現時点で僕が話せる事は多くは無い
・あの日死んだ警察官は三人ではなく二人
・うち1人はあなたが射殺
・僕が応援に向かった時、あなたは小さな女の子と居た
「…端的に纏めるとこうなるね」
〖何もかも分かりません〗
真新しい煙草の煙を吐き、電話口の向こうから返される声にだろうねと苦笑する。分からなくていいよ、分からない様に話してるんだから
「話せるのはここまでだよ」
〖……要は新聞で読んだ記事と事実が異なる、ということですね〗
「そうだね」
これ以上を聞くなと圧を感じ取ったのかアスモデウス君は追求しなかった。今度こそ電話を切り、椅子から重たい腰をあげる。チラッと視線を向けた先には窓があり、ソレに反射した自分の顔を見て思わず微笑が零れ落ちた
「ひっどい顔してるなぁ…僕」
窓辺まで歩み寄り、窓に映った己の頬を指でなぞる。さっきの会議の時、ちゃんと表情を取り繕えていただろうか………なんて事を考えていれば、窓の外で一発の銃声が鳴り響く
「……」
実弾を込めた音とは違う……空撃ちの音。まるで此方の動きを見計らったかのような、2週間ぶりの"合図"
「……相変わらず性格が悪い」
なんて、ボヤきながらも僕は署から足を運び出す。音が鳴ったのは署から東側……闇が深くなった道を一歩、一歩と歩いて行けば足元に一発の銃弾が撃ち込まれる
『あー、惜しい。また外れちまった』
ふと頭上から降ってくる明るい声。それに導かれる様に顔をあげれば、ズラした面を頭に被り屋根に腰を降ろすあなたの姿。…………最初から当てるつもりなんて更々無いくせに
「…今日はどんな殺し合いをしようか?」
『そう急ぐなよ』
それに気付かぬフリをして笑顔で問えば彼は、よっ、と声をあげ屋根から飛び降りる。持っていた銃をホルスターに差し、両手を顔の横にあげた。何もしないという……意思表示
「…あのさぁ……僕も暇じゃないんだけど?」
『ツレねぇなぁ……久々に逢えたってのによ』
「どの口が………合図をしなかったのはお前だろ」
『ふぅん…?てことはつまり、合図を待っててくれた訳か』
「本題に入れ」
『ごめんて』
これ以上は墓穴を掘ると察し、銃口を向けて先を促す。おどけた様子で肩を竦ませた彼は僕の前に折り畳んだ紙を放り投げた
「……?なにこれ」
『情報屋から買い込んだ、警察内での汚職者リスト』
「………」
『だいぶ値段張ったんだぜ』
「……なんでこんな物寄越すかな」
『俺が殺る前にしょ引いとけよって事だよ』
四つ折りの紙を開き、ライターの火で照らす。上から下まで余す事なく綴られた複数の警察官の名前……僕が把握している名前から、把握していないものまでがこの紙には記されていた
「…わかった」
『あと【バビル】にアリスを潜入させたのはお前か?』
「さぁね、犯罪者に話す義理はないよ」
『こっちは何時でもあの子を消せるって事、お前は分かってるよな』
「……はぁ……させたのが僕だとしてどうするの」
『ただ気になっただけだよ』
「……」
好奇心で此方を脅すなよ…とは言えずに僕はそれ以上は答えない。無言をYESと受け取ったあなたは、まあいいけどと話を切り上げた
『…あーあ……話す事がなくなっちまった』
「ならさっさと遊ぼうよ」
ホルスターに手をかけ言えば彼は目を瞬かせた後、ニィと口元を歪めた。可笑しそうに、愉しそうに笑ったあなたは仕舞ったばかりの銃に触れ『欲しがりめ』と呟く
『そんなに欲しけりゃくれてやるさ。……だから、有難く受け取れよエイト』
「それはコッチのセリフだよ。弾を全部キミにあげるんだ……余す事なく受け取ってよね」
路地の隙間から吹き抜ける風が髪を揺らす。煙草の煙が横に流れ、灰が地面に落ちる。それを合図として僕とあなたはどちらかともなく構えた銃の引き金を引いた











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。