第17話

牽制
15
2026/08/12 14:42 更新
鳴子 章吉
くっそ。ワイなにやってんねん。


あなたが帰っていっとるのに、引き止めることもできひんかった。

力無く自転車のハンドルを叩く。日はとっくに落ち、近くの街灯が頼りなく明滅している。

こんなこと、やっとる暇ないねん。

そんな考えが浮かんだが、首を振り否定する。


中途半端。


ワイが1番嫌いな言葉が頭に浮かんだ。
鳴子 章吉
このままじゃあかんな...
開いた手のひらに視線を落とす。
そして、ぐっと拳を握った。
その時、後ろからカラカラと自転車を押す音が聞こえた。

部活終わりのこの時間はほとんどの生徒が帰宅している。

誰やこんな時に。


鳴子は後ろを振り向かず、歩き出した。
手嶋 純太
おーい、なにしてんだー鳴子
その声が誰なのか確かめるまでもなく、目元に微かな影を落としゆっくり振り返る。
鳴子 章吉
なんスか、パーマ先輩
手嶋 純太
ははっ、機嫌わりぃな。
鳴子 章吉
ワイはいつでも上機嫌ですわ
手嶋 純太
んな風には見えねぇけど?
鳴子の顔からスっと笑みが消えた。
ふと、先日見かけた2人との姿が脳裏によぎる。
鳴子 章吉
...何がしたいんスか。パーマ先輩。
手嶋 純太
なんの事だ?
鳴子 章吉
この前、一緒におったやないすか
けれど、手嶋は何処吹く風といった様子で、口元に笑みを浮かべたまま、ひらひらと手を振る。
手嶋 純太
あーこわいこわい。そんなに睨むなよ。
別になんもねぇよ。
まるで冗談を交わすような軽い仕草。
その表情からは真意が読み取れなかった。
鳴子 章吉
...本気やないんだったら、あいつに変なことせんとってくださいよ。
手嶋 純太
ははっ、なんだよ変なことって。
なんもしねぇって。
鳴子 章吉
今まで興味なさそうやったやないですか。
手嶋 純太
いやぁ?どうだったかな。
鳴子 章吉
...ワイの大事な人なんで。それだけは言うときます。
手嶋は一瞬だけ目を細め、鳴子を見つめたが、またいつもの笑みに戻った。
そして手をヒラヒラさせて、じゃあ気をつけて帰れよ〜と自転車に跨る。
そのまま何事もなかったかのように走り去った。
鳴子 章吉
ほんま、なんやねんあの人。
結局、手嶋がなにを考えているのか、鳴子には最後まで分からなかった。

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