─話をしよう。
まず、高校デビュー、という言葉をご存知だろうか?
中学生までは学校でそれ程目立つ存在ではなかったのに、高校生になったら急にイメージチェンジをして、垢抜けた格好をしたり、派手な振る舞いや、不良行為をしたりする事だ。
僕もそのうちの一人だった。
中学まではド陰キャで、クラスではほとんど目立たなかった。
だが、僕は、今まで整えなかった髪型を整えて晴れて高校デビューすることが出来たのだ!
…はい、ごめんなさい。そんなのは高校デビューでもなんでもないですよね、はい。
ただ、僕にも変わったことはあった。それは、厄介な部類の人間と付き合うことになったのだ。(…入学後、一週間。)
その厄介な人間というのが…
「くっ…奴等がこの近くにいるのか…!この封印されし楼観剣がうずく…」
「…………………」
現在進行系で僕の隣で中二病発言をしている、魂魄妖夢という少女だった。
…同時に僕の彼女でもある。
あれはちょうど一ヶ月ほど前、僕が廊下を走っていると、一人でぶつくさ言っている妖夢とぶつかったのだ。
「うわっ…」
「みょんっ…」
なんか、変な感じの声を出した妖夢にすぐ、謝った僕だが、妖夢は、
「くっ…この私を倒すとは…いいでしょう…この私と結婚しろ!」
ええええええええ
と、何故かみんなが見ている廊下のド真ん中でプロポーズされてしまい、付き合うことになったのだ。
そして、僕は妖夢と過ごすうちに気付いたのだ。…どこからどう見ても中二病…
この子には恥ずかしさというものがないのだろうか。
いや、無いんだろう。だって─
「こら、魂魄さん!学校に必要のないものは持ってきてはいけないと何度言ったら分かるの!没収ね!」
「ああっ…私の楼観剣がぁ…」
廊下で、クラスメイトに注目されながら、がくん、とうなだれる妖夢。
すると僕の所に来て、
「勇気君、慰めてぇ」
「んむっ!」
妖夢はみんなが見てるのにも関わらず僕とキスをする。恥ずかしさがあるんだったらこんなことしないだろう。
「ん…!?ちょっ!?」
普段はキスだけで終わるのだが、今日は、何故か舌を入れてきてディープキスに発展した。
…もちろん、周囲の野次馬に注目されながら。
僕達はバカップルと、で噂になってるため、もう、見られても失うものはなにもないが、それでも、生徒指導は確定だろう。だって…
「春咲さん、魂魄さん?生徒指導室に行きましょうか。…魂魄さんは別の指導もあるからね?」
あ、はい…僕、もしかして終わりました?
そうして、僕と妖夢は、生徒指導室に強制連行された。
2時間に渡る長い長いお説教を食らったあと、僕は、妖夢を残して、一人で帰路につく。
いつもは妖夢と帰っていたから、久しぶりに一人で帰る気がする。
「少し、公園にでも寄り道するか。」
僕は、公園に寄ることにした。理由は至って単純。久しぶりに湖でも眺めようと思ったからだ。
「やっぱり、ここは綺麗だな。」
湖を眺める。心が洗われるようなそんな気がする。…この汚れた心も完全には浄化は出来ないみたいだけど…
ドンっ、と僕は誰かとぶつかった。
「おい、どこ見て歩いてやがる!気をつけろ、ボケが!」
ガラの悪い男とぶつかったみたいだ。
「いや、歩いてないですけど?ここに立ち止まってたんですけど?」
僕はなんだかイラッと来たんで反論することにした。
「あ?テメェふざけんのもいい加減にしろよ!」
と、言ってきたので僕はまるで煽るように笑って、
「それってあなたの感想ですよね?(笑)」
と言った。
男はこめかみに青筋を立て、殴りかかってきた。その拳はまっすぐ僕の顔面に向かう。
「え?」
「なんだ、この程度か。」
男の拳を僕は簡単に止めた。
「この“俺”に喧嘩を売ったんだ。─覚悟はいいか?俺はできてる。」
そう言って、男の顔面に右ストレートを打ち込んだ。
「く、おぉ…」
ちょいと本気で殴ったせいか、男はうずくまった。
(さて、もう一発、放つか─っ!)
俺は後ろを振り返った。後ろからものすごい殺気を感じたからだ。
木の影に人影が隠れる。その人影は、一瞬だけだったが、“妖夢に見えた”。
「あ…」
男はチャンスとばかりに、走り去っていく。…妖夢らしき人影もそれと同時にいなくなった。
「…追いかけるか。」
俺は男が走ってった方向に向かって走り出した─
私は彼に殴りかかった男を追っていた。
私のモノに傷をつけようとしたのだ。きちんと始末シナイト…
男は、公園に逃げ込んだ。暗くなってきたせいか、誰も人はいない。
私は楼観剣を抜いて、その男の背中に向かって突き刺した。
「ぐぁあああ!?」
男は痛みのせいか、叫んだ。
(…うるさいな。)
私は男の首を狙って、楼観剣を振り下ろした。
ゴトッ、という音と共に男の悲鳴もやんだ。
「なに、やってるんだ…?…妖夢。」
その直後に、勇気君の声がした。
見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。
気づくと私は走り出していた。
「おい!待て!」
そんな勇気の声が誰もいない公園に木霊していた。
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【ゆっくり茶番劇】ヤンデレ達のオルゴール 妖夢編(前編)
https://youtu.be/XltYsJqLaKY












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。