美桜はカッターとノートを自分の後ろに隠して動揺した顔で私に言う
そう言うと美桜は突然真顔になって私の事なんか見えてないようにゴミ箱の方へ目を向けた
そして手に持っていたノートをその中に押し込んだ
気づいたら涙が出ていた
絶望した。こんな子だったんだと
追い打ちをかけるように美桜が言った
私はそのまま、香水を美桜にかけた
美桜は私のことを蹴って言った
美桜との仲はかなり険悪になってしまった
あそこで怒った私が悪いのか
ノートについたゴミをはらいながらさっきのことを考える
空っぽになった香水の瓶を見たら紫亜さんの顔が頭に浮かんだ
次の朝、教室へ着くと異様に視線を感じた
視線は渡辺さんや桜田さん、美桜からだった
私が死ぬ夢を美桜に見せたから、頼んだ時は美桜が私のことをもっと心配してくれると思ってた
でも今の様子を見る限り、心配はしてないようだ
あの香水は偽物だったのかもしれない
あの日から、頻繁に渡辺さんたちに係や宿題を押し付けられるようになった
美桜の他にも少し居た友達も私からは離れていってしまった
なんで、美桜は私と友達だったんだろうか
そんなことを考えていた時、渡辺さんが私の席に来た
突然そう言われた
嬉しい、そう思った
もしかしたら悪い子じゃないのかもしれないと思った
渡辺さんは顔を輝かさせて言った
次の日曜日、予定を開けておかなくちゃと思いながら、次の授業の準備をする
待ち合わせの日、その場所に私より先に3人が来ていた
美桜が私のことを呼び捨てで呼んでくれた
元通りの関係に戻ったんだとわたしは思った
幸せな時間だった
着いたカフェはオシャレで、可愛くて、
渡辺さんたちが私とここに来ようと思ってくれたことが嬉しかった
カフェで渡辺さんたちはちょっと高めのケーキを、私はパフェを食べた、
それから少し時間が経ったころ、私より先にケーキを食べ終わった渡辺さんたちが席を立った
1人になって3人を待ちながらスマホを見ていた
器だけになったパフェの写真でも撮ろうかなとか、そんな感じのこと思いながら待っていた
3人が手を洗いに行ってから20分経っていた
嫌な予感がした私は急いで手洗い場に向かった
中を探したけど3人はいなかった
どこにもいなかった
嫌なことが当たって店員さんのところに向かった
もう早く家に帰りたかった
私の頼んだパフェは1500円だったはず
ストロベリーショートケーキを頼んだのは
私じゃなくてあの3人だった
あの3人は私に、ケーキを奢ってもらうつもりで私を誘ったのだ
私は、メイク用品を買うために貯めておいた20000円をレジに置いた
お金を少し乱暴に置いたからか店員さんの声が私にもう来るなと言うように聞こえた
私ももうここには来たくなかった
店を出て、駐車場の辺りを見渡す
誰もいない、
私は一人ぼっちだ
裏切られたショックで出てきた涙を見られないよう、私はビルとビルの間に入った
そこは空からのひかりもあまり届かない場所で今の私には落ち着く場所だった。
右足に割れるような痛みが響く
涙のせいで自分の手も見えない
その時 私の横に誰かが近づいてきた
そして、その人は私に言った
聞き覚えのある青空のような声で
紫亜さんだった
紫亜さんの顔を見て、心にあった硬いものがスっと無くなってくれた
紫亜さんはもう一度私に聞いた
私がそう言うと紫亜さんは、俯いた
紫亜さんは俯いたまま言った
驚いた、真逆そんなことを言われるとは思わなかった
紫亜さんは続けた
紫亜さんは少し、照れているような素振りを見せ1枚の紙を取り出した
何も書かれてない、白紙の紙
意外と突飛な考えをするんだな、と感心しながら私は紙に指をさす
グイグイ押し付けるように私にその紙とボールペンを持たせた
文句を言いながらも紙の真ん中に
【山杉 奏】と書かせてもらった
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!