第3話

悪夢
643
2025/03/30 17:00 更新
⚠️あてんしょん⚠️
・『地獄の鬼神様は一人の獄卒にベタ惚れです』と同じ世界線のため、鬼灯の想い人(名前なし見た目なし)が出てきます














死者は、
白澤
あなたの白澤からの呼び名(後ろにちゃん)ちゃん……?
少し震える声であなたの名前を呼ぶと、彼女は微笑んで振り返った。
(なまえ)
あなた
私ね、生まれ変われるんだって
白澤
や、やだ……あなたの白澤からの呼び名(後ろにちゃん)ちゃん、行かないで……!
必死に伸ばした手は届くことなく——






そこで、目が覚めた。
白澤
はぁ……はぁ……っ
彼女へ伸ばしたはずの左手は天井へと伸ばされており、先程のことが夢であることを確認する。時計は午前7時を指しており、二度寝しようとも考えたがそんな気にはなれない。
不安に思い、携帯であなたに電話をかける。
白澤
……あなたの白澤からの呼び名(後ろにちゃん)ちゃん……
何度かけても出る気配はない。彼女なら1回、遅くても3回かければ出るはずなのに。
白澤
……っ!!
店を飛び出し、あなたの店へと向かう。店の鍵閉めたかな、なんて事すら頭に浮かばなかった。
白澤
あなたの白澤からの呼び名(後ろにちゃん)ちゃん!あなたの白澤からの呼び名(後ろにちゃん)ちゃん!!
店のドアを必死に叩くが、返事はないし明かりもつかない。自分と違って早起きの彼女なら、この時間には店を開けている。
白澤
あなたの白澤からの呼び名(後ろにちゃん)……ちゃん
静寂に包まれ、自分の体温が下がっていくのが嫌と言う程よく分かった。



(なまえ)
あなた
はい、注文されてたやつ
白澤の予想に反し、あなたは地獄で鬼灯に商品を渡していただけだった。
鬼灯
ありがとうございます、あなたさん
(なまえ)
あなた
お礼なんていいよ、好きでやってる仕事だし
鬼灯
いえ、あなたさんの店のものは他の店に比べ質がいいですから
(なまえ)
あなた
そう言ってくれるのは嬉しいなあ
鬼灯
……そう言えば、あいつ(白澤)とはどんな関係なんですか?
(なまえ)
あなた
どんなって……別に普通だけど
それを聞いて眉を顰める鬼灯だが、すぐに表情を直す。
鬼灯
……そうですか
(なまえ)
あなた
?
鬼灯
それとあなたさん
(なまえ)
あなた
何?
鬼灯
少し下がって下さい
(なまえ)
あなた
え、うん……?
言われた通りあなたが下がると、
鬼灯
不審者発見!!
白澤
うぐぁっ!?
(なまえ)
あなた
!?
鬼灯の投げた金棒が、それはそれは綺麗に白澤に当たった。
白澤
お……っまえな!!僕はここに仕事をしに来ることもあるんだけど!?
鬼灯
大抵は唯の女遊びでしょう。こっちは今イライラしているんですから視界に入るな、というかそもそも地(こ)獄(こ)に来るな
白澤
お前の気持ちなんて地獄に来ないで分かるわけないだろ!仮に分かったとしても尊重してやる気はこれっぽっちもないね!!
そして案の定言い争いが始まる二人。呆れた目でそれを見るあなたはもう見慣れたようだ。
白澤
僕は今お前なんかと言い争いしてる暇ないの!あなたの白澤からの呼び名(後ろにちゃん)ちゃんが……!
(なまえ)
あなた
私が?
あなたが一言言った瞬間、白澤は驚いた顔で彼女を見る。
白澤
あなたの白澤からの呼び名(後ろにちゃん)ちゃん……!?
(なまえ)
あなた
え、何
白澤
あなたの白澤からの呼び名(後ろにちゃん)ちゃん……!良かった……!!
思い切りあなたを抱きしめる白澤と、ただひたすらに困惑しているあなた。そしてそれをなんとも言えない目で見ている鬼灯。色々とカオスな状況である。
白澤
あなたの白澤からの呼び名(後ろにちゃん)ちゃん大丈夫!?この闇鬼神に何もされてない!?体消えたりしてない!?
(なまえ)
あなた
どんな心配だ
(なまえ)
あなた
というか鬼灯は欲無さそうだしそんなことしないでしょ
白澤
いや分からないよ、実際今こいつ気になる獄卒いるらしいから……
(なまえ)
あなた
気になる獄卒いるなら尚更私には何もしないでしょ、白澤じゃあるまいし
鬼灯
しれっと人の恋愛事情を話すな白豚
鬼灯
あなたさんもあなたさんですよ偏見がすぎるでしょう
(なまえ)
あなた
あ、私今から閻魔大王に会いにいくから一旦離して
白澤
明日にして
(なまえ)
あなた
えぇ……
白澤
今日は僕といて!分かった!?
(なまえ)
あなた
でも、死んだすぐ後に私を天国に運んでくれた獄卒さんを探してお礼言いたいし
白澤
……死んだすぐ後にあなたの白澤からの呼び名(後ろにちゃん)ちゃんを天国に連れていった獄卒?
(なまえ)
あなた
そう
普通死者は閻魔大王に判決を言い渡され、自分の足で天国、もしくは地獄に行く。だが彼女はそうではない。
鬼灯
あなたさんは生前の影響で酷く男性に怯えていたでしょう
鬼灯
担当の獄卒を見た瞬間パニック状態になり、その後すぐに気絶していたそうですから
鬼灯
たまたま中国に出張に行っていた私のおも……
鬼灯
とある女性の獄卒に連絡をし、あなたさんが気絶している間に運んでもらいました
(なまえ)
あなた
なんで今言い直したの
白澤
お前もしかして「私の想い人」って言いかけた?
白澤
ってことは








