第6話

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2025/01/04 01:08 更新
控えめな開閉音と共にエレベーターが開く。

無言で乗り込むと、4階のボタンを押して開閉ボタンを押した。

テヒョン
テヒョン
最上階なんだ…?
ジョングク
ジョングク
はい…最上階と言っても低層なんで…

あいつの部屋は最上階の南側の角部屋。

しかも内廊下ときたもんだ。

テヒョン
テヒョン
随分と立派な所に住んでるんだね…
ジョングク
ジョングク
父親と共同名義で買ったんです
テヒョン
テヒョン
え!?賃貸じゃないの!?
ジョングク
ジョングク
僕は賃貸でも良かったんですけど、父親が資産にならない場所にお金を掛けるのはダメだって…
テヒョン
テヒョン
それで、買ったの?
ジョングク
ジョングク
ここは土地柄的にマイナスになる事はないので、ゆくゆくは売るつもりなんですけどね…今はとりあえず僕が住んでみてます…
テヒョン
テヒョン
みてます…って、お前若いのにすごいね
ジョングク
ジョングク
だから、僕じゃなくて父親ですよ

あ、どうぞ…散らかってますけど…

暗証番号を入力して玄関ドアを開けると、俺の鼻に一気にジョングクの匂いが吸い込まれた。

ジョングク
ジョングク
人が来る事なんてないので、すみません…
ちょっと片付けますから、その辺に座っててください

本人は散らかってるって言うけど、真面目なジョングクらしく、今朝食べたであろう朝食の残骸と、脱いだパジャマがダイニングチェアの背もたれにかけられているくらい。俺の部屋に比べたら天国だ。

リビングにはダイニングテーブルとソファとゲーミングパソコンのみで、必要最低限の物くらいしかなかった。
テヒョン
テヒョン
部屋…随分シンプルなんだな…
ジョングク
ジョングク
はは、ですよね…
テヒョン
テヒョン
2LDK…?
ジョングク
ジョングク
元々は3LDKです。このマンションはファミリー層向けなんですけど、ぼくには部屋数はいらないので、ここの壁を取っ払ってリビングを広くしてもらったんです
テヒョン
テヒョン
へー
ジョングク
ジョングク
せっかくスペースを広くしたのに、インテリアのセンスが僕にはないので…シンプル過ぎますよね
テヒョン
テヒョン
いや、お前の部屋らしいよ
ジョングク
ジョングク
僕らしい…ですか…?
テヒョン
テヒョン
あ、ごめん…適当な事言ったね
ジョングク
ジョングク
いえ…大丈夫です
テヒョン
テヒョン
これから知ってくから…
ジョングク
ジョングク
え…?
テヒョン
テヒョン
俺達、これからだろ?
だから、もっとお前の事教えてよ…
ジョングク
ジョングク
……
テヒョン
テヒョン
何で黙るの?
ジョングク
ジョングク
いえ、あの…
僕、焼きそば…作りますね

そう言うと、いそいそとキッチンへ行き、エコバッグの中から買ってきた品物を取り出して焼きそばを作り始めた。
テヒョン
テヒョン
ジョングク…
ジョングク
ジョングク
……
テヒョン
テヒョン
なぁ…返事くらいしろよ

食材を切るジョングクの側まで行き、ジョングクに話しかける。
ジョングク
ジョングク
あ、危ないですよ…
包丁使ってますから…
テヒョン
テヒョン
ねぇ、こっち向いてよ…頼むから
ジョングク
ジョングク
……
テヒョン
テヒョン
ジョングクッ!

肩を掴んで無理矢理俺の方に体を向けると、その大きな目に溜めていた綺麗な涙が、ツーっとジョングクの頬を流れ落ちていった。
テヒョン
テヒョン
……っ!

