ホタルビの中の自室に入って、
伯玖さんに購入していただいた怪異薬の蓋を開ける。
ピンク色の液体を、右手の内側に塗ると、
一瞬で私の傷は消えてなくなった。
楽なものだ。
怪我をしてもこんなに一瞬で治るというなら、
これを頼りに怪我しやすくなる人もいそうだな。
なんて考えながら、
傷一つなくなった右手を見る。
私の生きてきた証が、どこにもなかった。
傷も痛みもなければ、
私は本当に生きている実感がわかなくなる。
怖い。死ぬのが怖い。
痛いのも嫌い。
◇
夢を見る。
父の、夢を。
気持ち悪い。気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。
今にも吐いてしまいたいくらいなのに、
私が「やめて」と言ってもやめて貰えなくて。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
首をぎゅっと、大嫌いな手で絞められて。
助けて、おかあさん。
__ああ、お母さんは私の事、嫌いなんだった。
◇
翌日いつも通りに学校に行くと、
驚くくらいに普通だった。
もしかしたら、朝起きたら皆が私のことを知っていて。
気持ち悪がられたらどうしよう、
なんて嫌な想像をしていたけれど。
どうやらその心配は杞憂に終わったらしく、
心の中で伯玖さんに感謝を告げる。
今度、菓子折りでも持っていかないと。
私はそう思いつつ、普段の日常に溶け込んだ。











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。