今私はレストランの個人室にお母さんと二人でいる
なんでそんなところにいるかというと
お母さんが再婚したからだ
お父さんは私が物心がついた頃から居ない
聞けば、お父さんは私が小さい頃に浮気したらしい
しかもそれが何度もあったらしい
おまけに金遣いは荒く
モラハラ夫で
お母さんには我慢の限界がきて離婚
同情もできないクズっぷりだ
お母さんはこの数年間
異性が信じられなかったらしい
お母さんはいつも
「異性と簡単に付き合うな」と
私に言い聞かせていた
橙色から暗い色にだんだんと染められていく空を窓から頬杖をつきながら見ていた
お母さんには内緒にしてたが
私は中学2年生の頃にいわゆる同い年の『彼氏』というものがいた
だが私達が中学3年生に上がるとき私が引越しすると彼氏に言ったところ
互いすれ違う場面が多かったことから別れた
そんな感じで余裕のありそうな返事をしたが
正直不安だった
初めて知った人と同じ家に住む…
年齢がどうであれ同居みたいなものだろう
ガラガラ
ドアが開いた音がして
ドアの方へ目を運ぶと
身に覚えがある人物が入ってきた
さっきまで明らかに興味の無さそうな目で別方向を見ていて
こっちを向いたと思ったらでっかい声を出した
テーブルには四人分の夕飯が並び
お母さんと義理お父さん達『だけが』
話で盛り上がっている
本当は今日は喋ったこともないが
誤魔化すために
なつの方を向き共感を求めた
気持ちをおつかせるために
洗面所に手を置き
鏡の中の私は睨めっこをしている
気分が重いせいで
私は薄暗い廊下で床を見て進むしかできなかった
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!