クラス替えから数日。
新しい教室の空気にも、ようやく慣れてきた。
それなのに——
なんだか落ち着かない。
気づけば、俺の机のまわりにはやたら人が集まってくる。
部活の勧誘、クラスの雑談、女子の笑い声。
悪い気はしないけど、どこか上の空で返事をしていた。
視線の先には、窓際でノートをまとめてるあなた。
髪を耳にかける仕草も、字を書く指先も、どうしてこんなに気になるんだろう。
昨日、恋バナを振られて顔を真っ赤にしてたのを俺は見てしまった。
あのときの表情が、ずっと頭の隅に残ってる。
(……ただの幼なじみ、か)
そう言い切るには、少しだけ遅い気がしていた。
でももし踏み出したら、今の関係が壊れるかもしれない。
それが怖くて、結局、何も言えないまま——
今日も“隣”にいる。
ふいに名前を呼ばれて、我に返る。
顔を上げると、あなたがカバンを肩にかけて立っていた。
夕陽が差し込んで、リボンの赤が少しだけ光って見える。
自然と笑みがこぼれる。
当たり前みたいに隣にいてくれることが、妙に嬉しかった。
昇降口を出ると、春の夕風が頬を撫でた。
近くのコンビニでアイスを買って、並んで歩きながら食べる。
もんってなんだ、もんって……とあなたは心の中で呟いた。
目の前には子どもみたいに恥ずかしがる隼人。
ほんの小さな帰り道なのに、心がやけに弾んだ。
隼人がアハハッと笑いながら呟いた言葉が、夕暮れに溶けた。
その横顔が少し大人びて見えて、あなたは視線を逸らす。
(やっぱり、ただの幼なじみって思えないよ……)
並んで歩く影が、オレンジ色の坂道に長く伸びる。
小学生の頃と同じ道なのに、今はどこか違って見えた。
胸の奥で芽生えた気持ちは、もう誤魔化せそうになかった。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!