救い side こさめ
珍しく動揺してるのが自分でも分かるくらい心臓が異常な振動をたてていた
『ついてない』と言おうとしたが、喉の奥が塞がってしまった様な感覚に陥り何も言えなかった
今から言おうとしてる言葉も嘘
あなたの名前【カタカナ】ちゃんに向けた【目を細める笑顔】も嘘
…いつからだっけ、真実を見失う様になってしまったのは
俺の兄弟達は皆優秀
魔法も各属性の魔法使いの中で群を抜いて上手かった
でも、俺が使えるのは
『コップ一杯分の水を出すだけ』
全ての魔法の基礎である水魔法ですら
完璧に使えなかった
兄弟達は皆優しく
両親も俺の魔法については何も触れず、優しくしてくれた
ずっとずっと…それが苦しかった。弱いひよこの自分を守るには【嘘】という殻が必要だった
あなたの名前【カタカナ】ちゃんは…こんな事を考えるのも失礼だけど
どんなに周りから酷い言葉や態度を投げつけられても
平然としている。
しかもそれが嘘ではない
最初、彼女の境遇を聞いた時、俺と似ているとは思ったんだ
でも、全然違った
"彼女は自分を持っている"
世の中の人間は皆嘘吐きだ
真実で人を助けてくれる人なんていない
取り繕わないと、自分を維持できない
…でも
彼女の言う【真実】が本当なら
もう自分の声は涙を我慢してるせいでボロボロで聞き取れたすら怪しいだろう
彼女は近づくと目に溜まった涙を拭いそのまま流れる様に俺の頬を撫でた
俺はそんな良い人間じゃない
慌てて否定しようとしたが静止される
笑顔で頬を撫でた
優しくなんかない
ただ臆病なだけで…
『逃げてもいい』
その言葉を聞いた何か憑き物が落ちた気がした
自分でも我慢した涙が溢れてくるのが分かる
彼女はそれに気付いても、何も言わずに
ただ頭を撫でてくれた
婚約者のフリ…か…
……。
そう言うと彼女は立ち上がった
さっきまでの優しい笑顔が嘘の様にいつもの雰囲気になるあなたの名前【カタカナ】ちゃん
そう呟き『コップ一杯分の水』を出した
そう嬉しそうに笑う彼女を見て
心の中の雨が晴れた気がした














編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。