第16話

14【刀の記憶︰2】
1,612
2023/07/03 12:00 更新
夜になってもジリジリと虫の声が聞こえ、蒸し暑い空気が
漂うこの季節。
俺と主は政府本部にいた。
いつもは半年に1回、本丸の状況と刀剣男士のステータスを
知らせに行くだけなのに。

俺は主が何かやらかしたのかと思ったけど、ずっと
そばにいたんだ。そんな事は1度もしてない。
なのにどうして。

いつもと違う格好で、俺を左腰に下げてた。

政府のお偉いさん、要するに最高責任者ってやつだろう。
そいつらに呼ばれ個室に案内されると、武器は
入れられない、なんて言ってさ。
もし主が怪我をしたら、斬られたらどうしてくれる。
そんな不安が収まらなかった。

でも主は、また、優しく俺に言ったんだ。
「大丈夫だあなた、すぐ戻るから、な?」
そう言って俺を政府の者に預け、部屋へ入っていった。

何があったのか知らないが、1つ言えるのは、
主がおかしくなったのは

この日からだ。

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:台所

台所につくと、石切丸さんと鳴狐さんがいた。
石切丸
石切丸
おや?奇遇だね ニコ
鯰尾藤四郎
鯰尾藤四郎
石切丸さんと鳴狐!
骨喰藤四郎
骨喰藤四郎
偶然、だな
小夜左文字
小夜左文字
…うん
2人がなんでここにいるのかは分からなかったけど、
一期さんが声をあげた。
一期一振
一期一振
、?鳴狐殿、キツネ殿はどうしたのです?
鯰尾藤四郎
鯰尾藤四郎
ほんとだ!
いつも肩に乗ってるのに…
そう言われて鳴狐さんの方を見ると、いつも一緒にいる
キツネさんが今日はいなかった。

前、たまに居なくなると鳴狐さんから教えてくれた事が
あった。
大体、こんのすけさんと一緒にいるって。
今日もそうなかな。
鳴狐
鳴狐
…こんのすけと主の所にいる
骨喰藤四郎
骨喰藤四郎
主のところ、?
鯰尾藤四郎
鯰尾藤四郎
あれ、確か今主って…
石切丸
石切丸
鶴丸と信濃君と一緒に街へ買い出しに
行っているよ
一期一振
一期一振
もしやそれにこんのすけ殿とキツネ殿も
ついて行ったということでしょうか… 笑
ついこの間、こんのすけさんとキツネさんが一緒に
縁側で日向ぼっこしてるのを見たから、ありえない話では
なかった。

主さんも、買い物に行くなら一言かけてくれても
いいのにな。
鯰尾藤四郎
鯰尾藤四郎
うっわ…ありえるわぁ…
いいなぁ〜、俺も一緒に行きたかったぁ
骨喰藤四郎
骨喰藤四郎
出陣だったんだ
仕方がないだろう
鯰尾藤四郎
鯰尾藤四郎
ちぇー
一期一振
一期一振
ふふっ 笑
一旦話が終わると、石切丸さんが僕らに問いかけた。
石切丸
石切丸
ところで、何をしにここへ?
鯰尾藤四郎
鯰尾藤四郎
お菓子作りをしようって約束してたの!
一期一振
一期一振
そうなんです
出陣から戻ってきたら、一緒に作ろうと ニコ
石切丸
石切丸
いいね
何を作るんだい?
鯰尾藤四郎
鯰尾藤四郎
みたらし団子作るんだっ
骨喰藤四郎
骨喰藤四郎
みたらし団子の案は小夜が出したんだ
そう言って、骨喰さんは僕の頭を優しく撫でてくれた。
いきなりだったからびっくりしたけど、嬉しくて
恥ずかしくて。

それに続き、一期さんも僕の肩にそっと手をかけた。
一期一振
一期一振
皆が食べやすく好きだろうと
とても素敵な提案をしてくれたんです ニコ
石切丸
石切丸
そうだったんだね
石切丸
石切丸
小夜は優しい子だ ニコ
また、石切丸さんにも頭をぽんぽんと撫でられて。
小夜左文字
小夜左文字
…ううん
彼らの手は力ずよくて、僕より大きくて、すごく暖かい。
宗三兄さまにしてもらった時と同じ気持ちになる。
安心して、嬉しくて。

