ニッ、と私が無邪気に微笑むと
ゆあんくんもニコ、と控えめに笑みを返した。
今日は___というか、
私は一人暮らしだから今日も2人きり‼︎
最愛の彼氏であるゆあんくんと2人っきりで
家で過ごせるのが何よりも嬉しいんだよなぁ。
ガチャンッ___。
と、扉が閉まる音が聞こえた瞬間。
ゆあんくんが心底疲れた、とでも言う様な
声を出して後ろからポスンっと頭を肩に
乗っけてきた。
______きた。
ゆあんくんの〝オフモード〟___。
もとい、〝裏〟の顔。
まだ靴も脱いでないのにこんな密着してたら
足が痺れちゃうよ〜。笑
ゆあんくんも、足は痺れたくないだろうs___
コッ、コイツめ……っ。
い、今、今の不意打ちは……
心臓にッ…効いたぞッ………⁈
そう言って、鼻で笑ったゆあんくん。
そのしてやったり、とでも言いたげな顔に
私はカチン、ときてしまう。
こんにゃろッ……。
なに犬みたいにグイグイ愛情表現
してくるんだ…ッ‼︎
犬撫でるみたいに撫でくりまわすぞ……⁈
一度大きく深呼吸してから
ゆあんくんの方を振り向きそう言うと、
ゆあんくんは満足そうに「ん、」と頷いた。
______初めは、本当に塩だった。
話も私が常に回していないと続かないし
相槌も、反応も全部いまいち。
一時期は
『本当に私のこと好きなのかな?』
『なんで付き合ってくれたの?』
って、ず〜っと思ってて夜も眠れない
くらいには悩んでいた。
でも、今はこうしてゆあんくんと惜しみなく
イチャイチャできる。
人前では……できないけど。笑
それは、私が家にゆあんくんを
連れてきたことがきっかけだった。
家に入って鍵を閉めた瞬間、
ゆあんくんがびっくりするくらいに強く
私を引き寄せてきてそのまま数分間
抱きつかれていたのを今でも覚えてる。
あの時は______
今思い出しても笑えてきちゃうなぁ。
ほんっとうにベタベタに甘えてきたんだもん。
チラリと横にいるゆあんくんを見れば
バチッと視線がかちあわさって。
私の家に置いていた自分の家着を着た
ゆあんくんがニーッて満面の笑みを
貼り付けている。
それにつられて私も笑うと
ゆあんくんは弾かれた様に目をぱちくりさせて。
そして
「はぁぁあああああ………」
とおっきなため息を吐いた。
戸惑う私を引き寄せるゆあんくん。
私は、ゆあんくんの隣から
ゆあんくんの足の間に位置を移動させられて
そのまま後ろからぎゅーって抱きつかれる。
すごい冗談をぶっ込んできたゆあんくんに
私がツッコミ気味に答えるとゆあんくんの
ホールドが更に強くなった。
外出ないで生活はキツすぎるわ。笑
買い物行けなくなるし、学校も行けなくなるし
なによりも太っちゃうし……。
そんなに私を外に出したくないのか。笑
ゆあんくん、裏になると途端にベタベタ
甘えてくるのはいつものことなんだけど
こうやって独占欲丸出しにするのも
よくあるんだよなぁ。
意外と束縛強めなんだよね。
全然いいんだけど。
私、こうやって家でイチャイチャするのも
大好きだけど、外でゆあんくんといろんな
とこ巡って楽しみたい。
そう思っちゃダメ………かなぁ?
背中に頭をぐりぐりと
擦り付けてくるゆあんくん。
ふと、後ろを見ればぴょこんぴょこんに
髪が跳ねまくっていた。
私がぴょこんと跳ねるゆあんくんの
髪を手ぐしでといていると不意にゆあんくん
がポツリ、と独り言を漏らした。
なにわかりきったこと聞いてるんだろうって
目でゆあんくんを見つめるとゆあんくんは
なぜか眉根を寄せて苦しそうな顔をしていた。
そう言ってはにかむように笑うと
ゆあんくんは目をしきりにパチパチ
させてからふにゃっ、と顔を綻ばした。
それはそれは天使みたいに可愛らしく
あどけなく、愛しい微笑みで。
その微笑みに心臓がトク、トク、トク………と
どんどん鼓動を早くさせる。
そう言うとゆあんくんは
私をヒョイっと持ち上げた。
突然のことで、流石の私も驚いてしまう。
そういってベッドの方まで持ってかれて
丁寧に優しく下される。
私が何かを言い終わるよりも前に
ゆあんくんの唇で蓋をされる。
驚いて少し身を引くとそれを逃すまいと
更に近づけられる顔。
私の味を堪能するかの様に長く、深く
キスをしてくるゆあんくん。
次第に頭がボーッとしてきた時に
ゆあんくんはやっと顔を離した。
少しとろん、と垂れた私の目をゆあんくんの
大きな瞳が見つめてきて。
やがてその瞳はニッと細められると
吐息混じりの言葉でこう紡がれた。
表は塩で
裏は甘々。
ギャップのある私の彼氏は
今日も私を沼らせていく。
ゆあんくん、私も誓うよ。
君しか見えないし、愛せない。ってね?♡
〝 表 〟と〝 裏 〟 【完】
【依頼13名 : 完了2名】
𝙉 𝙚 𝙭 𝙩 ↪︎ jp & tt
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。