廊下の端。照明が少し暗い。
樹が、いつもより真剣な顔。
「なべさ、俺のことどう思ってんの?」
近い。距離、近すぎる。
なべは心臓の音がうるさい。
(やばい...何、これ)
樹の指が、そっと顎に触れる。
「逃げないの?」
逃げなきゃいけないのに。
なのに___
ほんの少しだけ、目を閉じそうになる。
(..キス、される?)
その瞬間。
ぐっと腕を引かれる。
「悪いが、それ以上はさせない」
低い声。
振り向かなくても分かる。
舘さん。
樹は一瞬だけ笑う。
「惜しかったな」
なべの鼓動はまだ速いまま。
そして舘さんの手は、離れない。
「...期待してたの?」
静かに問われる。
なべが言葉に詰まる。
それが答えになってしまう。
舘さんの目が、少しだけ揺れる。
「俺以外に、そんな顔しないでよ」











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。