厳しかった冬が終わり、やっとほんのりと暖かさを感じられるようになった。
もう3月だ
時の流れはあっという間で、ジェシーと話をしてから2週間は過ぎた。
あれから全くと言っていい程何事もない。
大我くんにそれとなくジェシーとの事を聞いてみても「いつも通りだよ、どうして?」と当たり障りのない返事が返ってくるだけ
あれほどまでにしつこかった父からの連絡もパタリと止んだ。
おかしいほどにのどかで穏やかな日常が、不安定な「一人の覚悟」の上に成り立っていた事に私はすぐに気づくべきだった。
朝ごはんのスープを飲みながら大我くんが首を傾げた
時間が全て解決する訳では無いけど、私たちの中で大きくなったわだかまりは少しづつ小さくなって、顔をきちんと見て話せるくらいにはなった。
手に持った携帯を見て怪訝な顔をしているのでそっと画面を覗いてみるとこちらからの不在着信が3件。
宛先は父だった
まぁでも、大の大人が少し連絡が取れないだけで大袈裟にする必要無いとその場で解決して、いつも通り私は大我くんを見送った。
彼が行けば、私の仕事は殆ど終わったようなもの。
家のことを済ませてしまえば時間を持て余してしまう。
時間が出来れば色々考え事もしてしまって、あの日のジェシーとの話を思い出す
北斗はどうしているのだろう
ジェシーはあの音声を北斗に渡したと言っていた。
彼はあれを聞いてどう思うのか
犯罪者の娘の私を彼はどう思うのか……
違う
私も共犯か
知っていて何もしないのは、同じくらい罪が深い。
何かしていたら、私の、私たちの未来は違っていたのだろうか
そうぼんやりと考えてた時、ブーブーと携帯が震えた。
ジェシーからの着信だった
不在着信15件。バイブにしてたから気づかなかったけれど、異常な数の着信履歴に嫌な汗が伝った。
すぐに折り返しの電話を掛けると、ワンコールもしない内にジェシーの声が聴こえた。
ジェシーの声は、緊迫感に満ち満ちてた。電話越しにも色んな人の声が聞こえる
考えなくても、何かあったんだ
言われるがままテレビをつけて
手から携帯が滑り落ちて自分の足に当たった。
ジンジンと足の甲は痛むし、携帯からはジェシーが何か言う声が聞こえる
でもそんなの何も脳みそに届かなくて、私の意識はテレビに吸い込まれた。
大画面いっぱいに映っていたのは、紛れもなく私のお父さんだった












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!