第38話

好きな人の好きな人
547
2024/04/30 13:18
33話
(みなさん投票ありがとうございました)







side洸人








柾哉に遊び行こって言われたら即答で断られた
そんな大事な予定?
またあいつ?
松田だっけ?
たまには俺のこと考えてくれてもいいじゃん
俺の方が先に出会ってんだから
急に現れたやつの相手ばっかすんなよ…




雄「ひーろーとーくーん!」

「わっ!?雄大」

雄「黙って何してんの?」

「いや、別に何も…」

雄「あ、来週の火曜空いてへん?」

「空いてる、けど…」

雄「よっしゃ!じゃあ遊園地行こ!」

「は?遊園地?2人で?」

雄「うん!あかん…?」

そんなうるうるした目で見んじゃねぇよ…

「別に、いいけど」

雄「じゃ、決まりな!また火曜に!」

「お、おう…?」









そんなこんなで迎えた火曜

普通に楽しんでた
あの瞬間までは



月が光を放ち出した頃
2人で観覧車に乗ることにした



列に並ぶと、目の前に居たのは柾哉



と、松田迅


2人で楽しそうに話してる
なんか、前より仲深まってるように見えるし…


そのまま2人は観覧車に乗り込んで
続いて俺らも乗った




何も考えなくていいように雄大と呑気に話してた
部活の話とか色々

でも、頂上に着いた頃、見たくないものが目に入った

「っ……」


互いに抱きしめ合う2人
松田の顔は見えないけど柾哉は見えてしまった
すごく、幸せそうな顔


雄「ん?洸人く…、あっ…」

急に一点を見て黙り出した俺に驚いた雄大が同じ方向を向くと、状況を理解したのか俺を抱きしめてくれた

雄「大丈夫やって、俺が居るやん」

「ごめ…」

雄「大丈夫やって
  あっちは俺らがいること気づいてへんし、
  すぐ帰ろ」

「うん、ありがとう」

そのまま地上について観覧車を降りる
直ぐに帰ろう。そう思った瞬間だった

柾「あれ、洸人?」

柾哉に気づかれてしまった

「ま、柾哉じゃん!奇遇だな」

慌てて返事をする

柾「雄大も一緒じゃん!」

雄「うぃっすー!」

雄大は俺と違って陽気な返事

柾「そこ、仲良かったんだね」

「いや、そこまでじゃ……」

変に勘違いされちゃ…

雄「仲ええやろ」

「いや…」

雄「デートしてるんやしさ、な?」

「はっ?ちょっ…何言って…」

なんだよこいつ…

柾「なるほどぉ…いいじゃん!応援してるよー!」

「っ………」

応援すんなよ…
なんで俺の気持ちに気づいてくんねぇの…
なんで、俺より後に出会ったやつの方に行くの
俺の方が好きなのに
お願いだから、松田に"恋"はしないで…
頼む、まさや…

雄「あ…ごめんなさい、ちょっと失礼します!」

思わず、考え込んでしまった俺の腕を引いて雄大があの場から連れ出してくれた
とは言っても、あいつが悪いけどな










そのまま電車に乗って雄大の家へと辿り着いた
電車の中でも頭は柾哉でいっぱいだった


ガチャッ


雄「入って!今日親居らんから大丈夫!」

「おう…」

手を洗って雄大の部屋に入る


雄「今日はごめん…ふざけすぎた……」

「いいよ…別に」

急に改まったと思ったら謝ってきた
でも、雄大が何してもわかんねぇんだよ…

雄「いや、ほんまに…殴ってもいいよ」

「どうせ、変わんねぇよ…
 雄大が話してなくても、柾哉はあいつに夢中だ」

雄「そんなことな…」

「あるんだよ!」
「ハグしてるとこ見せられてさ、
 俺の見たことない顔しちゃって
 俺の方が先に出会ってたのに
 俺の方が好きなのに
 俺の方が、絶対幸せにできるのに…
 なんでっ………」

雄「ごめん、洸人くん…」

「っ…こっちこそごめん、今日はもう帰るわ」

雄「うん…」







俺はそのまま、雄大の家を後にした










翌日





柾「おはよー!」

「おはよ、柾哉
 今日早いな、集合まで1時間あるぞ」

柾「洸人だって早いじゃん」



「俺はいつも練習してるから」

柾「偉いね」

「おう、柾哉なんかあったのか?」

柾「え?いや、その…」

「言えよ、なんでも聞いてやる」

柾哉の悩みは俺も知りたいし一緒に抱えたい


柾「前に迅の話したじゃん?
  俺さ、迅の事さ…」

…………は?
うそだろ…やめろよ
言うな、昨日頑張るって決めたとこだぞ?
頼むから、その続きは…

柾「好きになっちゃった…
  恋、しちゃったや…」

俺の願いは届くことも無く
柾哉の口が紡いだのは俺の聞きたくなかった言葉

「そっか…頑張れよ!応援してるぞ」

柾「うん、ありがとう!頑張るよ」

丁度話に区切りがついた頃だった

ガラガラッ

迅「柾哉くん…っ!」

松田が来た

柾「え?迅?どうしたの?何かあった?」

迅「朝起きたら横にいなくて…
  探しても見当たらなかったから走ってきた…」

なんだそれ、俺への嫌がらせか?

