目覚めた巫女、目の前には……______
カタ…カタ…
音のする方に霊夢が目をやると、霊子を追ってきた私怨の姿があった。
その姿を霊夢はただ黙って立ち、鋭い眼差しでその影を睨みつけた。頬を伝う涙の跡はまだ乾いていない。けれど、その瞳に迷いはなかった。
静かに構えを取る霊夢。
その気迫を真正面から受けた私怨は、足を止めて低く呟いた。
その言葉が落ちた瞬間、張り詰めた空気がさらに震え、二人の間に避けられぬ戦いの幕が降りた。
霊夢は静かに指を伸ばし、目の前の私怨を真っ直ぐに射抜いた。
その瞳には迷いも怯えもなく、ただ強い決意だけが宿っている。
低く絞り出された声に、私怨は口角を吊り上げる。
ダンッ!!
シュン!!
私怨の姿が掻き消え、霊夢へと迫る。
だが霊夢の体は風のように揺らぎ、一瞬でその背後へと回り込んでいた。
振り返った私怨の目に映るのは、すでに完成された魔力の陣。
ギュルギュル…!
ドドドドドン!!!
轟音と共に、巨大な弾幕が私怨を包み込んだ。
私怨は大きく吹き飛ばされた。
私怨は歯を噛みしめ、己の中に眠る妖力を無理やりかき集める。
体の奥底から溢れ出した黒き妖気は、周囲の空気すら軋ませるほど。
大地を揺るがすほどの妖力が迸り、空が赤黒く染まった。
その光景を前にしても、霊夢の目は揺るがなかった。
彼女の瞳は、澄んだ湖のように透き通っている。
霊夢は胸の奥で静かに呟く。
巫女の足元に紅白の光陣が広がり、神聖な気配が天地を貫く。
その姿はもはや人ではなく、神々しき存在。
霊夢は高らかに名を告げた。
その瞬間、霊夢の周囲に展開された八つの陰陽玉から弾幕がかなりの速度で絶え間なく放たれ、無数の光弾が私怨を取り囲むように降り注いだ。弾幕はやがて壁となり、逃げ場を失った私怨を閉ざし込める。その壁を破壊しようと、私怨はもがくが、その努力は一切届かない。今の霊夢は無敵。その身に触れられるものなど、もはや存在しなかった。
黒い妖力に包まれた森は…まるで神の顕現のように、光に満ちていった。
轟音も、悲鳴も、すべてが消え、ただ静寂だけが広がる。
私怨は跡形もなく、消え去り、辺りからは邪念すらも消えた。
霊夢はゆっくりと瞼を開き、無数の光粒が舞い落ちる森の中で立ち尽くす。
ほんの一拍の間を置き、彼女は胸を強く抑えながら、空を仰ぐ。そして、小さく呟いた。
そう言う彼女の目には…涙が溢れ、どこか寂しさと決意の光が輝いていた。この日…彼女、"博麗霊夢"は博麗の巫女になった。
二年後_____
厄災の戦いから、二年。何事もなく、時は流れた。
突然、陽気な声が境内に響く。
霊夢は声のした方に目を寄せる。太陽に当たった金色の髪が眩しい。
霊夢は眉をひそめ、わずかにため息をついた。
霊夢は腕を組み、少し困った顔を見せる。
霊夢は小さく目を細め、ため息をもう一度つく。
霊夢は目を大きく見開き、霊夢の胸がドクン、と高鳴る。胸がじんわり温かくなるのを感じた。
霊夢は小さく眉をひそめ、まだ少し戸惑いの残る表情を見せた。
霊夢は腕を組み、目を細める。その目には少しの怒りがあった。
霊夢の目が鋭く光る。その瞬間、空気が変わった。
霊夢の声には、昔の苦い経験が滲んでいた。昔の自分のように強いからという理由で、妖怪の存在を気楽に考え、母を失った経験を。
魔理沙は目を見開き、息を呑む。言葉が出せず、ただ霊夢の真剣な眼差しを見つめるしかなかった。
魔理沙は少し間を置き、霊夢を見つめる。
