あれからgsoさんは神の居所を探ってくれている。
彼女は、mmさんは何もしなくていい、iemnさんを守るのに注力してくれて良いとまで言ってくれた。
iemnさんを狙っている天使は、あの日屋上にいた2人のうちの片割れだった。本気で殺されかねないと分かって、必死に彼を守り続けた。次の手段に移らないことを祈りながら。
あれから1週間ほど経った。天使は人にカモフラージュしたまま地上に溶け込んで、iemnさんには一向に手出ししないでいる。
雲一つない空だった。濃い青の中をカラスが数羽横切っていく。その鳴き声をかき消したのはiemnの声だった。
あれから1週間と少し経ち、研修当日になった。
はっきり言って、ターゲットを救済できていないことからくる悪影響なんて何一つなかった。
もちろん俺の努力もあったと思う。
今日までの1週間と少しの時間で、100人近い人間を救済した。前まではltと2人で1日10人だったと思うと、かなり上々じゃないだろうか。
そのおかげか、無事に今日を迎えられた。
バスに乗り込むと、学生服の生徒が何人か座っていた。俺と同じような大きい鞄を抱きかかえている。
その中にrkとhtmnguがいた。
やばいのかと少し焦った。店員にお金を見せて「高校生に人気のおもちゃ」を聞いたら、真っ先に案内された商品ではあるんだけど。
お金だって痛む良心を抑えながら、救済後のサラリーマンの財布から札を抜いて集めたのに。
そうやって雑談しているとみるみる時間が過ぎて、少しした頃には講堂に座って校長先生の話を聞いていた。
それぞれの個性が出た鞄を抱え、30人が整列して歩く様は、俺にはパレードのように思えた。天使は白い翼に白い服で、並んだところで死装束の行進でしかなかったから。
全員がバスに乗り込んで扉を閉めると、中はパーティー会場になった。前までは、事故でいっぺんに大勢を救済できる棺桶でしかなかったのに、全部違って見える。
若緑の混じった桜並木。カーテンに透ける日差し。バスと共鳴して揺れるキーホルダー。目を閉じると、窓の外で子どものはしゃぐ声がする。
友達といるから、世界の機微を感じ取れるのか?
ターゲットを探し回ってはリストを埋めていた日々より、時間が穏やかに流れる。それなのに、みんなと話していると一瞬に。
こんな時間がずっと続けば──
俺の発言で3人が呆れた顔に変わった。
そう嘆く顔の筋肉が張る。救済しに行ったなんて口が裂けても言えない。
順番が回ってきて外に出ると、先に到着したクラスが既に弁当を広げていた。
食べるものもないが3人の横に座ると、iemnがコンビニ弁当の蓋に、自分のご飯を移し始めた。
俺の皿がどんどん豪華になっていく。最後にゼリーを2つ貰って、ご飯もおかずも揃った食事が出来上がった。天使ならこんなことしなかっただろう。
人間には心臓があって、絶えず脈を打っている。だから人間はこんなにも温かいのだ。血が通っているのだ、天使とは違って。
彼らが救済されればそれも冷たくなるだろう、と妄想する。それが天使の本来の役目。でもそれが──彼らから熱を奪うことが本当に救済なのか、ここ数日で分からなくなってしまった。
いつしか、天使にあるまじき疑問を抱いていた。
今の俺に人を救済できるのか、という疑問を。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。