第9話

 ibrhm ⟡ 君と最後のリハーサル 
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2025/06/22 07:05 更新










あなた
 好きです! 付き合ってくださいっ! 
 
 ibrhm 
 んー 、ちょい勢いやばめか 







 放課後の屋上 .



 部活動生の声が飛び交っている賑やかな校庭が

 視界の端に映るこの空間 .



 目の前には同じクラスで隣の席のイブラヒムくん

 今日 "も" 、私は彼に 「 好きです 」 と告白する .






あなた
 … すき 
 
 ibrhm 
 それは気持ちこもってなくね? 
 
あなた
 っ〜 …  もう! 難しいよ〜 、 







 ズーンと項垂れると 、上から乾いた笑いが聞こえる .



 彼に告白するのもかれこれ4回目とかだろうか?

 正式に言えば 告白 ではなく 告白 "予行練習" である .



 好きな人に気持ちを伝えたいけれど 、

 告白したことのない私は勇気もないし不安で 、

 無理言って彼に頼み込んだ結果だった .






 ibrhm 
 つーか 、これは練習なってんの? 
 
あなた
 なってる! ちょっとずつ言葉に 
 するのに慣れていってるの!!
 ibrhm 
 言葉にすんのに慣れたらダメだろ、 







 それはそうなんだけどさ ……

 何事も 、本番を迎える前に練習ってするもの

 じゃない? その感覚だったんだよ .





 イブラヒムくんに頼ったのは彼の性格からで 、

 ノリが良くて 、どんな振りにも軽い反応をしつつ

 どこか面倒見がいいその対応力 .



 大抵「 まぁいいけど 」って引き受けてくれる .

 そういう適当さと優しさが 、甘えちゃう理由でも

 あり 、無茶なお願いをする理由でもあった .






あなた
 私に何が足りないかな 、 
 ibrhm 
 ん〜 … 真剣度じゃね?  
 ちょっと当たり前ぽく聞き流してたし 







 「 つまり俺の責任だから 、あなたの名字は悪くねぇわ 」



 そういってくれるイブラヒムくんは優しくて

 私も もっと新鮮味と真剣さがいるんだ って気づく .






 ibrhm 
 で? "本番" はいつすんの? 
あなた
 まだ決めてない … けど 、 


あなた
  っ、…  
 
 ibrhm 
 ふは 、そんな悩む?   
 まぁ練習は何回でも付き合うけどな 







 本番 ……

 そう 、この予行練習にはもちろん本番が待っている .



 "練習は何回でも付き合うけど" という言葉が 、

 今の私にはグサリと突き刺さってくる .






あなた
 イブラヒムくんはさ? その 、 
 … したことあるの?
 ibrhm 
 え? なに 、練習? 
あなた
 練習もだし! 本番 、も 







 身体は 聞きたくない って言っている気がするのに

 本能がストップをかけないから言葉が溢れていく .






 ibrhm 
 まぁ〜 … 
 ibrhm 
 その辺はさ 、タブーじゃね? 
あなた
 え!? 







 「 教えてくれないの!? 」 と問えば

 「 プライバシーみたいなもんじゃん 」 と返される .



 何もプライバシーなんてないでしょ …

 現に 、私は恥を捨てて練習しているっていうのに .






 ibrhm 
 成功するといいな 、願っとくわ俺も 
 
あなた
 … うん 、ありがと 







 軽いノリっぽく言いながらもトーンは変わらない彼 .



 本番を後押しするような言葉にチクリと胸が痛んで

 モヤモヤとしたこの感情は隠すことしか出来なかった .









 ┈┈┈┈┈








あなた
 イブラヒムくん! 今日も 、いい? 
 ibrhm 
 ん 、おっけ 







 帰りのHRを終え 、徐々に人が減ってきた教室 .



 隣の席の彼は帰ろうとせずに 、ぼんやりと

 スマホを眺めていた .



 これは "今日は声をかけていいよ" っていう

 合図だと 、私が一方的に勘違いしているもの

 でもあった .






あなた
 じゃあ … 







 "いつも" 通り 、荷物は置いたまま屋上へと向かう

 ために立ち上がったけど 、パッと腕を掴まれた .






あなた
 っ 、え? 
 ibrhm 
 待て 、今日はここでよくね? 
あなた
 教室で? でもまだみんな … 
 ibrhm 
 みんな帰るっしょ 、そのうち 







 椅子に座ったまま 、此方を見上げる切れ長な瞳 .



 いつもとは違う角度からみる彫刻のような顔面に

 バクバクと心臓の鼓動は早くなっていく .



