「「「よろしくお願いしァーーーーーっす!!!」」」
音駒、梟谷、生川、森然、烏野。5校が集まりいよいよ合宿が始まった。
生川と森然にはマネージャーが居ないからその分のドリンクとタオルの補充っと…と準備にかけ出すと目の前にヌンっと大きな影が2つ現れる。
『うわっ、す、すみません。』
「へぇ〜君が噂のおいかーくんの妹ちゃん?」
「マジ?!うぉー!やっぱ顔似てんね!バレー好き??なぁ赤葦!及川の妹だって!」
ひィっ!背でっかい…!トサカ…!?ふくろう…!?ていうかなんで私のこと知ってるの…!?
「おいかーくんからメール来た時はビビったけど確かにこれは心配にもなるわな〜」「え!?メール来たっけ!あ。迷惑メールに入ってる」「ヒィーーーwww木兎お前」という2人のやり取りから主将メンツに兄がメールを送っていた事が察せられる。その顔の広さもっと違うところで使ってよ…!!
フクロウみたいな人の大きな声が体育館中に響き渡り、
相変わらずトサカさんも面白がりながら私の顔を覗き込んできてあまりの圧に後ずさりしたその時。
「…木兎さん。初対面の女の子を囲んで騒ぐのは失礼ですよ。黒尾さんも楽しんでないで止めてください。」
「及川さん…だよね。いきなり2人が失礼なことしてごめんね。」
その声が聞こえた瞬間、私の鼓動が別の意味で跳ね上がった。低いけれど、どこか透明感のある落ち着いたトーン。
スッと二人の間に割って入ってきたその人は、木兎先輩の肩を掴んで軽く引き離すと、こちらを向いて小さく会釈した。
『あ…………っ』
見上げた先。
少し眠たげな、でも涼しげで鋭い目元。
整った鼻筋と、薄い唇。
よ………………吉岡亮にそっくりだ…!!!物心ついた時から好きな俳優さん…!卓上カレンダーは毎年買ってるしこの間出てた大河ドラマも全部見たしドラマ【サバイバルバースデー】の時なんかかっこよすぎて何回録画を見直したことか…!!!!
って、違う!違う違う違う!この人は梟谷の人であって吉岡亮では…。
「………固まっちゃってるけど、大丈夫…?及川さん。」
吉岡亮だ。
『っひゃい!す、すすすすみません!ドリンク作ってきやす!!!』
全速力でドリンクを作りに行った。いや作りに行ったというか逃げた。あの美しすぎる圧に耐えられる気がしなかったから。やばい、顔が、声が!!似すぎている!!
「なぁ、あの子俺たちよりあかーしにビビってね?」
「確かに。あかーしくん烏野のマネちゃんに何かしちゃった系?」
「い、いえ…。強いていえば笑顔が足らなかったとかですかね…。…後でちゃんと謝りますけど、2人も及川さんに謝ってくださいね。」
「「へーい」」
無事日向と影山くんも合流し練習試合が続く。
私たちマネージャーは烏野だけじゃなくて違うチームの得点係だったり、サポートして回っていて今は梟谷対生川を見学させてもらってるけど…
セットアップ綺麗…。それに木兎先輩はもちろんの事だけど全体の安定感がすごいな…。全員がちゃんと上手い。
『あ…赤葦先輩今ボール1個分木兎先輩に合わせて高くした…。すごい…!判断早い!』
地力の違いに圧倒され、見るだけでもかなり勉強になる1日だった。夜になったら今日のことノートにまとめよ!次の烏野の糧になるように!
練習試合夕食、お風呂が慌ただしく終わり私はロビーに飲み物を買いに行った。
『お風呂上がりはコーヒー牛乳〜コーヒー牛乳〜っと…………っ!?』
「あ、及川さん。」
ぎゃーーーーー!!!吉岡亮だ!!!!なぜここに!!単品で!!!いつも木兎先輩と一緒にいるじゃん!!あの人の声でかいからあ、近くにいるんだなっていうのがわかった上で心の準備して今まですれ違ってたのに突然現れたら心臓に悪いよ!?
