サンヒョクから連絡が来たのは
会食の二日後の昼休み
仕事の文面で絵文字も余計な一言もない
指定されたのは以前と同じホテルのラウンジ
仕事の打ち合わせとしては自然な場所だった
先に席についていたサンヒョクが立ち上がる
スーツと整った髪 , 落ち着いた視線
距離は完璧
仕事の確認は驚くほどスムーズだった
契約内容の微調整 , 今後の広報展開
スケジュールのすり合わせ 。
非の打ちどころがない
資料を閉じる音がやけに静かに響く
…… 終わった
立ち上がろうとした そのとき
まただ 。 いつもの名前で呼ばれると
狼狽えてしまう自分がいる
空気が変わった
胸の奥がひやっとする 。
分かってる カレンダーにだって入ってる
でもこうして改めて言葉にされると“現実”になる
真っ直ぐで逃げ道を用意しない聞き方
冗談でも軽口でもない
“CEO”でも“レンタル彼氏”でもない
ただのサンヒョクが聞いている
私は、すぐに答えられなかった。
続ける ? 何を …
契約を ? 関係を ?
曖昧なままのこの距離を ?
ようやく出た声は思ったより静かだった
サンヒョクは ほんの一瞬だけ目を伏せて ,
それから小さく頷く
いつも通り 。
その言葉が少しだけ重くて席を立つ
並んで歩くけど肩は触れない距離
出口の前で彼が足を止めた
境界線の上に立ったまま一歩も踏み越えない
なのに胸の奥がゆっくり熱くなる
外に出ると風が思ったより冷たかった
契約はただの紙のはずなのに
どうしてこんなに心臓がうるさいんだろう














編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。