な、なんで泣いてるの…?
ジョングク
ジョングク
……ご、ごめんなさい
テヒョン
テヒョン
俺…迷惑だった?
ジョングク
ジョングク
ち、違いますっ…そんなんじゃ…

ジョングクが握っていた包丁をそっと取り、キッチンカウンターの上に置く。

空いた両手を俺の手で握りしめ、ジョングクの肩に額を預け囁くようにして言った。
テヒョン
テヒョン
ここまで来て避けられるのは…
さすがに堪える…
テヒョン
テヒョン
やっと会えたんだから…
俺の事、無視しないで…
テヒョン
テヒョン
ずっと俺…お前に会いたかったんだ…

ほんとに俺…おかしくなってたんだ。

こんなに誰かの事で頭の中埋め尽くされるなんて事、今まで経験したことがなかったから すごく戸惑って…。

お前を想う度に気分が上がったり下がったりして、感情の置き場がなくてさ…。

すごく、すごぐ しんどかった。
ジョングク
ジョングク
ぼ、僕は…これ以上あなたに囚われてはいけないって…そう思ってました
ジョングク
ジョングク
だから…あなたから距離を取ったんです
ジョングク
ジョングク
今、あなたに会ってしまったら
再燃してしまう…そう思いました…
ジョングク
ジョングク
やっと、あの日のあなたを…
忘れられそうだったんです…
テヒョン
テヒョン
俺は…あれからずっとお前の事を…
テヒョン
テヒョン
まだ、俺が…信じられない…?
ジョングク
ジョングク
だ、だって…なんで僕なんか…
面白くもなんともないし…
ジョングク
ジョングク
ぼ、僕みたいな地味なタイプより
もっと あなたには相応しい人が…
テヒョン
テヒョン
おい…やめろよ

相応しいってなんだよ…
マジで怒るぞ
ジョングク
ジョングク
だって、僕なんかじゃ
あなたに釣り合わないっ…
テヒョン
テヒョン
僕なんかじゃないよ!いい加減にしろよ…
テヒョン
テヒョン
これ以上、俺の好きなやつの
悪口言ったら許さないぞ
ジョングク
ジョングク
……
テヒョン
テヒョン
俺だって最初は戸惑ったんだ…
でも、俺の全部でお前を求めてるんだよ
テヒョン
テヒョン
抗おうとしても無理だったんだ…
ジョングク
ジョングク
な、何で…ぼ、僕なんですか…
テヒョン
テヒョン
目…
ジョングク
ジョングク
目…?
テヒョン
テヒョン
俺は、あの日…
眼鏡を外したお前に目に一目惚れしたんだ
ジョングク
ジョングク
一目惚れなんて…
テヒョン
テヒョン
最初は自分の気持ちに気が付かなかった…
やけにむしゃくしゃしてイラついて
テヒョン
テヒョン
でもそれは、色々考えすぎて拗らせた
俺の身勝手な気持ちだったんだよな…
テヒョン
テヒョン
お前への気持ちを認めたら
気分が楽になったんだ
テヒョン
テヒョン
お前のその澄んだ綺麗な目が見つめるのは、この先もずっと俺だけがいいって…
そう思ったんだよ…
テヒョン
テヒョン
正直、お前の事は何も知らない…
でも俺の本能がジョングクがいいって言ってるんだよ
ジョングク
ジョングク
ぼ、僕も、あなたの事は何も知りません…
でも、これからもずっとあなたを好きだと思います
テヒョン
テヒョン
うん…だからこれからたくさんお互いの事を教え合おうよ
ジョングク
ジョングク
信じて…いいん、ですか…?
テヒョン
テヒョン
信じてほしい…
ジョングク
ジョングク
後悔しても…もう無理ですよ
テヒョン
テヒョン
それはこっちのセリフだよ
ジョングク
ジョングク
あなたを、信じます…
テヒョン
テヒョン
じゃあ、とりあえず…
お前と連絡取れるようにしたいんだけど
テヒョン
テヒョン
だから、ブロック解除してくれる?
ジョングク
ジョングク
ブ、ブロックだなんてしてません!
テヒョン
テヒョン
でも、全然カトク繋がらないじゃん
ジョングク
ジョングク
そ、それは…
スマホ…水没しちゃったんです
テヒョン
テヒョン
水没っ!?
ジョングク
ジョングク
お、お恥ずかしい話なんですけど…実は…
あの日から…僕も…なんか、おかしくなっちゃって…
テヒョン
テヒョン
どういう事?
ジョングク
ジョングク
あ、あなたと…関係を持ってから
なんか、体が宙に浮いてると言うか…
ふ、普段はしないようなミスなんかをたくさんしてしまって…
ジョングク
ジョングク
そ、それで…
スマホも一緒に洗濯しちゃったりして
ジョングク
ジョングク
一度は復活したんですけど
すぐにまたダメになって
ジョングク
ジョングク
スマホのデータなんかも
全部吹っ飛んじゃって…
ジョングク
ジョングク
それで、カトクのデータも…
ジョングク
ジョングク
カトクだけでしか繋がってなかった人は
全部消えちゃったんです…
テヒョン
テヒョン
なるほどね…
それで俺も消えちゃったんだ…?
ジョングク
ジョングク
す、すみません…
テヒョン
テヒョン
じゃあ、とりあえず貸して?

