Hyunjin side
今ここは、ニューヨーク。
俺たちは2日後の公演のために、今日到着して、
今はチャニヒョンと2人で観光中。
俺はそう言って、遠い目で忙しそうな人々を見た。
みんな忙しそう。
この後の仕事のことしか見えてない。
顔を少しあげれば綺麗な世界が見えるのに。
そんな俺の感性をしっかり受け止めてくれる
チャニヒョンは考え込んだように言った
俺は、せかせかと忙しそうな人々を見た。
みんな、忙しそう。
俺は、嫌だな
と、その時だった。
この世の摂理で、その場所に異質なものがいると、
浮いて見えるもので。
その異質なものは、嫌われることが多い。
このニューヨークの街でも。
みんな忙しそうにしている暗いダークの中に、
鮮やかな異色が見えた。
それは女性だった。
髪をくくっていて、手にはパソコン、
青いシャツを着ている彼女は、見るからに
キャリアウーマンだった。
ニューヨークに似合う、大人の女性。
かっこいい、その尊敬を含めた言葉が似合う。
でも彼女が周りに混ざってしまわないのは、
彼女が。
顔をあげて、街中を眺めて、少し微笑んでいた。
その優しい目は、何かを捉えて、柔らかく、
幸せを噛み締めていて。
俺は言葉を失って、彼女に釘付けだった。
この慌ただしい街中で、彼女だけが精神の余裕を
持って、優雅な時間を過ごしているのに、俺は
気づいてしまったから。
なんだ、あれ
おかしい、あんな、だって、みんなもっと、
すごい、ずるい、俺だって、___
なんだろう、この感情
彼女が俺の横をちょうど、すれ違うとした時、
俺は何かの感情に包まれた。
“だめだ、彼女のことを逃しては。”
このまますれ違えば、もう2度と出会わないであろう
多分、ニューヨークの人。
でも俺は、彼女と、このまま2度と会えないのは、
絶対にだめだと思った。
でも知らない人にどうやって?
“あなたのことを逃したくないです”
とでも言い止めればいいの?
俺がそう悩んでいるうちに、俺のことなど視界に
入っていなさそうな彼女は、そのまま、俺の横を
すれ違った。
ふわっと、いい香りがした。
瞬発力だった。
俺は、気づけば、彼女の肩を掴んで、振り向かせて
声をかけていた。
と、その時、バシャっと音がして、
俺はハッとすると、目の前の彼女に似合っていた
青いシャツが、茶色くコーヒーで染まっていた。














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!