マウンドへ向かう途中、息子は手をつないだスタッフに小声で聞いた。
「ねぇ、この青のチーム、強いの?」
「強いよ~!この背番号2番の選手なんか、ファンがめちゃくちゃ多いの!」
「ふ~ん......背番号、2......」
それが、ヒントだった。
スタッフに促されて、マウンドに立った息子。
スタンド中の視線が、彼に注がれていた。
少し緊張していたけれど、ちゃんとボールを握って、
キャッチャー方向をじっと見つめる。
ーそのときだった。
キャッチャーの後ろから、あの背番号2が、歩いてきた。
ヘルメットを脱ぎ、笑顔で手を振る選手。
それが、自分のパパだと気づくまでに、息子は数秒かかった。
「.....ん?」
首をかしげる。
「えっ.......」
目を見開く。
「.....ええええええええっ!?!?!?!?」
球場中のファンが、驚きで大きな声をあげる息子に笑い、
その反応に、幹也くんも吹き出してしまった。
「パ......パパ!?なんで!?なんでそこにいんの!?
え!?え!?プロの人なの!?」
バットを持った幹也くんは、ちょこんと立ち尽くす息子にゆっくり歩み寄ると、しゃがんで言った。
「びっくりしたか?かっこいいとこ、初めて見せたかもな」
「.....うん......かっこよすぎて、びっくりしすぎて、タヒにそうになった......」
「それはやめてくれ(笑)」
場内は笑いに包まれた。
始球式は、最高の瞬間だった。
幹也くんの投球フォームをマネして、息子が一生懸命投げたちいさなボールは、まっすぐキャッチャーミットへ。
わざとらしく空ぶった幹也くんは満面の笑みだった。
「ナイスボール!!」
グラウンドに響いたその声は、何万もの拍手よりも、息子の心に残ったはずだった。
𝐍𝐞𝐱𝐭······▸












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!