 その間も腕は掴まれたままで 、彼のゴツゴツと

 した指の感触が直で伝わってもどかしい .






あなた
 ん … わかった 







 ストン 、と彼の隣の席に腰を下ろす .



 まだ教室はクラスメイトが数人残っているのに

 掴まれた腕は離されずに 、宙に吊り上げられている .



 どうして掴んだままなんだろう? だなんて

 気になりつつも 、隣へと目を向けることが出来ない .






 ibrhm 
 …… 帰った 、か 







 片耳だけより鮮明に捉えたその声に反応して 、

 顔を向ければ教室の奥を眺めている横顔が目に入る .






あなた
 … 今日 、で終わりにするね 
 ibrhm 
 え? 







 椅子を引いて立てば 、繋がった手は離されて 、

 彼も椅子を引いて向き合うように目の前に立った .






あなた
 … 、 







 おかしな話になるけれど 、私って誰のために

 告白の練習をしていた?



 今まで沢山口にしてきた "好き" って言葉は

 本来伝えたかった相手がいたはず … なんだけれど

 いなくなってしまった .





 …… というか 、私の恋心がぐちゃぐちゃにされた .





 "された" だなんて他責任みたいな言い方には

 なってしまうけれど 、もう "練習" だなんて

 位置づけで話したくない .



 目の前の君のことを 、練習相手として見れないから .






あなた
 イブラヒムくん 
あなた
 好きです 、私と付き合ってください 



 ibrhm 
 … っ 







 "いつも" のようにダメ出しやアドバイスをもらえる

 と思って 、俯いて待っていたのに返事がない .



 不思議に思って顔を見上げると 、

 片手で顔を覆うように隠す彼が視界に映った .






あなた
 え … ? 
 ibrhm 
 待っ … て 、何なん 、その 







 「 今まで名前とか呼んだことなかった 、じゃん 」



 サラサラな銀髪から見える耳は赤く染まっていて 、

 心做しか言葉も詰まり詰まりに聞こえた .






あなた
 や … それは 、 
 


 ibrhm 
 …… まぁ 、これで最後なんっしょ? 
 ibrhm 
 じゃああなたの名字が本番行く前に 、 
 伝えたいことあんだけど
あなた
 え 、うん … 







 小さく鼻を鳴らして 、困ったように眉を下げれば

 綺麗な優しく目を細めて 、此方を見下ろした .






 ibrhm 
 練習っていう名目で何度も好きって 
 言われたんですけど
 ibrhm 
 好きにさせた責任 、とってくんね? 








あなた
 え … 、? 
 
 ibrhm 
 毎回 "練習" で呼び出される身にも 
 なってほしーわ
 
あなた
 練習 … って 
 
 ibrhm 
 名前呼ぶのはさ 、ずりーじゃん 
 今までで一番刺さったし
 







 淡々と話し続けるイブラヒムくんに対して 、

 上手く脳内処理が追いつかず理解出来ていない私 .






あなた
 …… 
 ibrhm 
 伝わってそ? 
あなた
 っ 、いや … 
 ibrhm 
 んは w  え? 伝わってないマジか 
 

 ibrhm 
 俺が今 、本番してんだけど 





あなた
 っ 、え … !!?! 







 ブワッ 、と脳に熱が上がったような感覚と

 あまりの動揺でパチパチと瞬きを繰り返してしまう .






 ibrhm 
 好きだよ 、ちなみに練習でもないから 







 「 それだけ 、把握しといてほしーわ 」

 頭の上に熱と重みが伝わって 、優しく撫でられる .



 固まって動けない私を見て 、綺麗に頬を緩める彼が

 どうしようもなく … ずるくて 、カッコよくて 、



 …… すきだ 、って .






あなた
 こ 、告白 … ってこと 、? 
 ibrhm 
 ん 、そーだけど 




あなた
 … じゃ 、じゃあ 
あなた
 返事は 、私もちゃんと "本番" を 
 してからするっていうのでもいい? 
 ibrhm 
 いーよ 、待つし 
 
あなた
 ありがとう
 実はね 、明日本番するつもりだったの 
あなた
 その時に一緒に返事もするね 
 
 ibrhm 
 明日 、ね …… おっけ 、頑張れよ 







 ibrhm 
 …… は? え待って 、その時って … 







 びっくりしたように蒼と黄の瞳を見開いた彼 .



 明日 、"好き" って言葉を伝えたいキミに

 今までの練習を活かした "本番" をさせてください .



 今までとはちがう 、沢山の 好き を込めた告白を .









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