第49話

第四十七話
112
2023/10/14 03:00
シュン…と項垂れた和也の肩をポンと叩いた智が次に目を向けたのは、潤だった。その顔には、すこしイタズラっぽい笑顔が浮かんでいた。
大野 智
大野 智
次は一番の問題児だね、松潤。
松本 潤
松本 潤
はぁ?なんでオレが問題児なんだよ。
大野 智
大野 智
だって、無理してるじゃん。
松本 潤
松本 潤
別に、オレは無理なんてー。
智は一気に表情を険しくして、潤を見据える。その目に射抜かれたかのように、潤は言葉を飲み込んだ。
大野 智
大野 智
だったら、何で黙ってるの?また発作が出始めてること。
智の死後、ずっと治まっていた喘息の発作が、最近になってまた頻発している事を、潤はメンバーに隠していた。それは、心配をかけまいとする、彼なりの優しさだった。
櫻井 翔
櫻井 翔
松潤、本当なの?
翔の真剣な眼差しが、潤を真っ直ぐに射抜く。バツが悪そうに少し視線を逸らした潤は、小さな声で“うん。”と答えた。
櫻井 翔
櫻井 翔
オレたちに隠してたのは、なんで?
松本 潤
松本 潤
別に、隠してたワケじゃない。発作自体、軽いものがほとんどだし、ちゃんと薬でコントロールもできてる。だから…。
相葉 雅紀
相葉 雅紀
だから?
松本 潤
松本 潤
いつ言い出そうか、ずっと考えてた。
嵐も結成15周年を迎え、沢山のレギュラー番組の他、個々のドラマや映画、バラエティへの出演が格段に増えた。その結果、メンバーが揃う機会がめっきり減り、込み入った話をする時間など、到底取れるはずも無かったのだ。
松本 潤
松本 潤
こういう事は、なるべくならメンバー以外には聞かれたくないからな。でも―。
潤はメンバーに向き直り、深々と頭を下げた。
松本 潤
松本 潤
結果的には、隠してたのと同じだ。本当にごめん。
二宮 和也
二宮 和也
いいですよ。今、話してくれてるし。ね?
櫻井 翔
櫻井 翔
そうだね。外部の人に知られたくないって気持ちは、オレにも分かるし。
智は最後に斗真に歩み寄り、その肩をポンと叩いた。
大野 智
大野 智
松潤のサポート、ありがとね。大変だったでしょ。
生田 斗真
生田 斗真
いえ、別に…。
相葉 雅紀
相葉 雅紀
ちょっと待って。斗真、知ってたの?松潤の発作のこと。
生田 斗真
生田 斗真
あ、はい。たまたま、現場に居合わせたことがあって、それで。
潤の喘息については、事務所内では周知の事実だった。だから斗真も、彼の発作の現場に居合わせたとて、別に驚きもなかったし、慌てることなく対処もできていた。そして当然、メンバーは知っているものだと思っていたので、口にすることもなかったのだった。

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