『警視庁によると港区で行方不明者が全国的に見ても多いとのことです。■■さんこれについてはどうお考えですか?』
『そうですねー…。直近2週間でも行方不明者が多く出ていますし、とても心配ですね。他の地域ではどうなんでしょう?』
『はい、同じく東京都ですと世田谷区、目黒区でも前より行方不明届が多くなっていて、他県でも以前より行方不明者が多く報告されてい』ブチッ。
9月1日午前7時58分。
平日の朝というのはなんとも忙しく、各々が苛立ちや憂鬱さを滲ませながら、あるいは隠しながら朝支度をしている。
狐川家も皆その一員である。
本当は几帳面な母も手荷物を乱雑に鞄に詰め込んで機嫌が悪そうだ。
一人娘の明は無気力に何も映らないテレビを見つめている。
ぼっぽー、ぽっぽー。
白い家のような形をした鳩時計が8時を知らせる。もう登校しなければならない時間だ。
黒田スミカ。明のクラスメイトだ。
白い肌に漆黒の髪、生まれながらのアスリートのように恵まれた身体能力とフィジカルをもつ。さらには頭脳明晰。クラス一、否学校一の人気者であると同時に陰湿な人物でもある。
机上には消臭スプレーと消毒液、それと刺激臭を放つ雑巾が置かれていた。
バシャーン!!
何が起きたかを理解するのに明は時間を要しなかった。
目にかかりそうなくらい長い前髪は癖が取れ、毛先からは水が滴っている。制服は質量を増し肌に張り付いている。
水が掛けられたのだ。
明の姿を見て黒田スミカは心底面白いと笑みをこぼす。
耐えきれず明は逃げるように教室を飛び出した。途中誰か、もしくは何かにぶつかった気がする。
廊下ですれ違う生徒の全員が明を嘲笑する。
誰も彼女を心配しない。全員が黒田スミカの味方だ。
よく明が考えることがある。
邪魔者は生きているだけ無駄だ。しかし邪魔者が死んだら、両親や医師、葬儀屋をはじめとした大勢の手を煩わせてしまう。
自分のような邪魔者は生きていようが死のうが迷惑なのだ。
生きているわけでもなく、死ぬわけでもなく、いなくなれればいいのに、と。
消えたい、消えたいと反芻しながら行くあてもなく、とにかく学校から遠い場所まで走り続けた。
そのときだった。
『レレレ〜!!!』
まるで後を追ってきたように雲のような謎の生き物(?)と赤褐色の岩のような怪物が迫ってきていた。
雲のような生き物は宙を右往左往しながら飛び回り無邪気な子どものように明の肩に乗った。
赤褐色の怪物は家を1軒ずつまたぎ越しながら確実に明の方へ足を進めていた。映画の撮影かと勘違いしてしまうほど怪物は巨大だった。明の推定では全長10メートルをゆうに超えている。
刹那、まばゆい閃光が彼女を包んだ。
ふと、鼻の付け根あたりに違和感を覚えた。
眼鏡?と明はぎょっとした。彼女は普段眼鏡をかけていない。
それに前髪はこんなに短くなかったし服も濡れていない。スカートは短くなったように感じる。
あの閃光で本当に魔法少女になってしまったんだ。
選ばれた人だからこの状況も理解できてしまっている、と半ば無理矢理解釈した。
突然渡されたステッキはピンクゴールドのような色合いでごてごてとした飾りがついていて女児向けアニメに登場するようなビジュアルだった。
ずっと歩みを進めていた怪獣は目の前にまで迫ってきていた。人間の大きさをゆうに超える手、いや岩が落ちてくる。
レボは焦ったように甲高いアニメ声で叫んでいる。
明が怪獣に潰されるまで残り2秒、1秒…。そのとき、ステッキが白い光をまとった。
反射で硬く結ばれた瞼をゆっくりひらくと怪獣は消えていた。
明は怪獣を倒したことに達成感よりも喪失感を覚えていた。自ら絶好の死のチャンスを逃したのだ。
大げさにレボは焦る。
そう言ってレボは黄色の魔法少女を置き去りに何処かへ去って行った。
Profile
狐川明
都立巣浜高等学校2年2組
中肉中背、勉強と運動は中の下
黄色のロングヘア。ケアは全く行き通ってなく枝毛が多い。前髪は目にかかるくらい長いので流している
制服のスカートは膝を覆う長さで履く(制服はセーラー服)
両親が離婚したため片親。母は会社員として毎日働いている
変身後
強化魔法
ロングヘアをハーフアップにまとめている。黄色でつやがある。前髪は眉下
大きな丸眼鏡
セーラー服。スカートはひざ上
都立巣浜高等学校について
江東区に位置する
偏差値51
盛んな部活があるわけでもなくぱっとしない








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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!