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第25話

18 甘美なひびき
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2025/11/30 09:20 更新
ええと、話が食い違ってたの本当に申し訳ないですがもう神様が空から大量の水をぶちまけていったか夢主が傘をさしていなかったか爆風すぎてずぶ濡れになったか蘇枋くんが傘を放り投げて夢主だけずぶ濡れになったか、ということに……すみません、おねがいします、まじでもう、申し訳なさすぎて涙出そう

そんなこんなでこのまま話を進めさせていただきます。すみません。ほんとうに。




書きながらすごく罪悪感が…………。ほんとごめん。もう夢主は雨で濡れたことにしておいて……ほんとごめんね。
























歩いている間も無言だった。私の心も自然と軽くなっていた。


でも、約束とは違う形で連絡先を手に入れてしまったのも確かで。



これ、私が号泣していたから仕方がなく、とかじゃないよね?いやたぶんそうだよね。とか考えていたら、そんなの謝らずにはいられなかった。
あなた
先輩、その、すみません
蘇枋隼飛
何が?
あなた
う、えっと、服とか、タオルとかもそうですけど、あの、私約束ちゃんと守れなかったのに
蘇枋隼飛
んー………
私が言うと、先輩は少し考える素振りをした。人差し指を唇に当てて。


柔らかな肌が陽光を反射している。空はすっかり晴れて、空が朱を帯びている。遠くの方は若干紫だ。きれい。蘇枋先輩には劣るけど。


蘇枋隼飛
でもさ、あなたちゃん
蘇枋隼飛
あんなに地の底みたいな点数だったのに、けっこう勉強したんじゃない?





先輩は僅かに首を傾けて、ちょこっと横から私の顔を覗き込む。さらりと綺麗な前髪が流れる。

近いよ、近い。





蘇枋隼飛
だから、ご褒美




まるで心臓が止まったみたいだった。今日の私は固まってばかりだ。だって、でも、でも仕方ないじゃない。




こんなの、誰が予想できるっていうんだ。



あなた
ううっ〜〜、ずるい、ずるいです先輩、それっ


やっぱり先輩はいつだって冷静だ。



慌てているのはずっと私だけ。それもこれも、先輩のことが好きだからに限るから、なのだけれど、
でも!


蘇枋隼飛
面白いこと言うね

蘇枋隼飛
君も、相当じゃないか


何が面白いのか理解できない。


その後に言った先輩の言葉はあまりに小さかったから、私の耳まで届かなくて、
あなた
えっ、な、なんていいましたか?
聞き返しても、彼は教えてくれなかった。


蘇枋隼飛
内緒

あなた
えっ、えーっ、私、なんかすごい大事なことを聞き逃したような………もう一回!もう一回言ってください!
蘇枋隼飛
大したことは言ってないよ
あなた
いや!言いましたよね!?
蘇枋隼飛
えー、どうだろー
先輩はやや棒読みだ。関係の浅い私はそれがどんな理由で言ってるのかわかんないけど、どうしても
知りたくてせがんでいたら、
あなた
なんですかそれ!教えてくださいよぅ……
蘇枋隼飛
欲しがりだな……もう十分ご褒美あげたと思ったんだけど
なんて彼は口にする。よくそんな恥ずかしい台詞言えるな、とか思っていたけど案の定私は照れてしまって。
あなた
ひえっ…………けっ、けっうです………

耳の先まで真っ赤になってしまった私は結局折れることにした。確かに本人が言わないことを詮索するのは良くない!


というか、蘇枋先輩の言うご褒美って──。私は自分が持っていた袋の中身を見る。白のタオル。と、その下には私の濡れた制服が入っていて。


そして今も私は彼の私服をまとっているわけで。



もしかしてこれも彼の言うご褒美?



顔の赤らみはしばらくひかないと思う。とりあえず、家まではマシな顔色に戻そう。


でないとたぶん、お母さんに誤解されかねない。

──❅───❅──❅❅──❅────


あなた
ごめんなさい、家まで送ってもらって、何から何まで……すぐ洗って返しますので!お礼もするので!あと連絡先ありがとうございます……!!
蘇枋隼飛
いいよ、全然。気にしないで
あなた
ううう優しい……ありがとうございます……!
家の前まで送ってくれた彼はにこりと微笑んだ。天女の笑み。生まれてきてくれてありがとうございます。一生ついていきます。

家の前でお辞儀しまくっていると、ガチャリと音がして私はさぁっと青ざめた。あ、まずいこれはまずい。



空いたドアの隙間から、家の玄関の明かりがもれる。











祐希ユウキ
ねーちゃん……?




祐希ユウキ
誰それ……?彼氏?


あなた
ちがっ、ちがうよちがう!てか祐希・・、ちょーっと静かに……
祐希ユウキ
かーさぁぁあん!ねーちゃん、男つれてかえってきたー!
あなた
祐希ー!?