霊夢は視線をそらし、言葉を失う。
霊夢の胸に、昔の会話がよみがえる。
私怨との戦い終わりから一年______
霊夢の瞳に、切なさと悔しさが浮かぶ。
霊夢は独り言のように、小さい声で呟く。そこに魔理沙は霊夢の横に少し身を寄せ、優しく声をかける。
霊夢は俯き、震える声で答える。
霊夢がそう言うと、魔理沙は霊夢をじっと見つめ、少し首を傾げた。
霊夢は軽く眉をひそめ、少し挑むような声で答える。
魔理沙の目がキラリと輝く。
霊夢は思わず口を開け、呆れたように小さく笑う。
魔理沙はむっとしながらも、真剣な目で霊夢を見つめ返す。
霊夢は目をそらし、静かに言葉を紡ぐ。頭の中には、母の姿。ずっと、子供の頃から追いかけてた母の背中。
その言葉を聞いた瞬間、魔理沙は目を輝かせ、にっと笑った。
呆れる霊夢に魔理沙はさらに身を乗り出し、熱く語る。
霊夢はしばし黙り込み、心の中でつぶやく。
「私も強くなる!あなたを守れるくらいに!!」
霊夢は小さく息を吐き、少し笑みを浮かべる。
霊夢はじっと魔理沙を見つめ、真剣な声で言った。
その言葉を言う霊夢の瞳には、前までの曇りはなかった。
数年後______
大正時代。蝶屋敷______
寝ている霊夢を見ながら、炭治郎が声をかける。
心配する炭治郎に対し、魔理沙は肩をすくめ、にやりと笑った。
すると、霊夢からぼんやりとしたまま小さく呻くように声が聞こえた。
炭治郎と魔理沙の声に、霊夢はゆっくりと布団から体を起こし、もう一度魔理沙の顔を見つめる。
その時、微かに霊夢の口元がほころび、低く笑う。
その声はいつもより、元気で。霊夢の瞳には、まだ眠りの余韻と、わずかな安心が映っていた。
1人じゃなければ、どこまでも!________
おまけ裏話
「お互いの存在」
魔理沙は子供の頃から霊夢のことを知っていました。
そして、霊夢が妖怪を退治している姿も見ていました。
魔理沙はその姿を見て、妖怪退治に"憧れて"、霊夢も"尊敬"するようになります。だけど、周りの大人からも親からも"巫女は化け物"。それに、霊夢が妖怪とお喋りしているところを見た人もいたので、霊夢と会うことは止められていました。魔理沙が小さい頃から霊夢に会おうとしなかったのは、それが原因です。
でも、魔理沙が大きくなり、魔法の研究をかなり進めて、魔法使いっぽくなった時に親とは絶縁し、霊夢に会いに行きました。
そして、"自分も強くなる"という約束をしました。それ以降、霊夢と魔理沙はよく会うようになり、魔理沙にとっても、霊夢にとってもお互いは親友であり、ライバルでもあるようになりました。霊夢の"私に置いていかれないくらい"という言葉がさらに魔理沙をやる気づける要因にもなりました。
ちなみに霊夢が魔理沙を妖怪退治に行かせることを許したのは、霊夢にとって魔理沙は、初めて自分を”化け物じゃない”と信じてくれた存在だったからです。もう一つは、霊夢の中にあった"寂しいという感情"が大きかったのも影響しています。
でも、妖怪の退治の仕方を知らない魔理沙は最初の方はかなり足を引っ張ってしまっていました。それでも、霊夢は呆れることはあっても、"見捨てることはありませんでした"。むしろ、そんな魔理沙を見ていて、少し楽しかったと思います。そして、今の2人に至ります。



















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。