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第1話

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2026/02/24 14:09 更新
廊下の端。照明が少し暗い。


樹が、いつもより真剣な顔。
「なべさ、俺のことどう思ってんの?」


近い。距離、近すぎる。


なべは心臓の音がうるさい。
(やばい...何、これ)


樹の指が、そっと顎に触れる。
「逃げないの?」



逃げなきゃいけないのに。
なのに___



ほんの少しだけ、目を閉じそうになる。


(..キス、される?)


その瞬間。
ぐっと腕を引かれる。
「悪いが、それ以上はさせない」


低い声。
振り向かなくても分かる。
舘さん。


樹は一瞬だけ笑う。
「惜しかったな」

なべの鼓動はまだ速いまま。
そして舘さんの手は、離れない。

「...期待してたの?」
静かに問われる。


なべが言葉に詰まる。
それが答えになってしまう。



舘さんの目が、少しだけ揺れる。




「俺以外に、そんな顔しないでよ」

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