小学三年生に、常識は通用しなかったみたいだ。今男の人の服を着ている私も常識とはほど遠いだろうが、でも弟は空気を読むことなどせず容赦なく叫んだ。



蘇枋隼飛
わあ、話聞いてないね
あなた
うわあああどうしよう……!
そんな様子に蘇枋先輩はふふと笑っている。笑っていいとこじゃない。お母さんに見られたらなんて言われるか。え、お父さん帰ってきてないよね?怒られたくない、怒られたくない……!





家の中からはバタバタと音がした。
あなた!?
本当に慌ただしく、母親はやってきた。
って、その格好どうしたの!
あなた
ちがう、違うの、誤解だから……!
あなた
彼氏じゃないから!この人は私の先輩というか、その、あの、
は!?先輩!?あんた制服は……
あなた
えと、その、服、お借りして……
借りた!?
母親は私を見てギョッとして、それから隣りにいる蘇枋先輩を見て、私を見た。
は!?

困惑するのも仕方がないだろう。確かに、はたから見れば、ただの先輩後輩仲なのに服を借りるのもおかしいような。
なんで私服借りたんだっけ?
あなた
あわ、わわわ………

とっくに脳は許容範囲を超えていて、ぷすぷすと音がする気がする。もうだめだ。とか考えていると、流石高校生と言うべきなのか、先輩が落ち着いて説明してくださった。

蘇枋隼飛
すみません、お母さん、
蘇枋隼飛
雨も雷も強かったので少し雨宿りさせてあげたんです。制服もずぶ濡れだったから風邪ひかないように、勝手に自分の服を貸してしまって……
蘇枋隼飛
誤解招くようなことしてしまって……
なんだか申し訳なさそうな顔をしている。まるで捨てられた子犬みたいな。そんな顔するときあるんだ、じゃなくて!!!!まって、先輩が謝ることじゃないのに。私が謝らないといけないのに。
あなた
いいいいやすみません先輩そんなあやまらないで私の方が
小夜化はちょっと、口閉じてて!
余計なことを言う前に口を閉じろってか。母の圧におされて私は思わず黙り込んだけど、


いやいやこちらこそ!うちの子がごめんね、ご両親は?申し訳ないからお礼に……




そんな言葉についまた声を荒げた。




あなた
お母さん!




──というのも、彼の部屋を見てしまったからだ。まず、よくよく考えたら不良の高校で一人暮らしって、普通じゃない。それに彼はなんだか不思議な雰囲気を持っているのもそうだけれど、あまりに大人びているし、なんとなく、過去に大変なことがあったのかもと──そんなのは私の妄想にすぎないかもしれないけども。

でも、そうかも、と思ったから、
あなた
ちょっと………
言葉を続けようとすると、
蘇枋隼飛
いえいえ、オレは一人暮らしなので。大丈夫です。服とかもあなたちゃんから返してもらえればいいですよ
ときっぱり断っていた。


あまりにあっさりしているから、やっぱり私の妄想かも。恥ずかしいことを考えてしまった。と少しだけ反省した。
母親もはっきり断られたので引き下がって、

そ。そう……ごめんなさいね、本当、迷惑かけて……ほらあなた、ちゃんとお礼言ったの?
あなた
うん……
一応結構言っていたけど、もう一度だけ「ありがとうございます」というと、先輩はまた笑うだけだった。イケメン。なんか大ごとみたいになって申し訳ない。

わざわざ送ってくれたみたいで……帰りは大丈夫かな、車で送ったりとか……家どの方面?
蘇枋隼飛
いや、申し訳ないですよ、それにここから近いので
そう?ほんとありがとね、
母は何度も頭を下げている。うちのお母さんはこういう人だ。
先輩はさりげなく話をまく・・・・のが上手い気がする。自分のことはあんまり話さない。

それからまたお母さんは帰り気をつけてね、と声をかけて家の中に戻ろうと足を一歩引いた。たぶんこのままだと一生この話が続きそうだと思ったのだろう。
祐希ユウキ
おかあさーん!
家の中から小学生が叫んでいる。また何かやらかしたのだろうか。
お母さんはするとハッとして、「ごめんなさいね」と言い残してバタバタ家の中に戻っていった。

あんまりお礼を言うのももう先輩も十分だろうから、私からも少しだけ会釈すると、「あなたちゃん」と呼び止められる。
 
蘇枋隼飛
気を遣ってくれて、ありがとう


バレてた。


先輩の家庭環境が実は何かあるんじゃないかとか変なこと考えてたのバレてた!?

あなた
えっ、あ、いや、ぜんぜん!こちらこそ!


それだけ言って、先輩は
蘇枋隼飛
またね
と言った。



「また」があるんだ。「また」あって良いんだ。そりゃそうか。

だって色々、返さないとだもんね。


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