あなたが帰っていっとるのに、引き止めることもできひんかった。
力無く自転車のハンドルを叩く。日はとっくに落ち、近くの街灯が頼りなく明滅している。
こんなこと、やっとる暇ないねん。
そんな考えが浮かんだが、首を振り否定する。
中途半端。
ワイが1番嫌いな言葉が頭に浮かんだ。
開いた手のひらに視線を落とす。
そして、ぐっと拳を握った。
その時、後ろからカラカラと自転車を押す音が聞こえた。
部活終わりのこの時間はほとんどの生徒が帰宅している。
誰やこんな時に。
鳴子は後ろを振り向かず、歩き出した。
その声が誰なのか確かめるまでもなく、目元に微かな影を落としゆっくり振り返る。
鳴子の顔からスっと笑みが消えた。
ふと、先日見かけた2人との姿が脳裏によぎる。
けれど、手嶋は何処吹く風といった様子で、口元に笑みを浮かべたまま、ひらひらと手を振る。
まるで冗談を交わすような軽い仕草。
その表情からは真意が読み取れなかった。
手嶋は一瞬だけ目を細め、鳴子を見つめたが、またいつもの笑みに戻った。
そして手をヒラヒラさせて、じゃあ気をつけて帰れよ〜と自転車に跨る。
そのまま何事もなかったかのように走り去った。
結局、手嶋がなにを考えているのか、鳴子には最後まで分からなかった。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。