「…はぁ……」
城の庭園で、月を眺めながら
俺は一人ため息をついた。
(なんだったんだ、あれは)
__夜の舞踏会、誰もいない階段。
紅い髪の美しい青年。
「…ばぁうくん、だったっけ」
目が離せないほど、美しかった。
変な人だけど、俺の退屈な日々にスポットライトを
照らした。
一目惚れしたって言ってたけど、
さすがにあれは夢……だよね
「…また、会えたらな…」
って、何言ってるんだ俺。
そんなこと一ミリも思ってなんかない、、はず。
「…へぇ、嬉しいこと言ってくれんじゃん。王子様」
「……ぇ、……?」
顔を上げると、そこには
あの時会った、美しい青年がいた。
「…な、!
なんで、君が…!?」
「…まぁ、ちょーとね?
……そんなことよりさ」
俺の手首を掴み、距離を縮める。
「……っ、……//」
「な〜んで、君って俺のこと呼ぶの?
前呼んでくれたじゃん、ばぁうくんって」
「…別に…。
君には関係ないと思うんだが」
「…ふーん。
まぁ、無理矢理にでも“ばぁうくん”って呼ばせるけど」
右手で乱暴に俺の顎を掴むと、さらに距離を縮める。
左手は逃げられないよう、しっかりと手首を掴んで
いる。
「はい、5、4____」
「…はっ、?」
どんどん顔が近づいてく。
「ば、ばぁうくん!」
「…ん、合格…。
よかったね?俺にキスされなくて」
「…ふぅ、……」
そっと、俺の顎と手首から手を離され、安心して
息を吐く。
すると、こちらを少し残念そうな顔で、見てきた。
「…まぁ、俺はキスしてもよかったけどね〜?」
「…からかうな。
……本当に、変な人」
心臓がまだバクバクしてる。
さっき、顔が近づいてきたときの感触が、
頭の中で繰り返される。
(…なんで、こんな人なんかに)
ばぁうくんは、そんな俺の様子を見て
低い声で呟いた。
「…てか、らぴす王子って可愛い反応するよね。
もっとからかいたくなる」
「……はっ!?
な、何を言って!」
一瞬息をするのを忘れてた。
何を言ってるんだ。
…可愛い?
可愛い反応なんて、一ミリもしてないと思うんだが?
「…そのまんまの意味。
ねぇ、俺らぴす王子のこと好きになっちゃった。
…俺のこと、好きにさせてみせるから。」
「…ぇ、…」
(…どういうこと!?)
好きって言われた?
なんで?
一目惚れしたって言ったとこ夢じゃなかったんや…
(…でも、嫌じゃない…)
むしろ、毎日が楽しくなりそうで、退屈なんて言葉が
ない日々がくると思うと、嫌な気持ちはなかった。
…それに、なんだか目が離せない。
「…好きにしなよ」
「…!はーい!
好きにしまーす」
目がどうしようもないほど、離せない。
こんなの初めてだ。
胸のざわつきが収まらない。
この状況が、現実とは思えないくらい甘くて、危うい。
「…本気で堕としにいくから。
王子様」
もうとっくに12時の鐘はなっている。
静かな夜に、俺は未来をそっと託した。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!