北斗side
恋愛小説の主人公は、
どんなに喧嘩しても、
どんなに距離が離れても、
結局最後には結ばれて、
辛い過去の記憶もかき消すくらい幸せになっていた。
あの頃の俺は、
ただ純粋に京本のことが好きで、
好きでい続ければいつかは結ばれると思っていた。
あの頃は本当に幸せだった。
心の底から笑えていたあの頃が羨ましい。
中学生に上がった途端、
京本との接点は一切無くなった。
クラスが違う。
教室の階も違う。
部活も違う。
委員会も違う。
あの小説みたいに、
一度距離が空いてから今まで以上に距離が縮まる、
なんてことは、当たり前のように起こらない。
京本のLINEのプロフィールの背景画像を見て、
心臓が凍りついた。
そこに設定されていたのは、
新しくできた京本の友達らしき人物が2人と、
かつては自分に向けられていた、
太陽のように眩しい笑顔の京本の写真。
そして、゛大好きな親友とカラオケに行ってきました。
また3人で行こうね!!゛の文字。
゛3人で。゛
その親友の中に俺は入っていない。
正直、悔しかった。
小学生の時は、
自分が一番京本と話している自信があった。
自分が京本に一番信頼されている自信があった。
自分が京本と一番仲が良い自信があった。
それなのに。
中学生になった途端、それは全部過去の話になった。
一番京本と話しているのも、信頼されているのも、
仲が良いのも、今では全部俺じゃない。
そういえば最近は、
心から笑えなくなった気がする。
前なら素直に笑えていた友達との会話も、
あの頃だったら京本ともこんな風に笑ってたのかな、
なんて思うと、どうしても素直に笑えなかった。
それでも場の空気を壊したくないから、
前より何倍も上手くなった愛想笑いで、
今日も本心を隠してる。
前はそこまで泣かなかった小説でも、
今ではどの場面を見ても泣いている。
悲しい場面なら、今の自分と重ねて泣く。
嬉しい場面でも、今の自分と比べて泣く。
抑えきれない感情が、
段々壊れて麻痺していくみたいだった。
ねえ、京本。
俺の感情、返してよ。
俺の恋心返してよ。
俺の初恋返してよ。
俺が異常なのは分かってるけど。
依存してるだけだって分かってはいるけどさ。
京本のことを考えていると、
気づけばいつも、
頬が涙で濡れている。
あんなに大好きだった小説も、
今はただ、恋は小説のようには上手くいかないという、
受け入れたくもない現実を突きつけてくるだけだった。
それでも。
どんなに頑張って前に進もうとしても、
結局この気持ちを捨てることはできなくて。
俺の感情も、恋心も、初恋も、
あの日奪われた時から、
永遠にあなたのもの。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!