
「そうだね、、、。」
「ヒョンジンってあんまりそういう話、しないよね」
「そういう話って?」
「絶対全国行くぞー!みたいな」
「ああ、全国にはもちろん行きたいんだけど、どちらかというと結果よりも自分が良いと思う音楽に拘りたいんだ」
リクスが、うん、と頷く。
「そういう考えが、僕は素敵だと思う」
「リクスがそう言ってくれてよかった」
「でも、やっぱり緊張するかも、、、。コンクールの舞台初めてだもん」
確かに、リクスは前よりも自信を持てているとはいえ、
また不安で苦しくなってしまう可能性が拭いきれない。
「そうだね、、、、。」
「あ、でもね、コンクールの座り順がヒョンジンの隣だから、そこはちょっと安心なんだ」
幸運なことにコンクールの席はちょうど隣同士だ。
「じゃあさ、本番が始まる直前にアイコンタクトしようよ」
「いいね!それなら安心できそう」
約束、と2人で笑い合った。
「おーいー。何してんの?そこのお2人さん」
廊下の向こうからリノヒョンが歩いてくる。
「わっ、びっくりした」
「早めに寝ときなよ、明日も早いから」
そう言ってヒョンは寝ぼけ眼でトイレに入っていった。
「じゃあ、そろそろ寝ようか」
「うん。」
「ありがとう、リクス。話聞いてくれて」
「おやすみ、ヒョンジン」
リクスが部屋に戻っていく後ろ姿を見送って、
俺も自分の部屋に入った。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。