鬼灯
あまり推察する能力が高すぎても命取りになります、あなたさんも気をつけて下さいね
(なまえ)
あなた
う、うん……
壁にめり込んでいる白澤を横目に、あなたは苦笑いで答える。流石に自分もああはなりたくない。
(なまえ)
あなた
ほら白澤、帰るよ
白澤
あーいたた……ん、帰ろっか
白澤
あ、ちょっと先に行っててくれる?
(なまえ)
あなた
?分かった
あなたの姿が見えなくなったのを確認して、白澤は鬼灯の方へと振り返る。
白澤
鬼灯
鬼灯
何ですかいきなり
白澤
間違ってもあなたの白澤からの呼び名(後ろにちゃん)ちゃんだけには手を出すなよ?
白澤は鬼灯に対してそう忠告した。目を金色に光らせ、殺意をむき出しにしながら。
鬼灯
……言われなくても分かっていますよ
白澤
……なら良いんだ
白澤
じゃ、僕あなたの白澤からの呼び名(後ろにちゃん)ちゃんのところに戻るから
そう言っていつもの笑みで戻っていく白澤の背中を見つめ、鬼灯はおおきくため息をついた。
耳のいい獣に聞こえないような、小さな呟きとともに。
鬼灯
……まで…っか………れてい……ね
(なまえ)
あなた
……白澤
白澤
やだ
(なまえ)
あなた
離して
白澤
やだ!
極楽満月に着くと同時に、桃太郎がいるにも関わらずあなたを抱きしめる白澤。抜け出そうとしてもできず、十数分間人形のように動けなくなっていた。
(なまえ)
あなた
桃タロー助けて
桃太郎
あなたさんなら分かってると思いますけどその状態の白澤様は手のつけようがないですね、無理っす
(なまえ)
あなた
確かにそうだけどさ……
白澤がへばりついていない右の手で湯呑みを持ち、心底面倒くさそうな表情でお茶を飲むあなた。そんな彼女を気にせず白澤はあなたの肩に顔をうずめ、消え入りそうな声で呟いた。
白澤
僕に何も言わずにどっか行かないであなたの白澤からの呼び名(後ろにちゃん)ちゃん……
(なまえ)
あなた
ただの仕事でも?
白澤
せめて携帯持ってって!!僕がどれだけ心配したと思ってるの!?
(なまえ)
あなた
はいはい分かった、今度デートしてあげるから離して
白澤
……ほんとに?
(なまえ)
あなた
ほんとに
白澤
やったー!いつにする?
(なまえ)
あなた
今度の休みの日辺りかな
白澤
わーいあなたの白澤からの呼び名(後ろにちゃん)ちゃんとデートだ〜♪
一気に上機嫌になった白澤と、解放されて両手でお茶を飲むあなたを、桃太郎は死んだ魚のような目で交互に見つめる。
桃太郎
…………
(なまえ)
あなた
ん、どうしたの桃タロー?
桃太郎
いや……めっちゃ自然にデートの流れにもってったので驚いて、あと自分の師匠に呆れて
(なまえ)
あなた
そうでもしないと数日離してくれなさそうだし
桃太郎
冗談だろって笑いたいけど笑えねぇ……
(なまえ)
あなた
あと普通に足りない道具買い足したかったから
桃太郎
あの人の役割荷物持ちなんですか……?
(なまえ)
あなた
いやそうじゃなくて
(なまえ)
あなた
白澤私が使いやすい道具選ぶの得意だから
(なまえ)
あなた
今回も選んでもらおうと思って
桃太郎
へー、どんなのを買ってもらってるんですか?
(なまえ)
あなた
薬さじとかだよ、ほら
桃太郎
……え?
(なまえ)
あなた
え?
あなたが出してきたさじは、白澤が普段使っているものと全く同じ。他の道具も幾つか見せてくれたが、全て白澤と同じ物だった。
桃太郎
(いや、まさか意図的にやってるわけないよな……)
ちらりと自分の師の姿を見ると、彼の笑顔の下の黒い気持ちが見えた気がした。
桃太郎
(……まさか、な)
白澤
あなたの白澤からの呼び名(後ろにちゃん)ちゃん、僕の許可なく生まれ変わったりしないでね?
(なまえ)
あなた
まあ、一応報告はするよ
(なまえ)
あなた
あと別に白澤の許可いらないでしょ



あなたは、ひとつ勘違いをしている。彼女は「生まれ変わるのに白澤の許可はいらない」と思っているが、実際は、生まれ変わるには白澤の許可が必要不可欠なのだ。
理由は簡単、昔あなたの虚弱さを心配した白澤が、彼女の食事に神気を少し混ぜていたから。
呪い(まじない)として使っていたその手も、使い方を変えれば呪い(のろい)になる。
白澤
だとしても!僕に報連相は絶対!分かった!?
(なまえ)
あなた
はいはい……
死者は、いつか必ず生まれ変わる時が来る。しかし、それはあくまでも「普通なら」の話で。
白澤と長い間共におり、彼の呪い(愛)をその身で受け続けた彼女だけは、話が別なのである。

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