『あっ、おおおお、お疲れ様ですっ…!』
どうしよ、また挙動不審になっちゃう、でも平常心なんて無理…。サッと買ってサッと部屋に戻……
「…あのさ、少し話さない?」
『へっ!?あ、…わ、私でよければ…。』
マジかよ。ちゃんと話せるかな…。赤葦先輩の後ろについて行きながら真っ赤な顔をコーヒー牛乳で冷やすように頬に当てる。冷めろ〜冷めろ〜このままじゃこの合宿中まともに一言も話せないぞ。
心臓の音がうるさい。有名人と話す時ってみんなこんな感じなのかな。握手会に行ってる友だちのレポとかもっとちゃんと聞いてればよかった。そんな見当違いな事を考えながら気を紛らわせていると「及川さん」と赤葦先輩が口を開く。
「俺のこと怖い?」
『…………へ?』
怖…なんで…?ある意味その国宝級の顔面は怖いけど…。
「いや、朝あった時もびっくりさせちゃったみたいだから悪かったなと思って。今も緊張してるみたいだし。…俺、笑顔もあんまり上手くないし威圧感あるかもだけど怒ったりはしてないよ。勘違いさせてたらごめんね。」
な、なんかとっても失礼な勘違いをさせてしまってない…!?違う違う!違くて、赤葦先輩が!赤葦先輩が…!
はくはくと慌てながらも口を動かし何とか言葉を絞り出す。
『ち、違うんです!赤葦先輩が、か、かっこよくて!!』
…………………?きゃーーー!!これじゃただの告白じゃん!!待って!!!弁明を!!!
「…かっこいい…。」
先輩が復唱したことで言ってしまったことを実感しボンッと2人して顔が赤らむ。赤葦先輩も突然のことに驚いてるみたいで口元に手を当てながらどこを見たらいいか分からず視線をさ迷わせちゃってる!!!まってまって!ごめんなさい私こんなこと簡単に言う人じゃないんです!!!
『えっと、違くて、いやかっこいいのは違くないんですけど!こ、個人的な話で申し訳ないんですけど…私の好きな吉岡亮君っていう俳優さんに先輩がよく似ていて…そ、それで緊張しちゃってただけなんです…。』
私の弁明を聞き「あぁ…」と少し緊張が解けたように笑う。柔らかく笑うその笑顔も、よく似てて困る。
「はは、そういうこと。じゃあ怖がられてるわけじゃなかったんだね。」
『怖いだなんて!むしろ勘違いさせるような態度を取っちゃってすみませんでした。』
「ううん、こちらこそ」と答える先輩の表情は笑っていて二人の間の空気が少し和らいだように感じる。はぁ、ひとまず良かった…?
「…そういえば今日の練習試合、俺が木兎さんに合わせてトス高めにしたの気づいたってほんと?」
『え?…あ、はい!私ギリギリまで木葉先輩にあげると思ってたんですけどレフトから入ってくる木兎先輩の助走距離と勢いを瞬時に判断してエースに最適なトスを上げた赤葦さんに驚きました…!!』
あれは本当に感動しました!やっぱり強豪のセッターなんだって思い知らされたというか…!なんて興奮冷めやらずブツブツ話す私とさっきのモジモジした私とのギャップに驚いているのかキョトンとしている先輩
『あっ、すみません!いきなりペラペラと…』
「ふふ、」
『へっ?』
「いや、…及川さんの妹って聞いてたからもっと人を転がすのがうまいタイプなのかなって思ってたんだけど…。話してみると無邪気で素直というか。」
あ、あはは、照れと恥ずかしさで俯きながら頬をかいていると先輩に下から顔をのぞき込まれる。
「案外可愛いんだね。」
ヒュッ。
やば、上手く息できない。何今の顔、声、顔、顔面!!!!!!ドッドッドッドとありえない速度で心臓が動いてる助けて!!誰か助けて!!!この人天然で人殺すタイプだ!!!!!当の本人はどうしたのって顔でこっち見てるし!!この人と同じクラスの人とか毎日どうやって生きてるのかな!?!?
「及川さん、大丈夫?」
だいじょばない。
ダメだ。この場にいたら私はこの人に心臓を握りつぶされてしまう。足りない脳みそに無理くり酸素を回しながらザッと立ち上がり「キョウハアリガトウゴザイマシタ。アシタモヨロシクオネガイシマス。」と今できる精一杯のお辞儀をする。
「うん、おやすみ。」
何事も無かったかのように爽やかに挨拶をする当たり、本当に無自覚なんだと思う。
体に血がめぐりすぎて逆にお風呂上がりの時よりも暑い。それに手と足が一緒に出てるのは自分でもわかってる!!
シティーボーイ、恐るべし。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。