もっと頑張ろうって、思えるの。

お菓子作りをするための道具を用意しながら、骨喰さんが
言った。
骨喰藤四郎
骨喰藤四郎
2人は何故ここに?
石切丸
石切丸
僕達も少し、おやつにしようと ニコ
鳴狐さんも、静かに頷いた。
鯰尾藤四郎
鯰尾藤四郎
おやつ?何か作るの?
石切丸
石切丸
作る、という訳ではないのだが
この間遠征の帰りに甘味屋によった時ね
石切丸さんはそう言い、小麦粉やらボウルやら入っている
棚を開けて、中くらいの箱を1つ、取り出した。
小夜左文字
小夜左文字
……あ
石切丸さんが取り出したあの箱、どこかで見たことが
あったから、つい声を出してしまった。

でも、食べたことあるのかい、と優しく問いかけてくれて。
小夜左文字
小夜左文字
前に、大倶利伽羅さんがくれたんだ
一期一振
一期一振
大倶利伽羅殿が、?
小夜左文字
小夜左文字
うん、おみやげ、って
鯰尾藤四郎
鯰尾藤四郎
えー!意外〜
骨喰藤四郎
骨喰藤四郎
大倶利伽羅は優しいな
鯰尾藤四郎
鯰尾藤四郎
んね〜
意外と思うのは間違いない。

普段、伊達派以外の刀剣男士と話をしない大倶利伽羅さんが
街に行ってきたからおみやげと僕にくれたのがそのお菓子
だった。

まだ宗三兄さまも顕現してなくて、本丸にも今みたいに
たくさん人数がいなかった時。
そのもらったお菓子を静まり返る自分の部屋で食べた。
鳴狐
鳴狐
…美味しかった?
小夜左文字
小夜左文字
うん
鯰尾藤四郎
鯰尾藤四郎
どんな味した?
小夜左文字
小夜左文字
えっと…
僕は鯰尾さんの質問に、あの時くれた事を思い出しながら
ぽつぽつと話始めた。

大きさはパクッと食べやすい1口サイズ。形は丸くて。
1つ1つ袋詰めになってて、縁が茶色のちょこと、ピンク色の
いちご味、その2種類があった。

どっちも甘くて、ちょっとすっぱくて。
美味しかったのを、覚えてる。
石切丸
石切丸
酸っぱかったのかい?
小夜左文字
小夜左文字
少しだけ
一期一振
一期一振
もしかしたら、レモンが少し
含まれていたのでは?
骨喰藤四郎
骨喰藤四郎
有り得るな
多分そうなのだろう。
あのお菓子には少しばかり、れもんが入っていたから
すっぱかったんじゃないか。

一期さんの言葉を聞いて、納得した。
鯰尾藤四郎
鯰尾藤四郎
要するに、あまずっぱいってやつ?
一期一振
一期一振
そうなりますな ニコ
すると石切丸さんが、箱をそっと開けた。
石切丸
石切丸
僕も初めて買ったお菓子だから
どんな味がするのか分からなくてね
石切丸
石切丸
小夜の話を聞いて増々ますます気になってしまったよ
箱から人数分のお菓子を取り出して、僕らに言った。
石切丸
石切丸
まだ沢山あるんだ
1つ、食べてみないかい? ニコ
鯰尾藤四郎
鯰尾藤四郎
食べていいの!?
石切丸
石切丸
あぁ ニコ
鯰尾藤四郎
鯰尾藤四郎
やったっ!
骨喰藤四郎
骨喰藤四郎
ありがとう
石切丸
石切丸
いいえ ニコ
鯰尾さんと骨喰さんはもらったお菓子の袋を開けて、
パクッと1口で食べた。
余程美味しかったのだろう。笑顔がキラキラだった。

そんな2人を見て、一期さんは嬉しそうだったけど、
やっぱり少し不安だったみたいで。
一期一振
一期一振
我々が食べてしまってもいいのですか…?
石切丸
石切丸
大丈夫さ
自分用に1箱買っただけであって
石切丸
石切丸
本丸全員分は、しっかり別にあるからね ニコ
一期一振
一期一振
成程…
ありがとうございます、石切丸殿 ニコ
石切丸
石切丸
小夜も、手を出してご覧?
言われるがまま右手をそっと出すと、さっきみんなが
食べていたお菓子の袋が2つ、置かれた。
小夜左文字
小夜左文字
、?ふたつ…?
僕はなんで2つくれたのか分からなかった。

すると、石切丸さんは言った。
石切丸
石切丸
小夜と宗三さんの分で、2つだよ ニコ
石切丸
石切丸
おやつの時間までまだ少しあるから
それまで2人で食べてほしくてね
僕だけじゃなくて、宗三兄さまの分までくれるなんて
思ってもいなくて。

