シュン…と項垂れた和也の肩をポンと叩いた智が次に目を向けたのは、潤だった。その顔には、すこしイタズラっぽい笑顔が浮かんでいた。
智は一気に表情を険しくして、潤を見据える。その目に射抜かれたかのように、潤は言葉を飲み込んだ。
智の死後、ずっと治まっていた喘息の発作が、最近になってまた頻発している事を、潤はメンバーに隠していた。それは、心配をかけまいとする、彼なりの優しさだった。
翔の真剣な眼差しが、潤を真っ直ぐに射抜く。バツが悪そうに少し視線を逸らした潤は、小さな声で“うん。”と答えた。
嵐も結成15周年を迎え、沢山のレギュラー番組の他、個々のドラマや映画、バラエティへの出演が格段に増えた。その結果、メンバーが揃う機会がめっきり減り、込み入った話をする時間など、到底取れるはずも無かったのだ。
潤はメンバーに向き直り、深々と頭を下げた。
智は最後に斗真に歩み寄り、その肩をポンと叩いた。
潤の喘息については、事務所内では周知の事実だった。だから斗真も、彼の発作の現場に居合わせたとて、別に驚きもなかったし、慌てることなく対処もできていた。そして当然、メンバーは知っているものだと思っていたので、口にすることもなかったのだった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!