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第2話

【過去のこと、今の「自由」】
12
2025/11/12 08:54 更新
練習室での衝突から数日。
奏の学院生活は相変わらず自由奔放さで、彼の存在はユニットにとって
腫れ物となっていた
そんな中、夕いつ、彼に積極的に接触を試みる者がいた
羽風薫
奏くん、サボるならせめて
俺のいる場所に来てよ
女の子もいるし、楽しいよ
薫は中庭の噴水脇にあるベンチに座り
めんどくさそうにしている奏に声をかけた
いつものように軽い口調だが、その瞳にはどこか真剣ないろが宿っている
七宝院奏
めんどくさい
お前の周りには馴れ合いの空気が多すぎる
奏はベンチの背もたれにもたれかかり、青空を見上げる
薫は小さくため息をつき、
奏の隣に腰をおろした
羽風薫
相変わらずだね
でも馴れ合いって言うけどさ
奏がやってるのはただの拒絶じゃない?
七宝院奏
なにが言いたい
奏の口調に鋭いトゲが交じる
羽風薫
昔のこと覚えてる?
あの時奏は「自分の歌は誰の指図も受けない、世界で一番自由なもの」だって
薫の言葉は奏の過去に深く突き刺さる
奏は目を知事たママ冷たい声で返した
七宝院奏
過去の話を持ち出すな
俺の自由は今も変わらない
ユニットなんて不確かなつながりで自分の歌を
歪ませたくない
誰かの機嫌を取るために自分の芯を曲げたくない
羽風薫
ふーん、じゃぁ聞くけど
薫は優しげな笑みを消し、まっすぐ奏を見つめた
羽風薫
あのステージから逃げ出して、一人で活動することが
本当に「自由」なの?
それって誰からも傷つけられないように
自分で「檻」を作って閉じこもってるだけじゃない?
羽風薫
俺だって面倒くさいことや縛られるのは大嫌いだよ
でも晃牙くんとか、朔間さんとかああいう存在がいるからこそ
俺の自由はもっと輝くんだ
誰かに支えられているからこそワガママに振る舞える
奏の「自由」は誰にも届かない場所で自己満足してるだけに見えるよ
七宝院奏
うるさい
奏は立ち上がった
薫の言う事が図星だからだ
彼は薫の顔を見ることなくその場を去る
彼の足は自然と学院で一番高い、人のいない場所へ向かった
<学院の屋上>
吹き付ける風邪が奏の黒い髪を揺らす
七宝院奏
めんどくさい
薫の言葉が頭の中で反響する
七宝院奏
(俺の歌は誰の指図も受けない
 これは俺が守り抜くと決めた
 俺だけの自由だ
 ユニットなんて、プロデュースなんて、
 全部俺の歌を歪ませる邪魔なものだ)
強い風に吹かれながら
奏は決意を新たにした
その時、屋上のドアが勢いよく開いた音がした
大神晃牙
七宝院!こんなとこにいやがったか!
彼は額に汗を浮かべ、息を荒げている
七宝院奏
お前、ストーカーか?
なぜ俺の行く先々にいる
大神晃牙
誰がストーカーだ!!
テメェが俺様のテリトリーを汚しに来るからだ!
晃牙は不機嫌さを隠そうともしない
大神晃牙
テメェの歌は確かに心を揺さぶる
けど、テメェはそれをただ自分だけの檻に
閉じ込めてる
俺様はそういう中途半端な姿勢が大嫌いなんだ
七宝院奏
勝手に嫌ってろ
俺には関係ない
大神晃牙
関係なくなんかさせねぇよ
すると晃牙は突然
ポケットからヘッドフォンとスマホを取り出した
大神晃牙
おい、聴け
俺様のロック。ユニットの力、「UNDEAD」のちから
そして俺様の魂がこめられてる
晃牙は音量を上げ、荒々しいビートを空気に叩きつける
そして奏を指さした
大神晃牙
七宝院奏
テメェの歌が本当に自由で誰にも邪魔されねぇものなら
俺様の音楽の上から自分の歌を叩きつけてみろ
お互いの音をぶつけ合わねぇと
テメェの「自由」が本物かどうかわからねぇだろ
ルールも脈絡もない、突然の「勝負」の申し込みだった
奏は薫あら逃げたばかりの場所で
今度は真正面から自分の「自由」を試されることになった
七宝院奏
いいぜ
奏の骨格がわずかに上がる
面倒くさいはずなのに、晃牙の純粋なまでの音は
奏の心の奥ぞ個に眠っていた
活動敵衝動を呼び起こした
大神晃牙
俺の歌がお前のその鎖を音で引きちぎってやるよ
屋上を吹き抜ける風が孤高な二人のアイドルの挑戦的な歌声を吸い込むように
運び去っていった

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