「何で庇ったか」。
なんて答えるべきだろう、と思った。
なんて答えたら、彼が納得してくれるのか。と思った。
………
きっと普通の声だった。いつも通りの表情だった。
なのになぜか、それが、
子どもの泣く声みたいに聞こえた。
……
できるだけ、優しく笑った。分かっている。
あの行為は偽善で自己満だ。
彼を庇ったって、彼はそれを喜ばない。
でも、過去に戻ったって私は彼を庇ってしまう。
彼が傷付くのを見たくないから。
彼に今私が感じる痛みを経験して欲しくないから。
―――あなたにそう思う人間がいることを、
―――知っていて欲しいから。忘れて欲しくないから。
ああ。あの時の会話。もしかして、
彼は聞いていたのだろうか。
空気読め。と、暗に言われている気がした。
でも無視して笑ってる。
彼は困惑した表情で、「まぁ」と頭を差し出した。
彼の頭に触れる。できるだけ優し手つきで。
白いふわふわの髪の毛を、撫でる。
私がお母さんに、お父さんに
ずっとされたかった手つきで、撫でる。
私は知っている。彼の人生の一部を。
彼が日向創に話した会話を、
画面越しに盗み見たようなものなのだから。
彼が両親を亡くしたこと。
不運と幸運を繰り返す人生を歩み続けたこと。
戦闘機をあんなに怖がっていたこと。
ジェットコースターに乗れないくらい、
あなたが不運と、
不運が周りに及ぼす影響を怖がっていたこと。
頭を、撫でた。何度も。
彼は何も言わなかった。文句も、何も。
けれど数分が経った頃。彼はようやく口を開く。
………
つい笑ってしまったが、
それでも彼は何も言わなかった。
今の言葉が、少しでも彼の何かを
刺激できたらいいのだけれど。
そんなことを思いながら、
私はまだ暫く、彼の頭を撫で続けていた。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!