────────日付を遡り、一日前。
あなたはクスリと売人の調査でシブヤ・ディビジョンに訪れていた。
昨日、私がシブヤで噂の友人とやらを探すと左馬刻に伝えた所、それなら……と、左馬刻にシブヤに詳しい飴村乱数を紹介された。
巻き込んで申し訳ないが、左馬刻から飴村さん……乱数に事情を伝えると、快く協力を承諾してくれた。
それからというもの、裏社会に通じているらしい“天谷奴零”さんという知り合いが居るから、その人にも連絡してみるー!と言って、昨日のうちに噂の友人の居場所が特定出来た。
ここは私の居た世界よりもまだまだ技術が発展していなかったりするので、一つ調べるにも時間がかかると予想していた。けれど、案外そうじゃない例もあるらしい。彼等だから出来た事なのかもしれないが、こういう時に呆れる程人脈の便利さに気付かされる。
加えて今日は乱数が直々に特定した場所まで案内してくれるらしく、シブヤ駅で待ち合わせをしていた。
乱数の連絡先は左馬刻から聞いて既に交換してある為、メールのやり取りをしながら自分達の服装を目印にやっと対面する。
乱数について行くと、彼が歩き進むに連れてキャピキャピした女性陣達が「乱数ちゃ〜ん」と声を掛けてくる。
暫くすると、「おや?乱数と……」「誰だ?」と話しかけてくる男性の声が聞こえ、乱数が「あ!偶然だね〜二人共〜!」と顔を更に明るくさせる。
乱数から彼等の紹介を聞かされた後、ポッセという事で特別に事情を話し、何故か目的地まで一緒に行く事になった。
───────数十分歩いて私達がついたのは、地下にあるBAR。
噂の友人はつい最近不良仲間二人とバンドを始めたのか、知り合いのBARを点々としながら演奏をしているらしい。
知名度の高いFlingPosseのリーダーである乱数から真っ先に声を掛けて話を聞こうとするも、疑われているのが癇に障ったのか、何故か相手は喧嘩腰。
ラップバトルを挑んで、案の定FlingPosseが勝った。
私の考え過ぎかもしれないが、乱数は割と計算高い人物だと踏んでいる。
私がそう言いきれるのは、元の世界に居た時、雑賀譲二先生と話をして人の見方や心理学等について教わった事があるからだ。雑賀先生には及ばないが、日常や事件解決にその時の教えが役立っているのは確かだ。
その後、クスリについて知っている友人さんに何個か質問をした。他二人のメンバーは何も知らないようで、呆けた顔をしていた。
話を聞いた所、友人さんは元シンジュクのホストで、同僚の一人とお客さんの女の子からクスリの話を聞いただけで自分は手を出してはいないと話してくれた。
それだけじゃない。顔は見ていないが、それらしき売人がシンジュクの路地裏で若者にクスリを売っていた場面も目撃している。売っていたのが私が調査しているクスリかどうかは分からないが……。
最後に同僚の名前とお店の名前を聞き、念の為女の子のお客さんの名前も聞いた。
帰り際、ダイスに聞かれて話してもいいのだろうかと悩む。けれど、話したら話したで更に質問されそうだったので、「色々あって生き倒れてたとこを、左馬刻と理鶯が助けてくれたんだ。その後も生活面で助けられて、探偵になって借りを返し中」と話す。
FlingPosseはMAD TRIGGER CREWとはまた違った個性派揃いの様だ。
ダイス何かギャンブラーでしょっちゅう素寒貧になり、借金も多額あるそう。
乱数は私をジーッと見ると、「あなたオネーサンってどんな服持ってるの?」と聞かれる。
私自身、こちらの世界の人間では無いので、服は数えられる程度しか無く、着回している。
何なら、最初のうちは左馬刻の妹の服を借りていた。現在、妹とは一緒に暮らしてはいないらしいが……。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!