前の話
一覧へ
次の話

第1話

新月と満月
17
2025/11/24 09:00 更新
『警視庁によると港区で行方不明者が全国的に見ても多いとのことです。■■さんこれについてはどうお考えですか?』

『そうですねー…。直近2週間でも行方不明者が多く出ていますし、とても心配ですね。他の地域ではどうなんでしょう?』

『はい、同じく東京都ですと世田谷区、目黒区でも前より行方不明届が多くなっていて、他県でも以前より行方不明者が多く報告されてい』ブチッ。
朝からテレビばっかり見ないの
もうお母さん仕事行くからね。ちゃんとクーラー消してから家出るのよ
狐川明
ああ、いってらっしゃい
9月1日午前7時58分。
平日の朝というのはなんとも忙しく、各々が苛立ちや憂鬱さを滲ませながら、あるいは隠しながら朝支度をしている。

狐川家も皆その一員である。

本当は几帳面な母も手荷物を乱雑に鞄に詰め込んで機嫌が悪そうだ。
一人娘の明は無気力に何も映らないテレビを見つめている。
ぼっぽー、ぽっぽー。

白い家のような形をした鳩時計が8時を知らせる。もう登校しなければならない時間だ。
クロダスミカ
あ、来た来た!きたな川ちゃん!!
狐川明
クロダスミカ
無視とか厳しいー!
黒田スミカ。明のクラスメイトだ。
白い肌に漆黒の髪、生まれながらのアスリートのように恵まれた身体能力とフィジカルをもつ。さらには頭脳明晰。クラス一、否学校一の人気者であると同時に陰湿な人物でもある。
クロダスミカ
机見てみてよ
机上には消臭スプレーと消毒液、それと刺激臭を放つ雑巾が置かれていた。
狐川明
なに、これ…
クロダスミカ
汚川ちゃん綺麗にしたくて準備したんだよ。仕上げにね…
バシャーン!!

何が起きたかを理解するのに明は時間を要しなかった。
目にかかりそうなくらい長い前髪は癖が取れ、毛先からは水が滴っている。制服は質量を増し肌に張り付いている。
水が掛けられたのだ。
明の姿を見て黒田スミカは心底面白いと笑みをこぼす。
クロダスミカ
ふふ、それでも汚いか。
クロダスミカ
こんなに頑張っても汚川は汚川のままなんだね
クロダスミカ
はー、可哀想。
クロダスミカ
ねえ、知ってる?
クロダスミカ
9月1日って1年間で自殺者が1番多くなる日なんだって!
クロダスミカ
言いたいことわかるよね?
狐川明
っ!
耐えきれず明は逃げるように教室を飛び出した。途中誰か、もしくは何かにぶつかった気がする。

廊下ですれ違う生徒の全員が明を嘲笑する。
誰も彼女を心配しない。全員が黒田スミカの味方だ。
狐川明
消えたいっ……。
よく明が考えることがある。

邪魔者は生きているだけ無駄だ。しかし邪魔者が死んだら、両親や医師、葬儀屋をはじめとした大勢の手を煩わせてしまう。
自分のような邪魔者は生きていようが死のうが迷惑なのだ。

生きているわけでもなく、死ぬわけでもなく、いなくなれればいいのに、と。
消えたい、消えたいと反芻しながら行くあてもなく、とにかく学校から遠い場所まで走り続けた。
そのときだった。
『レレレ〜!!!』
怪獣
く゛ぅ゛おぉ゛…
狐川明
え…?
まるで後を追ってきたように雲のような謎の生き物(?)と赤褐色の岩のような怪物が迫ってきていた。

雲のような生き物は宙を右往左往しながら飛び回り無邪気な子どものように明の肩に乗った。
赤褐色の怪物は家を1軒ずつまたぎ越しながら確実に明の方へ足を進めていた。映画の撮影かと勘違いしてしまうほど怪物は巨大だった。明の推定では全長10メートルをゆうに超えている。
???
明!戦ってレー!
刹那、まばゆい閃光が彼女を包んだ。
???
魔法少女として怪獣と戦うんだレ!
狐川明
な、なんなの…
狐川明
それに魔法少女ってどういうこと…!?
ふと、鼻の付け根あたりに違和感を覚えた。
眼鏡?と明はぎょっとした。彼女は普段眼鏡をかけていない。
それに前髪はこんなに短くなかったし服も濡れていない。スカートは短くなったように感じる。
狐川明
もしかして…
???
もう明は魔法少女なんだレ!
レボ
レボと一緒に戦うレ!
あの閃光で本当に魔法少女になってしまったんだ。
選ばれた人だからこの状況も理解できてしまっている、と半ば無理矢理解釈した。
レボ
明の魔法は強化魔法レ!
レボ
このステッキに力を込めるんだレ!
狐川明
い、いきなり言われてもできないよ…!
突然渡されたステッキはピンクゴールドのような色合いでごてごてとした飾りがついていて女児向けアニメに登場するようなビジュアルだった。
レボ
怪獣が追いついちゃうレー!あの怪獣に捕まった人間はどこかに行っちゃうレ!
ずっと歩みを進めていた怪獣は目の前にまで迫ってきていた。人間の大きさをゆうに超える手、いや岩が落ちてくる。
レボは焦ったように甲高いアニメ声で叫んでいる。

明が怪獣に潰されるまで残り2秒、1秒…。そのとき、ステッキが白い光をまとった。

反射で硬く結ばれた瞼をゆっくりひらくと怪獣は消えていた。
レボ
明ー!怪獣を倒したレ!!よくやったレ!
狐川明
わたしが倒した…?
明は怪獣を倒したことに達成感よりも喪失感を覚えていた。自ら絶好の死のチャンスを逃したのだ。
レボ
少し順番が前後してしまったレ…
レボ
レボは明の願いを叶えるレ!
レボ
その代わり、明には魔法少女として怪獣から皆を守ってほしいレ!
レボ
明の願いは何だレ?
狐川明
願い、か…
狐川明
わたし消えたいの
レボ
消えたいレー!?それが明の願いレ!?
大げさにレボは焦る。
狐川明
消えたいよ、もう生きるのに疲れた
レボ
わ、分かったレ…。契約だから明の願い叶えるレ
レボ
その代わり明にも人間の皆を守ってもらうレー!
レボ
魔法少女はあと2人いるから楽しみにしててレ!
そう言ってレボは黄色の魔法少女を置き去りに何処かへ去って行った。
Profile
狐川明きつねがわあき

都立巣浜すはま高等学校2年2組

中肉中背、勉強と運動は中の下

黄色のロングヘア。ケアは全く行き通ってなく枝毛が多い。前髪は目にかかるくらい長いので流している

制服のスカートは膝を覆う長さで履く(制服はセーラー服)

両親が離婚したため片親。母は会社員として毎日働いている


変身後

強化魔法

ロングヘアをハーフアップにまとめている。黄色でつやがある。前髪は眉下

大きな丸眼鏡

セーラー服。スカートはひざ上



 都立巣浜高等学校について
  江東区に位置する
  偏差値51
  盛んな部活があるわけでもなくぱっとしない

プリ小説オーディオドラマ