すごく、嬉しかった。
小夜左文字
小夜左文字
あ、ありがとう
石切丸
石切丸
ううん ニコ
鯰尾藤四郎
鯰尾藤四郎
てか、おやつにこれ出すならお団子
どうする?作る?
一期一振
一期一振
うーん…そうなると……
お団子は明日にしようか
一期一振
一期一振
小夜も、どうかな
小夜左文字
小夜左文字
大丈夫
僕は明日でも明日じゃなくても、この人達と作れれば
いつでもよかった。
鳴狐
鳴狐
…僕も明日、来ていい?
小夜左文字
小夜左文字
、!
一期一振
一期一振
勿論ですとも ニコ
是非来てください
鯰尾藤四郎
鯰尾藤四郎
一緒につくろ!
骨喰藤四郎
骨喰藤四郎
明日が楽しみだな
鳴狐
鳴狐
…うん
そう、嬉しそうに鳴狐さんは頷いた。

少しして、おやつの時間までまだあったから僕らはそのまま
台所を出て、縁側で日向ぼっこをする事にした。
その間、主も帰ってくるかもしれないし。

舞穪さんも、もしかしたら目が覚めるかもしれないし。










︰廊下

日の当たりがいい所を知ってる、みんなに伝えてから、
僕はそこまで案内していた。
少しして、近くから誰かが倒れる音が聞こえた。
鯰尾藤四郎
鯰尾藤四郎
今誰か転んだ?
石切丸
石切丸
鬼ごっこでもしていたのかな…
一期一振
一期一振
全く…危なっかしいですね クスッ
石切丸
石切丸
そうだね クスッ
最初は僕も、誰かが転んだ音だと思ってた。
皆より少し前を歩いてた僕は、気になって小走りで
見に行った。

まさか、音の原因があの人だとは思ってもなくて。
小夜左文字
小夜左文字
僕見に行ってくる
鳴狐
鳴狐
小夜、待って
小夜左文字
小夜左文字
鳴狐さん、?
鳴狐
鳴狐
僕も行く
小夜左文字
小夜左文字
…!うん
鳴狐さんと一緒に少し先にある角を曲がると、
そこには舞穪さんが壁に手をついたまま、座り込んでいた。
小夜左文字
小夜左文字
ッ……!!
鳴狐
鳴狐
…!
小夜左文字
小夜左文字
舞穪さん…!!
なんで、どうしてここにいるの。
まだ体調が良くなってないって、燭台切さんが言ってて、
長谷部さんもあんなに心配してたのに。

なんで。

とっさに彼の元へ行くけど、僕は医療の知識は持ってない。
だから、今舞穪さんに何をしてあげればいいか
分からなかった。

すると鳴狐さんが、声をあげた。
鳴狐
鳴狐
小夜、一期呼んで
小夜左文字
小夜左文字
、!
鳴狐
鳴狐
僕も医療は分からない、だから
小夜左文字
小夜左文字
…分かった
その場で立ち上がって、僕は一期さんの元へ走った。

息を切らして、慌てて走ってきたから驚いたのだろう。
心配の声をかけてくれて。
一期一振
一期一振
小夜、どうしたのです…?
小夜左文字
小夜左文字
ま…舞穪さんっ、が……
一期一振
一期一振
え、?
石切丸
石切丸
彼は今、自室治療中では…?
混乱するのも、当たり前。
本来なら部屋で治療をしてるのだから。
一期一振
一期一振
とにかく行きましょう
石切丸
石切丸
私は燭台切達に知らせてくるよ
一期一振
一期一振
お願いします
少し不安そうな顔をして、骨喰の方を見ると一期さんは
言った。
一期一振
一期一振
…骨喰はここにいても構わないからね ニコ
骨喰藤四郎
骨喰藤四郎
ッ……悪い
何とも言えない表情をして骨喰さんは返事をする。
その様子を見て、鯰尾さんが骨喰さんの肩に軽く手を
置いた。
鯰尾藤四郎
鯰尾藤四郎
俺も骨喰と一緒にいるよ
一期一振
一期一振
頼む
安心した面持ちでそう言い、一期さんが僕の方を向いた。
一期一振
一期一振
小夜、連れて行ってくれ
小夜左文字
小夜左文字
こっち
僕は一期さんを連れて、舞穪さんの元へ急いだ。

なんであんなところにいたのか。
まだ体調が悪いんじゃないのか。
思う事はたくさんあった。けど、あのまま舞穪さんが
折れてしまったら元も子もない。
今度は僕が、絶対に助けるの。

だってまた、元気な姿を見たいから。
また、一緒に出陣したいから。

舞穪さんと宗三兄さまと、お菓子を作りたいから。





まだ、




















謝れていないから。


𝓽𝓸 𝓫𝓮 𝓬𝓸𝓷𝓽𝓲𝓷𝓾𝓮𝓭

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