力強く。
シルクは言った。
Fischer’sは、あなたの弟の名前を陥れたあのYouTuberとは違う。
彼らなら。
絶対に、あなたの弟の名前の期待を裏切ったりしない。
シルクの言葉を聞いたあなたの弟の名前が、柔らかく笑う。
震えは、もう治っていた。
それぞれの言葉は、あなたの弟の名前にどう届くのか。
全てはあなたの弟の名前次第。
でも、きっと。
今日からあなたの弟の名前は変わる。
そう、確信できた。
その後、あなたの弟の名前はお礼を伝えて帰って行った。
私も帰ろうとしたのだが。
そう、ンダホに言われて留まることになった。
メンバーも、なぜ引き止めたのか分かっていないようで。
どうやら、ンダホ一人による行動らしい。
マサイが何故か険しい顔をしているのが、気にはなるが…。
ンダホは、私に背中を向けていたため、その表情は分からない。
そして、何を意図しているのかも。
シルクとマサイのやり取りの意味も、正直よく分からないが…。
とりあえず。今日はンダホの話を聞こうと思った。
メンバーの後ろ姿を見送った後。
私とンダホは近くの公園のベンチに座った。
そう言って、ンダホがカバンから取り出したのは、一枚の紙だった。
その紙を受け取り、書いてある文字を見る。
その一番上段には、"未完成人"と書いてあった。
歌詞かぁ…と、ボンヤリ理解したけれど。
正しく、その言葉が示す意味を理解して驚いた。
もちろん、リリースできるかは分からないけれど。
今書かなきゃいけない気がしたんだと。
そう、ンダホは続けた。
私は、黙々と読んでいく。
内容は、花火大会で出会った女の子に、一目惚れをする話。
所謂、片想いの恋の歌だ。
自分は、まだまだ未完成人なのだから、いつでも変われると。
応援歌でもあるような内容だった。
そして、2番に差し掛かった時に。
私はピタッと止まる。
「夜空の下公園のベンチで。
同じジュースを飲みたいな。」
この歌詞が。なんとなく。
今の私たちと重なった。
私は、咄嗟のことに、戸惑いを隠すことができなかった。
こういうことには縁遠かったため、どう反応して良いのか分からない。
まだ、メロディーはないんだけどね、とンダホは微笑んだ。
ンダホの瞳は、真剣そのもので。
私は。
同じ気持ちを返せないことを、申し訳なく思った。
ンダホは、相槌を打ちながら、私の言葉を待ってくれている。
ちゃんと、伝えないと。
ちゃんと、ンダホの瞳を見て伝えられた。
ンダホの言葉に、首を横に振る。
ンダホは嬉しそうに笑ってくれた。
そして。
完成したら聴いてね、と、それだけ言うと、ンダホは荷物を持って立ち上がった。
そう言うと、ンダホは手を振りながら去って行った。
独り言として呟いた言葉だったが。
木陰から、突然声が聞こえて、ビクッと身体が跳ねた。
でも、その声はよく知る人物のもので。
なぜここにいるのか分からず。
まさか、盗み聞きをしていたのかとも思ったが。
シルクに限って、そんな卑怯なことはしないだろう。
すぐに、そう思い直した。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!