第9話

1-7 心の在り方
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2025/11/23 12:29 更新
あれからgsoさんは神の居所を探ってくれている。
彼女は、mmさんは何もしなくていい、iemnさんを守るのに注力してくれて良いとまで言ってくれた。

iemnさんを狙っている天使は、あの日屋上にいた2人のうちの片割れだった。本気で殺されかねないと分かって、必死に彼を守り続けた。次の手段に移らないことを祈りながら。



あれから1週間ほど経った。天使は人にカモフラージュしたまま地上に溶け込んで、iemnさんには一向に手出ししないでいる。

雲一つない空だった。濃い青の中をカラスが数羽横切っていく。その鳴き声をかき消したのはiemnの声だった。
iemn
ごめん、準備遅くなった
Upprn
いいから早く行こ!

あれから1週間と少し経ち、研修当日になった。
はっきり言って、ターゲットを救済できていないことからくる悪影響なんて何一つなかった。

もちろん俺の努力もあったと思う。
今日までの1週間と少しの時間で、100人近い人間を救済した。前まではltと2人で1日10人だったと思うと、かなり上々じゃないだろうか。

そのおかげか、無事に今日を迎えられた。
iemn
今日はバスで行こ
Upprn
おっけ!

バスに乗り込むと、学生服の生徒が何人か座っていた。俺と同じような大きい鞄を抱きかかえている。

その中にrkとhtmnguがいた。
rk
おはよう!
htmngu
なんかupprnの鞄おっきいね
iemn
必需品は半分も入ってないけどな
Upprn
まず着替えでしょ?しおり、筆箱、トランプ、UNO、人狼ゲーム……あとスイッチ?と充電器
htmngu
Switchやば

やばいのかと少し焦った。店員にお金を見せて「高校生に人気のおもちゃ」を聞いたら、真っ先に案内された商品ではあるんだけど。

お金だって痛む良心を抑えながら、救済後のサラリーマンの財布から札を抜いて集めたのに。
Upprn
だめだったかな……?
iemn
だめに決まってるだろ
rk
だめだからこそ神なんよ!夜集まってやろ

そうやって雑談しているとみるみる時間が過ぎて、少しした頃には講堂に座って校長先生の話を聞いていた。
先生
~~~~~
Upprn
長すぎ……
iemn
研修の諸注意で話せる量じゃないよな
htmngu
たまに話終わりそうな雰囲気出すのやめろ
先生
え〜、ではみなさん時間厳守を意識して楽しい研修にしましょう
rk
今度こそ終わりか?
先生
……




先生
1組から順に、起立
Upprn
終わったあ……!

それぞれの個性が出た鞄を抱え、30人が整列して歩く様は、俺にはパレードのように思えた。天使は白い翼に白い服で、並んだところで死装束の行進でしかなかったから。

全員がバスに乗り込んで扉を閉めると、中はパーティー会場になった。前までは、事故でいっぺんに大勢を救済できる棺桶でしかなかったのに、全部違って見える。
Upprn
バスって乗ってるだけで楽しいんだね
iemn
あー、まあ友達がいるからこそって感じはある
Upprn
友達……

若緑の混じった桜並木。カーテンに透ける日差し。バスと共鳴して揺れるキーホルダー。目を閉じると、窓の外で子どものはしゃぐ声がする。
友達といるから、世界の機微を感じ取れるのか?

ターゲットを探し回ってはリストを埋めていた日々より、時間が穏やかに流れる。それなのに、みんなと話していると一瞬に。

こんな時間がずっと続けば──



htmngu
起きてupprn、着いたよ
Upprn
ん……?もう?
rk
これから移動してご飯だってさ
Upprn
ご飯?何食べるの?

俺の発言で3人が呆れた顔に変わった。
rk
初日の昼は弁当って……先生の話聞いてなかったのかよ
htmngu
部屋一緒なんだから、iemnさんが言ってやればよかったのに
iemn
昨日の放課後出かけてたから、てっきり何か買いに行ったのかと……
Upprn
なんも買ってきてないよ〜……

そう嘆く顔の筋肉が張る。救済しに行ったなんて口が裂けても言えない。

順番が回ってきて外に出ると、先に到着したクラスが既に弁当を広げていた。
食べるものもないが3人の横に座ると、iemnがコンビニ弁当の蓋に、自分のご飯を移し始めた。
iemn
ちょっと分けてやるよ
htmngu
じゃあ私おかずあげる
rk
俺もやる!2個入ってるのは全部1個ずつ移すわ
Upprn
え、いいの!

俺の皿がどんどん豪華になっていく。最後にゼリーを2つ貰って、ご飯もおかずも揃った食事が出来上がった。天使ならこんなことしなかっただろう。

人間には心臓があって、絶えず脈を打っている。だから人間はこんなにも温かいのだ。血が通っているのだ、天使とは違って。
Upprn
みんな、ありがとう!

彼らが救済されればそれも冷たくなるだろう、と妄想する。それが天使の本来の役目。でもそれが──彼らから熱を奪うことが本当に救済なのか、ここ数日で分からなくなってしまった。

いつしか、天使にあるまじき疑問を抱いていた。
今の俺に人を救済できるのか、という疑問を。

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