柾「なにそれ、かわいっ」

迅「可愛くなーい!」

なんだよ、2人して
目の前でイチャコラすんなよ
俺の気も知らないで…


2人が俺の存在を忘れていることを自覚して
そのまま部室を飛び出した



「はぁはぁはぁはぁ…」


雄「あ!ひろとく…え?どうかしたん?なんかあった?」

かなり遠くまで走った後、雄大に会ってしまった

「べつに、何も無い」

なんでよりによってお前が居るんだよ…

雄「何も無くないやろ?」

「なんもねぇって!」

雄「じゃあ、なんで泣いてんねん」

「は?」

ぎゅっ

雄「泣かんとってや…洸人くんが泣いてたら俺が辛い」


雄大はそう言いながら俺を抱きしめた

「別に、泣いてない…」

そう。俺は泣いてない
泣きそうなだけで、泣いてはいない

雄「無理せんとって…泣いてないなら、
  なんで今俺の肩が濡れてんねん…」

「っ……」

確かにそうだった
雄大の方を見ると、俺の目があった位置だけ濡れた跡があった


「ごめ…」

雄「大丈夫。泣きたいだけ泣きや
  我慢せず泣いてや前も言ったやろ?
  俺が全部受け止めるやん、な?」


「うっ…グズッ……っ…」

雄「何があったん?言える?聞くで」

「柾哉が…今、松田に、恋したって……」

雄「え……」

「で、その話がちょうど終わった瞬間に松田来て
 2人で楽しそうにしてて、柾哉が愛おしそうな顔してて
 俺、耐えれなくて…それで…
 でも、柾哉の前ではちゃんと泣くの我慢した…」

雄「そっか…偉いな、洸人くん
  よく頑張ったわ…辛かったよなぁ
  その気持ちほんまよくわかるわ」

「え、わかるの…?こんなぐちゃぐちゃな話なのに」

雄「うん、わかるよ。俺も同じだから」

同じ……同じって…
雄大も好きな人に好きな人居るってこと?

「俺ら、似た者同士なんだ…
 互いに頑張ろうな、俺は叶わないかもだけど
 俺なりに頑張るわ
 だから、雄大も頑張れ」

雄「うん、ありがとう
  でも、俺は頑張れないかなぁ」

「なんで…?」

雄「好きな人も俺らと同じやから
  その人の恋が叶って欲しいからさ」

「そっか…その人の恋、叶うといいな…
 雄大も、新しい人見つけれるように頑張れよ
 雄大の今の恋も応援してるよ」

雄「嬉しいけど…洸人くんには応援されたくないなぁ


「ん?なんて?嬉しいけど?」

雄「いや、なんでもない」

「えー?」

いやいや、めっちゃ気になるなおい
でも、雄大も辛いだろうから聞き過ぎないでおこう


「雄大も困ったら頼れよ!
 俺に出来ることなら協力するから!」

雄「うん、ありがとう!」

その後、部室に戻ると松田はまだ居て
部活を見学して行った
でも、雄大に話したお陰か、あまり辛く感じなくて
一瞬でも辛いと思った時は雄大が気づいてくれて気にかけてくれた
昨日の事もまだ謝ってないのにね








あぁ、



好きになったのが雄大だったらよかったのになぁ




なんて、ね……笑





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恋って複雑ですよね
私も過去に友達の好きな人の好きな人が自分だった事があって、喧嘩したの覚えてます
私自身恋に興味が無いのでどうでもいいんですが
結局、友達は今別の人と付き合って幸せそうです

恋してない癖にこんな複雑な恋書いてる自分、我ながら面白いですね笑


そして、本当に鈍感なのは柾哉さんではなく…って感じですね、今は

雄大ってなんだかんだで誰よりも周り見る力凄くて、優しくて、頑張り屋で、愛おしいです



柾哉くん目線の時は夜になったことを「空が藍色に染まった」みたいな感じで書いたんですが
今回は「月が光を放ち出した」にしました
こういう表現好きなんですよね
わかる人いません?

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