葛宮視点
俺の前に再び現れたあいつは、昔のように俺を求めて俺に抱きついた
昔のままのあなただ
昨日はなんにも覚えてなかったくせに
俺のこと、忘れちまったくせに
せっかく諦めようとしてたのに、無理じゃねぇかよ
彼女が俺の名を呼ぶ
俺は彼女を見つめる
その言葉に一瞬ドキッとした
やっぱりそうだよな
俺はこいつを、あなたを捨てたんだ
もう、あんな過ちは犯さない
今度こそお前を幸せにする
だから________
急にシロが俺の肩を掴んだ
シロの言葉に一瞬体が凍った
俺らしくない
その声の主に目をやると、フードを深く被った男が立っていた
俺しか見ていなかったあなたの視界にあいつが映る
『彼氏』
その言葉に俺は焦った
毒を吐き捨てるようにあいつに言ってやった
無意識のうちに腕の力が強まる
まだあなたを離したくない
それでも、あいつはあなたを俺から引き剥がした
あいつがあなたの唇を奪うと、あなたは突然意識を失った
あまりに急な出来事に俺の頭はついていけなかった
それだけ言い残してあいつはあなたを軽々と持ち上げ、この場を去っていった
すぐさま俺はあいつを追いかけようとした
その時、顔色を悪くしたシロが力強く俺の腕を引っ張った
俺はその場で崩れ落ちた
_______その瞬間眠っていた記憶が思い出した
高校時代
喧嘩を挑み、ボコボコにされた俺とシロ
シロはある人に関わることをやめ、俺たちは不良という立場を改めた
あの冷たくて鋭い目
街であなたとあいつが歩いているのを見た時、あいつの顔があの時よりも優しくて
人が変わったようだったから気づかなかった
なんだ、俺は最初からあいつに負けてたじゃねぇか
なぜ、今日あなたが俺を求めたのか
俺が考えたってよくわからない
ただ、一瞬
俺はあの幸せだった時間を思い出してしまった
次回、葛宮とあなたの過去がついに…!
次回→♡120、★1000
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!