第13話

ンダホの気持ち
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2023/06/22 21:00 更新
シルク
お前が信じてる姉ちゃんが、俺らのことを信じてくれてるんだ。
だから。
大丈夫だ。
力強く。
シルクは言った。

Fischer’sは、あなたの弟の名前を陥れたあのYouTuberとは違う。
彼らなら。
絶対に、あなたの弟の名前の期待を裏切ったりしない。
…はい。
シルクの言葉を聞いたあなたの弟の名前が、柔らかく笑う。

震えは、もう治っていた。
ンダホ
またさ!
あなたの弟の名前くんの都合の良い時に、遊びにおいで!
マサイ
この前、姉ちゃんとも撮影後に遊んだんだぜw
ダーマ
そうそう!
やりたいときに、やりたいことをやる。
ザカオ
全力でバカなことをする!
モトキ
それが、Fischer’sだからねw
それぞれの言葉は、あなたの弟の名前にどう届くのか。
全てはあなたの弟の名前次第。

でも、きっと。
今日からあなたの弟の名前は変わる。
そう、確信できた。
その後、あなたの弟の名前はお礼を伝えて帰って行った。

私も帰ろうとしたのだが。
ンダホ
あーちょっと、時間ある?
そう、ンダホに言われて留まることになった。
モトキ
え?ンダホ、何?
マサイ
……おい。お前…
メンバーも、なぜ引き止めたのか分かっていないようで。
どうやら、ンダホ一人による行動らしい。

マサイが何故か険しい顔をしているのが、気にはなるが…。
ンダホ
みんな、ごめん。
今日だけ…ね。
ンダホは、私に背中を向けていたため、その表情は分からない。
そして、何を意図しているのかも。
シルク
……チッ。
しゃーねーな。
マサイ
え?!
シルク、いいのかよ?
シルク
いんだよ。
……負けねーから。
マサイ
………。
シルクとマサイのやり取りの意味も、正直よく分からないが…。

とりあえず。今日はンダホの話を聞こうと思った。








ンダホ
ごめんねー。
急に引き止めちゃって。
メンバーの後ろ姿を見送った後。
私とンダホは近くの公園のベンチに座った。
あなた
ううん、大丈夫。
ンダホ
実は、コレを見て欲しくて。
そう言って、ンダホがカバンから取り出したのは、一枚の紙だった。
その紙を受け取り、書いてある文字を見る。

その一番上段には、"未完成人"と書いてあった。
あなた
これは…詩?
ンダホ
うん、歌詞。
あなた
へぇ…歌詞…。
歌詞かぁ…と、ボンヤリ理解したけれど。
正しく、その言葉が示す意味を理解して驚いた。
あなた
え?!ンダホ、歌つくるの!?
ンダホ
ハハッ、どうしても、作りたくなっちゃって。
もちろん、リリースできるかは分からないけれど。
今書かなきゃいけない気がしたんだと。
そう、ンダホは続けた。
ンダホ
歌詞、読んでみて。
あなた
あ、そうだね。
私は、黙々と読んでいく。

内容は、花火大会で出会った女の子に、一目惚れをする話。
所謂、片想いの恋の歌だ。
自分は、まだまだ未完成人なのだから、いつでも変われると。
応援歌でもあるような内容だった。

そして、2番に差し掛かった時に。
私はピタッと止まる。

「夜空の下公園のベンチで。
同じジュースを飲みたいな。」

この歌詞が。なんとなく。
今の私たちと重なった。
ンダホ
……気づいた?
あなた
え…っと…。
私は、咄嗟のことに、戸惑いを隠すことができなかった。
こういうことには縁遠かったため、どう反応して良いのか分からない。
ンダホ
この曲ね。
この前、一緒にパルクールパークmission tokyoに行った後、居ても立っても居られなって、書いたんだ。
まだ、メロディーはないんだけどね、とンダホは微笑んだ。
ンダホ
俺、あの時。
あなたちゃんの笑顔を見た時。
その笑顔に、一目惚れしたんだ。
あなた
………っ。
ンダホ
その時に、あぁ、やっぱり恋って良いな…そう思ったんだよ。
ンダホの瞳は、真剣そのもので。
私は。

同じ気持ちを返せないことを、申し訳なく思った。
あなた
あ…の。
ンダホ
うん。
あなた
その…私、これまで恋愛とかしたことなくて。よく分かんないというか…。
えっと…。
ンダホ
うん。
ンダホは、相槌を打ちながら、私の言葉を待ってくれている。

ちゃんと、伝えないと。
あなた
ンダホのこと、良い奴だと思うけど。
…ごめん。
同じ気持ちは返せない。
ちゃんと、ンダホの瞳を見て伝えられた。
ンダホ
…ん。ありがとう。
答えてくれて。
こっちこそ、ごめんね。
困らせちゃったね。
ンダホの言葉に、首を横に振る。
ンダホ
困らせた俺が言うのも変な話だけど。
これからも、今まで通り、接してくれるかな?
あなた
……いいの、かな。
ンダホ
うん。
お願い。
あなた
…分かった。
ンダホは嬉しそうに笑ってくれた。
そして。
ンダホ
この曲、がんばって完成させるから。
完成したら聴いてね、と、それだけ言うと、ンダホは荷物を持って立ち上がった。
ンダホ
それじゃ。
あなた
あ、うん。
ンダホ
ちゃんと、送ってもらうんだよ。
もう、暗いから。
そう言うと、ンダホは手を振りながら去って行った。
あなた
…送ってもらうんだよ…って。
誰に?
独り言として呟いた言葉だったが。
シルク
…俺だよ。
木陰から、突然声が聞こえて、ビクッと身体が跳ねた。
でも、その声はよく知る人物のもので。
あなた
…シルク…。
え、まさか聞いてたの?
なぜここにいるのか分からず。
まさか、盗み聞きをしていたのかとも思ったが。
シルク
んなことしねーよ。
むしろ、そんなことをする奴だと思ってんの?
あなた
いや。ないね。
シルクに限って、そんな卑怯なことはしないだろう。
すぐに、そう思い直した。
シルク
…まぁ、聞かなくても。
何となく分かっけど。

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