第6話

05 となりの恋心
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2025/10/19 15:00 更新















クラス替えから数日。


新しい教室の空気にも、ようやく慣れてきた。


それなのに——


なんだか落ち着かない。


気づけば、俺の机のまわりにはやたら人が集まってくる。


部活の勧誘、クラスの雑談、女子の笑い声。


悪い気はしないけど、どこか上の空で返事をしていた。


視線の先には、窓際でノートをまとめてるあなた。


髪を耳にかける仕草も、字を書く指先も、どうしてこんなに気になるんだろう。


昨日、恋バナを振られて顔を真っ赤にしてたのを俺は見てしまった。


あのときの表情が、ずっと頭の隅に残ってる。





(……ただの幼なじみ、か)





そう言い切るには、少しだけ遅い気がしていた。


でももし踏み出したら、今の関係が壊れるかもしれない。


それが怖くて、結局、何も言えないまま——


今日も“隣”にいる。






美澄
 隼人、帰ろ? 






ふいに名前を呼ばれて、我に返る。


顔を上げると、あなたがカバンを肩にかけて立っていた。


夕陽が差し込んで、リボンの赤が少しだけ光って見える。



隼人
 あ、うん、帰ろっか 






自然と笑みがこぼれる。


当たり前みたいに隣にいてくれることが、妙に嬉しかった。


















昇降口を出ると、春の夕風が頬を撫でた。




あなた
 今日は寄り道する? 
加賀美隼人
 寄り道? 
あなた
 うん、たまには
 コンビニとかで何か買って帰るのも 
 いいんじゃないかなぁ、って
加賀美隼人
 そうだね 
 いつもまっすぐ帰ってるからね 





近くのコンビニでアイスを買って、並んで歩きながら食べる。




加賀美隼人
 あなた、またそのバニラ? 
あなた
 まぁ、バニラアイス好きだからね 
加賀美隼人
 子どもの頃から変わってないなぁ 
あなた
 そういう隼人もでしょ? 
あなた
 またそのチョコアイスじゃない? 
加賀美隼人
 だって… 
 チョコがいちばん好きなんだ…もん… 






もんってなんだ、もんって……とあなたは心の中で呟いた。


目の前には子どもみたいに恥ずかしがる隼人。


ほんの小さな帰り道なのに、心がやけに弾んだ。





加賀美隼人
 こうして何か食べながら歩くのって 
 いつ以来だ?
あなた
 うーん、中学の卒業式の日? 
加賀美隼人
 あー、母さんたちが
 お金渡して、何か食べてきなさいって 
 ふたりでご飯食べに行った時か 
あなた
 帰り道でアイス食べながらだったね  
加賀美隼人
 懐かしいな、それ 
あなた
 中学の間は部活とかで忙しかったし 
加賀美隼人
 生徒会とか勉強で手一杯だったし 
あなた
 中学生ながら大変だったね 
加賀美隼人
 もちろん楽しいこともあったけどな 
あなた
 ふふっ 思い出たくさんだ  
加賀美隼人
 あなたのおかげだな 






隼人がアハハッと笑いながら呟いた言葉が、夕暮れに溶けた。


その横顔が少し大人びて見えて、あなたは視線を逸らす。





(やっぱり、ただの幼なじみって思えないよ……)





並んで歩く影が、オレンジ色の坂道に長く伸びる。


小学生の頃と同じ道なのに、今はどこか違って見えた。


胸の奥で芽生えた気持ちは、もう誤魔化せそうになかった。















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