俺はジョングクのスマホを操作して、自分のスマホに電話をかけた。
テヒョン
テヒョン
これ、俺の番号
で、こっちがお前の…で、合ってる?
ジョングク
ジョングク
はい、合ってます
テヒョン
テヒョン
電話番号を繋げたら…
ほら、自ずとカトクも繋がってくるだろ?
ジョングク
ジョングク
あ、ほんとだ…

俺はジョングクにハートのスタンプを送った。
テヒョン
テヒョン
どう?
ジョングク
ジョングク
き、来ました…ハート…が…////
テヒョン
テヒョン
うはは!顔真っ赤(笑)
ジョングク
ジョングク
だ、だって…嬉しいから…
あなたからハートなんて…
テヒョン
テヒョン
俺も嬉しいよ…?
お前がスマホを水没させるくらい
俺にハマってくれてて…
ジョングク
ジョングク
ぼ、僕は…ずっと…あなたにハマってます
テヒョン
テヒョン
うん、知ってる…
ジョングク
ジョングク
あなたが…好きです…
テヒョン
テヒョン
うん…俺も、お前が好き…

ジョングクの唇を俺の唇で塞ぐ。

最初は啄むような可愛いフレンチなキス。

キスする度に、どんどんジョングクの顔が赤く俯いていく。
テヒョン
テヒョン
ちゃんとこっち向いて…?
ジョングク
ジョングク
……////
テヒョン
テヒョン
恥ずかしいの? 
ジョングク
ジョングク
僕は、あなたみたいに慣れてないから…
テヒョン
テヒョン
テヒョン…
ジョングク
ジョングク
え…?
テヒョン
テヒョン
あなたじゃなくて、テヒョン…だろ?
ジョングク
ジョングク
あ…はい…テ、テヒョン
ジョングク
ジョングク
あの、でも先輩だから…
テヒョン
テヒョン
会社ではな?
テヒョン
テヒョン
でも、今は対等だろ?
恋人なんだから…
ジョングク
ジョングク
こ、い…びと…
テヒョン
テヒョン
違うの?
ジョングク
ジョングク
……
テヒョン
テヒョン
恋人だと思ったからキス…したんだけどな
ジョングク
ジョングク
テ、テヒョン…
テヒョン
テヒョン
何?
ジョングク
ジョングク
も、もっと…キス…したい、です…
テヒョン
テヒョン
ふふ、いいよ…
もっとたくさん…
色んなキス…してあげるね

そのまま俺はキッチンで、ジョングクの全身にキスをした。

震える手でキャビネットに捕まり、やっとの思いで立っているジョングクを、下から見上げる幸せ。


やっと、俺のものになった。


もう、絶対に離さない…。



















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