「ゾム、手合わせをしようか」
「はぁ?」
起きてからブツブツ呟いていたグルッペンが、突然そんな事を言い出した。いや、別に手合わせが嫌っちゅう訳やなくて、話が飛びすぎてついていけへん。そもそも、手合わせ言うても素手は危険過ぎるし……
すると、グルッペンはそんな俺の思考を読んだかのように「武器はある。」と何処からか出した袋を持っていた。
「何それ」
「色んな種類の武器が入っている袋だ、刀もあるぞ」
「ひとらんウキウキなってまうやん」
まぁ今は寝とるんやけど。おっ!このナイフええやん!
「俺これにするわ」
「ここは、いつもと同じなんだな」
「何が同じなん?」
「いや、なんでもない。」
俺は人より五感が幾倍か強いので、小声で言っても聞こえてしまうのだ。そして今のグルッペンの言葉から推測出来る事、それは………………俺がこの袋を前も見たことあるって事やな!いやー全く記憶に無いわぁ俺もボケたんかなぁ?
「……ぁ?俺ら子供なっとるやん」
ただ普通に。それが通常であるかのように、言葉にするまで気づかなかった。いつもより低い視界も、いつもより少し高めの声も。全部が全部普通のことのように思えて、違和感なく世界に溶け込んでいた。
だがソレを認知すると、一気に鳥肌が立った。気持ち悪い感覚と、それをごく普通のことだと思う出処の分からない考え。そのふたつが混ざって、俺は唐突に世界から突き放された感覚を持った。
「……ム!、ゾ……さ……!ゾムさん!」
「っ?!」
は、何、今の……世界に、引っ張られた?
当たりを見ると、先程の花畑とは違い、なにか建物の中だった。隣には見知らぬシスター……いや、あなたが居た。ほなここは、孤児院……?
「だ、大丈夫ですか?話しかけても反応しないから、心配したんですよ!」
「……そうか、心配かけてすまんなでももう大丈夫や」
「本当ですか……?また具合悪くなったら、またすぐに言ってくださいね」
「おう」
ひとまず、このうるさいシスターを退けて状況確認の為周囲を見渡す。少し当たりが強いのは、耳元で叫ばれたからという事にしておこう。そうやないと、この感情を殺意以外の言葉で表せへん。
……周りにあいつらはおらんみたいやな。どこかから湧く記憶には、よく中庭にみんなおるみたいやから、中庭でも行くか。
「……そういや視界戻ってんな」
体がいつもの大きさに戻ったからか、安心感がある。子供の体はなんか……こう……キモかったから戻って良かったわぁ。まぁなんで戻ったんとか、なんで違う場所に居たのとか気になることはあるけどまずはアイツらと合流したい。
知らんのに知っとるこの変な空間に、1人はちょっと寂しいからな。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。