放課後の屋上 .
部活動生の声が飛び交っている賑やかな校庭が
視界の端に映るこの空間 .
目の前には同じクラスで隣の席のイブラヒムくん
今日 "も" 、私は彼に 「 好きです 」 と告白する .
ズーンと項垂れると 、上から乾いた笑いが聞こえる .
彼に告白するのもかれこれ4回目とかだろうか?
正式に言えば 告白 ではなく 告白 "予行練習" である .
好きな人に気持ちを伝えたいけれど 、
告白したことのない私は勇気もないし不安で 、
無理言って彼に頼み込んだ結果だった .
それはそうなんだけどさ ……
何事も 、本番を迎える前に練習ってするもの
じゃない? その感覚だったんだよ .
イブラヒムくんに頼ったのは彼の性格からで 、
ノリが良くて 、どんな振りにも軽い反応をしつつ
どこか面倒見がいいその対応力 .
大抵「 まぁいいけど 」って引き受けてくれる .
そういう適当さと優しさが 、甘えちゃう理由でも
あり 、無茶なお願いをする理由でもあった .
「 つまり俺の責任だから 、あなたの名字は悪くねぇわ 」
そういってくれるイブラヒムくんは優しくて
私も もっと新鮮味と真剣さがいるんだ って気づく .
本番 ……
そう 、この予行練習にはもちろん本番が待っている .
"練習は何回でも付き合うけど" という言葉が 、
今の私にはグサリと突き刺さってくる .
身体は 聞きたくない って言っている気がするのに
本能がストップをかけないから言葉が溢れていく .
「 教えてくれないの!? 」 と問えば
「 プライバシーみたいなもんじゃん 」 と返される .
何もプライバシーなんてないでしょ …
現に 、私は恥を捨てて練習しているっていうのに .
軽いノリっぽく言いながらもトーンは変わらない彼 .
本番を後押しするような言葉にチクリと胸が痛んで
モヤモヤとしたこの感情は隠すことしか出来なかった .
┈┈┈┈┈
帰りのHRを終え 、徐々に人が減ってきた教室 .
隣の席の彼は帰ろうとせずに 、ぼんやりと
スマホを眺めていた .
これは "今日は声をかけていいよ" っていう
合図だと 、私が一方的に勘違いしているもの
でもあった .
"いつも" 通り 、荷物は置いたまま屋上へと向かう
ために立ち上がったけど 、パッと腕を掴まれた .
椅子に座ったまま 、此方を見上げる切れ長な瞳 .
いつもとは違う角度からみる彫刻のような顔面に
バクバクと心臓の鼓動は早くなっていく .
その間も腕は掴まれたままで 、彼のゴツゴツと
した指の感触が直で伝わってもどかしい .
ストン 、と彼の隣の席に腰を下ろす .
まだ教室はクラスメイトが数人残っているのに
掴まれた腕は離されずに 、宙に吊り上げられている .
どうして掴んだままなんだろう? だなんて
気になりつつも 、隣へと目を向けることが出来ない .
片耳だけより鮮明に捉えたその声に反応して 、
顔を向ければ教室の奥を眺めている横顔が目に入る .
椅子を引いて立てば 、繋がった手は離されて 、
彼も椅子を引いて向き合うように目の前に立った .
おかしな話になるけれど 、私って誰のために
告白の練習をしていた?
今まで沢山口にしてきた "好き" って言葉は
本来伝えたかった相手がいたはず … なんだけれど
いなくなってしまった .
…… というか 、私の恋心がぐちゃぐちゃにされた .
"された" だなんて他責任みたいな言い方には
なってしまうけれど 、もう "練習" だなんて
位置づけで話したくない .
目の前の君のことを 、練習相手として見れないから .
"いつも" のようにダメ出しやアドバイスをもらえる
と思って 、俯いて待っていたのに返事がない .
不思議に思って顔を見上げると 、
片手で顔を覆うように隠す彼が視界に映った .
「 今まで名前とか呼んだことなかった 、じゃん 」
サラサラな銀髪から見える耳は赤く染まっていて 、
心做しか言葉も詰まり詰まりに聞こえた .
小さく鼻を鳴らして 、困ったように眉を下げれば
綺麗な優しく目を細めて 、此方を見下ろした .
淡々と話し続けるイブラヒムくんに対して 、
上手く脳内処理が追いつかず理解出来ていない私 .
ブワッ 、と脳に熱が上がったような感覚と
あまりの動揺でパチパチと瞬きを繰り返してしまう .
「 それだけ 、把握しといてほしーわ 」
頭の上に熱と重みが伝わって 、優しく撫でられる .
固まって動けない私を見て 、綺麗に頬を緩める彼が
どうしようもなく … ずるくて 、カッコよくて 、
…… すきだ 、って .
びっくりしたように蒼と黄の瞳を見開いた彼 .
明日 、"好き" って言葉を伝えたいキミに
今までの練習を活かした "本番" をさせてください .
今までとはちがう 、沢山の 好き を込めた告白を .













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。