果てしない白い大地が広がり、雲一つない青空が無限に続く。白と青が交錯するこの世界は、願いを叶える代わりに全てを奪う「白黒生命契約」の舞台だった。静寂の中で、ローマン・ビールィクが立っていた。屈強な白黒人男性、白黒のアシンメトリーなショートヘアーが微かに揺れ、白と黒のオッドアイが鋭く輝く。白い肌は大地と溶け合いながらも、その存在感は圧倒的だった。彼は「白黒生命契約請求者」――契約者の願いを叶え、代わりに身体、心、魂を要求する存在。
ローマンは遠くから近づく男をじっと見つめ、唇に薄い笑みを浮かべた。
「待ちに待った、ゲームの日、遂に開幕!」と、心の中で呟いた。
男の名は雅就(まさなり)。東京からこの白い大地まで、他界した家族に再会したいという切実な願いを胸にやってきた。雅就の目は深い悲しみと決意に満ちていたが、この場所ではその願いがあまりにも儚く見えた。
「ローマン・ビールィク様……ですよね?」
雅就は震える声で尋ね、拳を握りしめた。
「お願いがあります。死んだ家族に……もう一度だけ会いたいんです。妻と娘に、謝って、伝えたいことがあって……ここまで来たんです!」
ローマンは静かに頷き、オッドアイで雅就の心を見透かすように見つめた。
「家族か。素晴らしいね。詳しく話して? どんな家族だった? 何を伝えたい?(妻と娘って奴…人間の成り損ないとその幼体かな。なんでコレに会いたいのだろう? 逆に私等で良くないかい? だって、役たたずだし…頭良い訳では無いんだよね。あ、二個共、性欲処理に必要ね。…これも、私等で良くない?)」
雅就は声を詰まらせながら語った。
「妻はいつも笑顔で、娘は無邪気で……事故で二人とも失って、俺は何もできなかった。後悔ばかりで……もう一度会って、愛してると、ありがとうって言いたいんです」
ローマンは満足げに微笑んだ。
「素敵な願いだ。私の契約を受け入れるなら、その願いを叶えてやろう。契約はこうだ。君は終身、私と共に生き、戦い、代償を支払う。最初は身体の一部、次は心の一部――喜怒哀楽の感情だ。そして最後には魂を捧げて解約する形になるけど、どう?(…どうせ、断れやしないのにね……なんで、こんなみっともない願いの為に切磋琢磨に生きてきたんだい? …これは救いたいなぁ……)」
雅就は一瞬ためらったが、妻と娘の笑顔が脳裏に浮かんだ。
「それで家族に会えるなら……受けます!」
ローマンの笑みが深くなった。
「よし、契約成立だ。君の願いは今、叶えてやる!」
彼が手を振ると、白い大地に黒と白の紋様が浮かび上がり、雅就の前に妻と娘の幻影が現れた。雅就は涙を流しながら二人に語りかけ、短い再会を果たした。幻影が消えると、ローマンは雅就に白黒の槍を渡した。
「これが君の契約の証だ。この槍で、私と共に戦え。願いは叶えたが! …契約は続くぞ(…今すぐに終わらせたい気もある)」
契約が結ばれると、雅就の身体に魔力が宿った。ローマンから授けられた魔法は、雷を操る力や影を貫く槍技だった。ローマンは雅就を戦闘の相棒とし、白い大地に現れる「虚空の使徒」――契約者を試す怪物たちとの戦いに駆り立てた。
「雅就くん。君は私の槍となり、盾となる。代わりに、私は君の魔力を回復し、戦利品から武器や防具を強化し、スタミナを維持するアイテムを創れるから、よろしく頼むね!(虚空の使徒って、さっき会った幻影だよ。あれがいっぱい襲いかかって来るよ。幻影こと虚空の使徒の元ネタは、雅就くんが関与した人達の記憶からだよ。動物の記憶は反映不可能だよ。訳? 興味無いから)」
ローマンはそう言い、戦場で雅就をサポートした。雅就が疲弊すれば、白黒の光で魔力を回復させ、倒した使徒の欠片から槍を鋭く、防具を頑丈に変えた。さらに、スタミナを長く保つ白黒の結晶を創り、手渡した。
「これで戦い続けられるな?」
雅就は結晶を握り、ローマンに尋ねた。
「良かったね。どんどん強化していこう!」
ローマンは穏やかに答えつつ、心の中でほくそ笑んだ。雅就の願いなど、ただの餌にすぎなかった。家族との再会は契約を深めるための口実で、彼を戦わせ、代償を搾り取るための道具だった。
戦いが進む中、ローマンは「契約更新」を強制した。
「君の身体の一部を強化してやろう。これでより強くなれるぞ!」と偽り、雅就の左腕を「強化」した。実際には、戦闘時のみ左腕が白黒の刃に変わる呪いだった。戦闘以外では左腕が欠け、代わりに白黒の補助器具――義手のような装具――が装着された。雅就は驚きつつも、「これで強くなるなら」と受け入れた。
「更新は断らないでね? 手に入れた物全てが台無しになるよ? 後、さっき会った家族もね……(更新断ればいいのに。一気に解約出来るよ?)」
ローマンのオッドアイが冷たく光り、雅就は頷くしかなかった。
白い大地での戦いは過酷だった。虚空の使徒は次々と現れ、雅就はローマンのサポートを受けながら戦い続けた。次の更新で右足を捧げ、戦闘時のみ白黒の槍足に変形し、非戦闘時には補助器具の義足が装着された。欠けた身体は雅就の心に重くのしかかったが、ローマンは「これでまた家族に会える」と囁き続けた。
さらに更新が進むと、ローマンは心の一部を要求した。
「次は喜怒哀楽の感情だ。捧げれば、さらに強くなれる」
雅就は断ろうとしたが、「断れば、ここまで来た記憶が消えて。私と会う前の状態に戻るよ?」と脅され、渋々従った。最初に喜びの感情を失い、次に怒り、哀しみ、楽しみ――心が削がれ、雅就は感情のない戦士へと変わっていった。戦闘では白黒の武器と補助器具に支えられ、強さを発揮したが、非戦闘時の彼は虚ろな目で大地を見つめるだけだった。
「家族に……会えたのは良かったけど、これでいいのか?」
雅就はぼんやり呟いたが、ローマンは「また会えるから、頑張って欲しいな!」と答えるだけだった。
月日が流れ、雅就は無数の使徒を倒し、疲れ果てた。身体は武器と補助器具の塊、心は空っぽ。彼はローマンの前に立ち、虚ろな目で尋ねた。
「これで……終わりか?」
ローマンは優しく微笑んだ。
「お疲れ様、次で終わりだよ。君の魂を捧げたら無事に解約されるよ! …」
雅就は抵抗する力もなく頷いた。ローマンの手が胸に触れると、魂は白黒の光となってローマンの胸元に吸い込まれた。彼の身体は、ローマンが持ち上げて胸に押し込んで回収された。
ローマンは一人、青空の下で髪をかき上げた。
「次の契約者はどんな願いを持ってくるかな? 楽しみにしてるよ」
白黒のオッドアイが輝き、大地に新たな紋様が浮かんだ。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。